先生、なんか盛ったでしょ? | kyupinの日記 気が向けば更新

先生、なんか盛ったでしょ?

上は、ある男性患者さんの言葉。

アナフラニールを盛っただけです。

この人はある病院で何年も治療していたが、全然良くならなかったと言う。しかし転院後、アナフラニールを連日点滴していたところ、3日目に突然、霧が晴れたように実感が良くなったらしい。(躁転ではない)。彼は

あの○○病院は治らんですよ。

と言うので「そういうものでもない」と僕は言った。

アナフラニールに限らず向精神薬は精神科医の技量により、うまく奏功しないことがあるから。(過去ログ参照)

上のように「3日目に突然良くなる」という改善の仕方は、普通は長続きしない。あれは抗うつ剤の最初の強力?なインパクトであり、何らかの脳の変化はまだ起こっていないのである。

初期の効果と永続的な効果は区別すべきだ。過去ログでは「去っていくタイプの薬」の話が出てくる。そのような薬は脳のハードを変化させ、恒久的な改善をもたらす。去っていっても大丈夫なほどの変化が生じているのである。

だいたい、何年も不調だった人が3日で完全に良くなったとしたら、その方が科学的でないと思う。

それでもなお、あのような第一歩は重要。

それまでの悲観一色だった状況から、明るい未来の可能性を感じ取れるから。それは治療のモチベーションにも好影響を与える。

その後、彼は概ね寛解に至ったが、薬物はアンプリットやアモキサンに変更しつつ治療を続けている。(現在進行形)

参考
精神科医と薬、エイジング
統合失調症の人の表情の改善(後半)