生物学的に診るという意味 | kyupinの日記 気が向けば更新

生物学的に診るという意味

過去ログでは、自分は「生物学的に診るタイプの精神科医」と書いている。これは、ずっとこのブログを読んでいる人はなんとなく理解できるのではないかと。

先日の「双極性障害の周期的傾眠について(8)」では、周期性に眠り姫状態になる患者さんについての意見をアップしている。

この眠り姫のバイオリズムは、その人の脳を含めた身体に由来があるわけで、そうなる原因としてストレスがあるように見えたとしても、それは生物学的背景から来る精神症状を彩る補助的な要因に過ぎない。

ストレスと言ってもさまざまであり、日常生活の心理的なトラブルから、単に急に暑くなったとか気候要因まで多岐にわたり、どのように影響しているのか不明なものもある。

もし、このようなタイプの患者さんが、カウンセリングを受けたいと希望したとしても、僕は、本質的な部分で、たぶんあまり意味がないと思う。

周期性に陥る眠り姫状態や、あるいは亜昏迷、動けなくなる状態が、カウンセリングにより避けられるようには思えないから。

逆に、何らかの気分安定化薬でそれまで診られたバイオリズムの波が急に穏やかになったり、あるいは消失する人もいるので、なおさらそんな風に思う。

このようなメカニズムがこの疾患に限らず、ほとんどの精神疾患で観察されるので、「生物学的に診る」精神科医にならざるを得ない。

むしろ、患者さんには薬と症状変化の因果関係などを単に説明することや生活指導するだけの方が、今後の服薬のモチベーションを保つのにメリットが大きい。例えば、リーマスやラミクタールは飲むかどうかで大違いの人が多いから。怠薬のために症状が再燃して入院になるのは時間の損失だと思う。

しかしながら、このタイプの人で話相手がいないことで悩んでいる人はいるので、ある程度、精神症状が改善したら、そろそろカウンセリングを受けても良いかなと思う。

例えば、スカートをはく際に転倒するとか、毎朝、全く起きれず動けないとか、いつもぼんやりして1時間前のことを思い出せない人は、カウンセリングはほぼ無意味なのである。

たぶんカウンセリングを受けるには、それに見合う精神面(あるいは脳の機能と呼ぶべきか)のある水準の「健康さ」が保たれていないと難しいんだと思う。

参考
非定型病像と褥瘡
不思議な非定型病像
悪性症候群の謎