広汎性発達障害とトピナ | kyupinの日記 気が向けば更新

広汎性発達障害とトピナ

過去ログにトピナはラミクタールに比べ認知に悪影響を与えうると言う記事がある。ラミクタールは認知に好影響を与え、またEPSが出現しないので、老人にも使いやすい薬物である。

一方、トピナは判断力や計算力などを低下させることがあり、服用当初は車の運転などは避けるべきである。また認知だけではなく、身体的にふらつきなども見られることがあり、自転車も運転しにくくなる人もいる。

ところが、トピナを服用しても認知に悪影響を及ぼすどころか、認知が改善しているように見えることも稀ではない。これは「うつ状態」自体が、認知を低下させる病態だからである。患者さんは「頭の中がかなりスッキリした」などと言う。このような人では、思考面が「改善している」と実感する。

つまり認知への悪影響は、トピナに出現しうる1つの副作用なのである。

以下は、ある広汎性発達障害(アスペルガー症候群)の女性患者さんのトピナの服用感である。彼女は積極的なタイプの広汎性発達障害で、過去には他病院で統合失調症の診断を受け、リスパダールで治療されていた。リスパダールは服用が不規則なので、2~6mgくらいだったと思われる。

入院時は緊張病症候群で手がつけられなかった。拒絶、興奮が酷く、話もできないような状態である。

リスパダールは彼女の場合、根本的に合っていないと思ったが、これを減量するのは病状が病状だけに容易ではない。拒薬が酷いため、リスパダールの減量はリスパダールコンスタを併用することにした。

リスパダールからの脱出にはリスパダールコンスタを選んだのである。

リスパダールコンスタは精神症状に非常に効果的で、次第に緊張病症候群が改善してきた。緊張病症候群が消失すると、表情だけをとっても、到底、統合失調症には見えない。問題は長期的にどの薬で治療するかである。

彼女は根本的に薬が嫌いなので、たくさんの錠数が必要な治療は難しい。例えばデパケンRを4~5錠使うとか、あるいはリーマスなどもそうである。漢方は飲むというので、ツムラ四物湯とツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯を併用で服用させることにした。これらは効果には期待していなかった。(本人に譲歩)

またこれらの漢方に春ウコンを併用することにした。春ウコンを飲むと、翌日には頭の中がスッキリしたと言う。

ただ、今後リスパダールを中止するわけで、このようなヘナチョコの治療では全く迫力がない。本人になんとか説得し、リボトリール、トピナ、ルーランを併用することにした。いずれも何錠も必要ないのがよろしい。

リスパダールの代替としてルーランの少量は悪くない。彼女は思考が硬直しているし、ルーランは多少は良さそうである。(過去ログにはこだわりの強い人にはルーランが良いと言う記事がある)

トピナは薬に弱い広汎性発達障害の人に処方すると、合わない場合、めまいが酷くて服用できないとか、あるいは非常にいらいらするなど様々な悪化のパターンがみられる。最初、服用感がないくらいだと有望と感じる。彼女の場合、トピナは12.5mgから漸増し50mgまで使ってみた。そしてこのような処方になったのである。

トピナ 50mg
リボトリール 0.5mg
ルーラン 4mg
ほか、漢方と春ウコン

2ヵ月後の彼女の言葉。彼女は頭が良いので、自分の状態を詳細に表現できる。

相手の立場を察する気持ちが少しわかってきた。今は忙しそうなので少し待とうとか。これは言いすぎにならないかな?とか。

周囲の状況把握ができるようになった。周囲の人に気配りができるようになったですね。自分は自分の我を押し通すようなところがあったんですけど、それが少なくなった。思い込みとか。精神年齢が急に上がってきた感じですね。

人への思いやりのない行動とか、自分でしていても全然わからなかったから・・今は大分わかるようになった。

昔は人に話しかけることが親切と思っていた。そのやり方が、相手に迷惑というのがわかるようになった。最初入院していて、○○さんに世話をしているつもりだったけど、今は良くなかったのがわかります。

以前は、広汎性発達障害の本を読んだり、人のアドバイスを聞いていても全然わからなかったです。自分で気付けなかったですね。


彼女はあの処方で、約2ヶ月で急回復したのである。トピナは素晴らしい切れ味であった。

これが結論だが、トピナは広汎性発達障害の人に非常に有効なことがある。それは姑息的なかかわり方ではなく、本質に影響を及ぼしている。

参考
トピナのテーマ