プロピタンとエビリファイ | kyupinの日記 気が向けば更新

プロピタンとエビリファイ

今日の記事はかなり以前の過去ログ「内因性うつ病(非定型の色彩を伴う)」の続きである。この女性患者さんは、いったん、

クレミン   75㎎
リボトリール 2㎎
(および下剤)


で退院したが、しばらく良かったものの、ある時期、家庭内のライフイベントのために急に悪化し、躁うつ混合模様になった。このような躁うつ混合模様こそ、非定型精神病的色彩でもある。もう1回入院させることにした。

2回目もそれほど入院期間は長くなく、この際に処方変更し以下の処方で寛解退院した。

プロピタン  50㎎
エビリファイ 3㎎

(眠剤も下剤も必要なし)

個人的に、最初の処方より、このプロピタンとエビリファイの方がずっと軽いので気に入っていた。クレミン75㎎はコントミン換算で227㎎であるが、実際はもう少しパワーと言うか、力価がある薬物である。しかしプロピタン50㎎とエビリファイ3mgは、合わせてもちょうどコントミン100㎎にしかならない。

前回の増悪は巨大なライフイベントがあり、少々気分安定化薬を併用していたとしても、やはり悪化していたような気がしたので、今回もデパケンRやリーマスは併用しなかった。(こういうタイプの婦人にリーマスを併用すると振戦が出現しやすい)

このプロピタン50㎎とエビリファイ3㎎の処方だが、たぶんプロピタン50㎎が軸である。プロピタン50mgは、コントミン換算で25㎎にしかならないが、そんなことはない。もう少し力価があるように思う。

エビリファイ3㎎は薬物特性的にスポンジみたいな薬なので、コントミン75㎎と比べるのはコントミンに失礼だと思う。

このプロピタン50㎎およびエビリファイ3㎎の処方は、一見いかにも再発がありそうだが、そうではなく、嘘みたいに安定し次第に再発など考えにくいほどの長期、寛解状態に至った。

ただ、この処方は1つだけ欠点があった。それは体重増加である。

この組み合わせだと、いかにもプロピタンが怪しいが、プロピタンを中止するのは危険すぎる。彼女も再発は嫌らしく、ずっとこのまま経過観察していた。そのうちになんと10kgも体重増加したのである。

その後、もはや体重増加がみられなくなったが、ずっとそれが気になっていた。別にこの処方で10kgも体重増加しなくても良いでしょ、というのが相当にある。

そして、ある日、プロピタンを減量するのは危険なので、エビリファイを中止してみた。これはたいして減量できそうにないが、再発率がずっと低そうなのを重視したのである。

プロピタン 50㎎

プロピタン50㎎でも飲むと飲まないでは大違いで、この処方でうつ状態や幻覚が再燃することはなかった。また、驚いたことに、あっという間に5kgも減量したのであった。

今も体重減少が続いているので、あの組み合わせが体重増加を来たしていたと言う他はない。経験的にはプロピタンの方がエビリファイよりずっと体重増加する確率が高い。しかしこの婦人の場合、エビリファイを中止することで、大幅に減量したのである。

抗精神病薬の併用療法には謎が多い。

参考
内因性うつ病(非定型の色彩を伴う)
体重の減量のテクニック
ポール・ヤンセンとプロピタン