SSRIはリハビリには向かないのか? | kyupinの日記 気が向けば更新

SSRIはリハビリには向かないのか?

難しい問題。

SSRIはいま1つ意欲が出ず、今後の人生がどうでも良くなる面があるので、一見、リハビリには向かないように見える。そういう煩わしいことには無気力になりそうだからである。もちろん、身体的な外傷や脳障害の内容や程度にもよる。

結論を先に言えば、やはり人によるんだと思う。

SSRIは疼痛を軽減するので、リハビリにはプラスになる。リハビリは痛いことが多いからである。また、本人の精神的苦痛の由来と言うか、こだわりみたいな感情が薄められて、結果的に良い場合もある。

あと、SSRIはやはり3環系や4環系抗うつ剤に比べ、自律神経系の副作用が少ないため、どうしてもSSRIを使わざるを得ない人もいる。その人に良いかどうかは色々なパラメータがある。僕がリエゾンで治療している人たちは、結果的にさまざまな処方になっている。

僕がよく感じるのは、デプロメールで失敗している人があまりにも多いこと。これは一見、デプロメールがそう悪くは見えない人が何故か失敗しているんだな。

この失敗の理由はいくつかあって、1つはデプロメールから始めたために、その悪い点が最初に出て続かなくなっているケースがある。

これは拒食状態や、不安・焦燥感、不眠など、SSRIによる副作用が大きい。また量の関係で抗うつ作用が足りないと言うのもある。このようなケースでは疼痛もたいして良くなっていないので、やはりうつ状態と疼痛は非常に関係が深いことがわかる。

デプロメールが難しいのは、量を増やせば、それに比例して良くなるわけではないこと。量を増やしたために焦燥感が昂じ、むしろ興奮している老人もいる。また過去ログにもあるが、SSRIは睡眠の質をたいして改善しないことも大きい。リハビリをするような状況は慢性的な運動不足なので、眠れなくて不思議ではない。それを更に不調にする。

睡眠に限れば、SSRIでもデプロメールよりパキシルの方がまだマシだ。こういう人では就前にパキシルを服用させる。このようにすると眠る人は眠る(なんだそりゃだが、結構、真面目に書いている)。

こういうタイプの人はいったんデプロメールを中止するようにしている。その後、良さそうな古典的抗うつ剤を使う。古典的な薬とはアナフラニール、トフラニール、ルジオミールなどである。そういう風にして、うつ状態を底上げした後、必要と思ったらSSRIも使う。リハビリをするような人は3環系、4環系抗うつ剤の睡眠を改善する作用は大きい。またこのような際に、セロクエルなどの非定型抗精神病薬の併用が良い場合もある。セロクエルは不眠に対して良いし、抗うつ作用も持ち合わせるからである。

アナフラニールやトフラニールで副作用が大して出ない人はそれで終わり。あとはリハビリを進めるだけ。

しかし・・
3環系や4環系抗うつ剤は飲めない人がいるので、そういう人は仕方なく、SSRIのどれかを選ぶ。

僕が不思議に思うのは、そういう風に3環系や4環系で試行錯誤していて、またSSRIに戻った時、今度は結構良いというのがわりあいあること。この話は過去ログでは内科外科やリハビリ科のドクターが処方するのと精神科医が処方するのでは効き方が違うのではないかという意見を書いている。もちろんそれもあるが、時間的な経過も大きいような気がする。

精神症状が生々しい時は、SSRIは向かないわけだ。しばしば逆の結果が出たりする。

過去にリエゾンの患者さんで、希死念慮が非常に強い状態で、やむを得ずパキシルを使った人がいる。不本意ではあったが、その人は旧来の薬が全然合わなくて仕方がなかった。パキシルは強い抗うつ用を持つのでそこに期待したのと、睡眠に対しまだ使いやすいと言うのもあった。当初かえって焦燥が悪化したが、その後安定してきた。リハビリを終え今は自宅療養されている。今も車椅子の状態だ。

退院して、1ヶ月に1度ずつ来院されているが、精神面では本当に安定しているので、このケースではパキシル20㎎で良かったんだと思う。道中はそうではなかったけど。

参考
抗うつ剤と睡眠
奇跡があるように言ってはいけない
パキシルはコーティングするのか?
希死念慮の謎