プロピタン | kyupinの日記 気が向けば更新

プロピタン

一般名;フロロピパミド
ブチロフェノン系抗精神病薬。1965年発売。現在はエーザイおよびサンノーバから販売されている。剤型は50mg錠と細粒がある。薬価は安く、50mg錠で16.7円。細粒についてもこのくらいになっている。錠剤は薄い黄色の円形の形状であり、表面にエーザイを示すεのマークのような文字と112の数字が書かれている。なぜ112なのか謎であるが、エーザイの会社の判別番号なのであろう、というか僕はそう思った。

剤型についての感想だが600mgまで処方できるのに50mg錠しかないのは、まるっきりやる気がないのではないかと。会社に。処方する身にもなってほしい。一応600mgまで処方可能なので、600mgまで処方すれば200円近くかかるが、これは古い薬にしては安くはない。ただ、この薬物の特性から、600mgまで処方されることはあまりないのではないかと思われる。ちょっと気になったので、ジェネリックが存在するのか、去年くらいに調べたことがあった。やはりと言ってはなんだが、ジェネリックはなかったのである。現代社会では、もはやあまり処方されていない薬なのであろう。

ブチロフェノン系の抗精神病薬としては、少し変わっている薬物と言える。なぜなら、ブチロフェノンにしてはあまりにも力価が低いから。普通、数百ミリ単位で処方するブチロフェノンは珍しい。僕は、15年前くらいにそこそこ処方していたことがある。とにかく副作用は少ないので、年配の患者に処方していたのである。しかし今思えば、僕は2000年頃まで、プロピタンについてよく理解していなかった。

うちの病院に2000年5月に来た時、プロピタンの処方がやたら多く、なんという変な病院だろうかと最初は思った。処方に関してだけど。それに、うちの病院には、当時リスパダールすら採用されてなかったのである。しかし全般に患者さんが落ち着いており、しかも副作用も少ないので、時間が経つにつれてプロピタンは非常に良い薬だと思うようになった。従来継続中の患者さんに加え、今でも新規にプロピタンを処方することがあるのである。

うちの病院での当時のプロピタンの処方量だが、150~300mgくらいが多く、たまに450mg処方されていたが、450mg以上の処方は非常に少なかった。プロピタンについて等価換算表を見ると、プロピタン200mgがリスパダール1mgと同等とされているがそんなことはない。僕が言うのだから間違いない。プロピタンの最高量600mgがリスパダール3mgに相当するならば、プロピタンは極めて非力な抗精神病薬になる。少なくとも臨床的には副作用が少ないだけで、もう少し力があるような気がしている。このような等価換算表をみると、あたかも力価が低いから、副作用も少ないように見える。普通、プロピタンは錐体外路系副作用が少なく、鎮静、睡眠作用が強いと言われるが、僕は鎮静作用も少ない感覚がある。少なくとも、眠さを強く訴える人は少ない。

プロピタンは古い薬物なので、薬物プロフィールの円グラフも見つけることができなかったが、以下のような特徴を持つとされている。

D2   +
α1  ++
mACh +++
5HT2 ++++
H1 ++


相対的に、5HT2遮断作用が強いことが特徴なのである。たぶんプロピタンの副作用が少ないことは、単に力価が低いだけでなくSDA的な薬物だからであろう。結局、リスパダールが採用されていなくても、プロピタンで十分だった。非定型抗精神病薬が錐体外路系副作用が少ないと言う定義なら、プロピタンはそれに含めても良いくらいなのであるが、陰性症状への効果は、ジプレキサやエビリファイに劣るような感覚がある。現在でも、うちの病院ではプロピタン100mgだけとか、50mgだけというシンプルな処方が存在する。それでも以前に比べ、プロピタンの処方数は減少している。

プロピタンを処方する方からの感想だけど、患者さんが「よどんだ」感じにならないのが良い。フェノチアジン系の薬物や、セレネース、リスパダールの大量、ベンゾジアゼピンを多く服用しているケースでは、いかにも「私は精神薬を飲んでいますよ」といった顔になる。プロピタンにはそれがない。非常にクリアで、多分、認知に対する副作用も少ないのではないかと思われる。

薬物プロフィール的には、体重増加の副作用があってもおかしくないであろうが、体重に対しての増加作用もかなり少ないと感じる。これはたぶん、基本的にブチロフェノンだからだろう。以前うちの病院で勤めていた薬剤師さんと、時々一緒に飲むのだが、「プロピタン、良い薬ですよね」と言う話が今も出てくる。最近、プロピタンによる治療で、一生忘れないような経験をした。これは「3人目の女性患者」という項に改めたい。

参考
QT時間延長