突然家に
『お宅の屋根の瓦のところが壊れているのが気になって』
と、作業服姿の若いお兄さんがやってきた。
まだ長女が小学生の時のことだ。
『このままだといづれ、雨漏りして天井とか腐っちゃいますよ』
私は瞬時に『詐欺だ』と判断し、
『はあ…』
と怪訝そうな声で答える。
お兄さんは、
『僕今仕事帰りなんで、今近くに仲間がいるんで呼んできますよ!』
えっ!!
『でも家、修理代払えないし』
と困り顔で答えるとお兄さんは、
『ついでだからお金なんか要らないですから、ちょっと待っててください!』
行っちゃった…
(ど~しよ…凄い強引なんですけど、新手の詐欺かな?)
暫くすると、
本当にお兄さんは、他の二人を連れてやってきた。
『お待たせしました!連れてきたんで!』
すると後から来た二人が現れ、
二人は私の顔を見て、最初に来たお兄さんに
『あれっ!?』
『お前、若くて綺麗な奥さんが居るって言ってなかったっけ?』
!?
何故か後から来た二人は私を見て怪訝そうにしている。
私は
『あ、あの……』
最初に来たお兄さんは
『じゃあ今から修理してきますんで、すぐに終わりますから!』
そして二人を見返り、
『なっ!いいよな!』
『まあついでだから別にいいけど。。』
と、三人で屋根の上に上がり、作業を始めたのだが……
な、なんか、
さっき私、凄く失礼な事されなかった!?
いや、凄く失礼な事言われなかった!?
最初来た人はきっと私を見て
『若くて綺麗な人だ』
と思った(見間違えた)のだ。
で、二人を呼びに行き、
『若くて綺麗な奥さんがいる家の修理をしに行ってあげよう!』
となり、
二人は、
『えっ!若くて綺麗な奥さん!?行く行くー!』
と、こんなような流れになったのであろう。
で、実際に来てみたら
私だった
と。
し、失礼な!
確かに若くは無いけど(当時35~36歳)、
化粧もしてないし、適当な格好をしてはいるけど、
いや綺麗だろ←
ほどなくして修理は終わり、三人はすぐに屋根から降りてきた。
『じゃあ終わったんで!帰ります!』
本当にタダでいいんだ…
さすがにそれは申し訳なく思い、
『あの…よければこれでご飯でも食べてください…』
と彼らに三千円を渡した。
後から来た二人は、
『えっ!いいんですか!やった!!』
最初に来た人は
『や~…なんかすいません』
と、頭を下げて帰って行ったのである。
あれは一体、何だったんだろうか。
失礼な事を言われて三千円払った私。
でもタダで屋根を直してくれた彼ら。
損をしたんだか、
得をしたんだか
分からない出来事であった。