病院からの折り返しは中々返ってこなかった。
その間に転院の準備と、自分の支度、大急ぎでコーヒーを挿れて目を覚ます。
暫くしたら着信が鳴った。
いつもの通り、いつもの如くワーカーさんからだった。
『転院先が見つかりました。S病院です。これから救急車を呼びますが来て頂けますでしょうか?』
S病院!
良かった~!この病院なら割と近い!
『はい、これからそちらに向かいます!』
急いでタクシーを呼んだが、これまた混んでいるのかタクシーは中々やって来なかった。
無事にタクシーはやって来たが、旦那の待つ精神科病院の場所を今一つ把握していない女性ドライバーだった。(ぬおおおぉ)
タクシーは法定速度を守り、やや大回りしながら精神科病院へのたのた走る。
夫が危篤なんですう!
とでも言えば少しは急いでくれたのであろうか…。
タクシーは何とか病院へ辿り着き、私は慌てて病棟へ走った。救急車は来てないようだ。
病棟へ行くと処置室へ案内された。
へ、へえ~…、こんな所に処置室なんてあったんだ。
『これから救急車を呼びますのでお待ちください』
なぬっ!!
これから呼ぶのー!?
タクシーの中であんなにイライラしてたのにー!!
ゴーッ!!
旦那は処置室の、今度はちゃんとしたベッドの上に寝かされていた。
うーん。。。
こないだの敗血症の時の意識障害よりかは全然マシなような気がする。
『来たよー!分かる!?』
デカめの声で話しかけたら少しだけ目を開けて反応してきた。
お。
口が動いている。
動いてるけど、なんと言うかこう、喋り方を忘れたか、声の出し方を忘れたか…そんな感じだ。
『大丈夫!?これから救急車でS病院行くんだってよ!』
モゴモゴモゴモゴ…
呼び掛けには反応している…。
一体何がどうしちゃったのか…。
そこへ主治医が登場、隣の部屋に移された。
『意識は低下してますが、何故こうなっているのかは解ってないです。これから消化器内科の方へ行って検査をしてもらって、今後の治療方針が決まって行くと思います』
『はい、今度は近くて良かったです💦』
『そうですよね。で、先日お話しした多発性骨髄腫の方ですね。そこの所も伝えておきますね』
『分かりました』
『またすぐこちらへ戻って来られるようになると思いますよ。まあ、検査入院みたいな感じになるかと思います』
『そうですか💦』
主治医が退出し、男性の看護師さんが登場したのですかさず私は、
『すみません、いつも大量の荷物を持って移動してて凄く大変なんです。申し訳ないんですがせめて明日くらいまでこちらで荷物を預かって頂けませんか?必要最低限な物だけ持って行きたいんです』
とにかくあのクソデカバッグ。
あいつがいつも私を苦しめているのだ♨️
前回もあの大量の荷物とクソデカバッグのせいで、道中遭難するんじゃないかと死にそうな思いをしていたのだ。
『大丈夫ですよ!すぐこちらに戻られるでしょうし、預かっておきますね!』
ええっ!!
いつもなら荷物の預かりに一日100円かかるだのなんだの渋っていたのに…。
そうか、じゃあ今回は本当に大した事ないんだ!
スタッフさん達も和やかな感じだし、検査してはいおしまい!みたいな!?
転院は憂鬱だったが、一先ず安心した!
救急車も到着し、付き添いの看護師さんも一つだけやや大きめのポリ袋を提げて持って来た。
今回の荷物はこれだけ!
うおー!良かった!生きてて良かった!
救急車はすぐS病院に到着!
近い!イヤッッホォォォオオォオウ!これは熱いぜ!!
私と看護師さんはICUの中にある面談室へ通され、そこで待たされた。
暫くすると、救急外来の医師が登場。
何となく…この人何処かで会った事があるような気が……。
『現在の意識障害ですが、恐らく肝性脳症だと思います。これから様々な検査をして、それから治療方針を立てて行く形になると思います』
『はい…』
『血液検査、レントゲン、MRI、あと髄膜検査もやります。これは意識障害を起こした患者さん皆さんに受けて頂いてます』
『分かりました』(結構色々やるんだな……)
検査に関する書類と同意書を渡され、医師は去っていき、看護師さんも帰って行った。
ここからが長いんだよね…。
そこへ今度はICUの看護師さんが登場。
『検査へ行く前にご主人様に会えますよ、会っておきますか?』
『あ、はい、お願いします』
ICUの中に通され、旦那が寝かされているベッドへ案内された。
ベッドに寝かされている旦那に
『大丈夫~?ここどこか分かる?』
薄目を開けた旦那はやはり口だけ動かしていた。
『S病院だよ!これから検査いっぱいやるんだって!大丈夫?』
『……いじょうぶ…』
お、少し喋れた!
それを見ていた看護師さん達は、
『凄い!さすがご家族ですね~!私たちでは何も反応がなかったんですよ!』
と、とても関心していた。照れる!!/////
『検査して治療方針決まったらまた精神科病院へ帰れるから、頑張るんだよ!』
『……かった…』
ここで私はまた面談室へと戻り。
が、何度もこれを経験している私は知っている。
ここからがほんっとーに長いということを!
そして同意書の山!また山!
どこの病院のボールペンも大抵書きにくいので、(しかもここの病院のペンはなんと、黄土色のインクだったのだ!!!)、私は常にマイボールペンを持ち歩いているのだ!
一通りの手続きが済み、看護師さんは帰っていった…。
待つこと数時間……

ICUの先生が現れた。
『お待たせしました、一応一通りの検査は終わりました』
『ありがとうございます』
『明日は胃カメラの検査などもやります。今日はこれでお帰り頂いて大丈夫ですよ』
ヤッター!!


『何かありましたらご連絡差し上げますので』
『はい、宜しくお願い致します!』
やっと解放される。゚(゚ ˆ o ˆ ゚)゚。
ここの病院は比較的家から近いと言っても、病院からその最寄り駅までが地味に遠い。
疲れた体に鞭打って、ようやく家まで辿り着いたのは午後5時を過ぎていた。
最悪な事に雷雨まで降っていた……雷恐怖症の私にとっては神も仏もないと言った所であろう。
明日は精神科病院へ寄って、足りなかった分の荷物を受け取り、再びS病院まで行かなくてはならない。
中々に、この難儀な病院巡りは終わりを迎えそうにない。
家に帰れば母は開口一番、
『一体何がどうしたって言うの!?ラインもくれないし!!』
凄く嫌な顔をしながら怒鳴ってきた。
本当に腹が立つことこの上ない。
『仕方ないでしょー!!!それにさっきもうすぐ帰るってLINEもしたわよっ!!!』
なんか、血管切れて私が一番最初に死ぬんじゃないか!!?♨️
と思うような一日だった。
つづく