【解説】ハワイ・マウイ島の山火事が急拡大した原因は「外来種の草」
2023.8.14 クーリエ・ジャポン
ハワイのマウイ島で 8月8日に発生した山火事の死者数が、現地時間12日時点で93人にのぼった。
米国で 過去100年間に起こった山火事のなかで最悪の大惨事となっている。
とくに 壊滅的な被害を受けたのは マウイ島西部の人口1万3000人の街ラハイナだ。
観光地としても知られる 美しい街が、炎にのみ込まれて焼失した。
正確な死者数はまだわからない
93人は これまでに 死亡が確認されている数であり、今後 さらに増える見込みだと、
米紙「ニューヨーク・タイムズ」は伝えている。
現時点で ハワイの歴史上、最悪規模の自然災害であり、米国で起きた山火事の犠牲者数としては
過去100年余りで最多となっている。
これほどの犠牲者が出た要因として、米メディアは、当局による警報発令や避難指示が遅れた
どれくらい焼失したのか?
最も甚大な被害を受けたのは、マウイ島西部の海岸沿いの街ラハイナだ。
かつて ハワイ王国の首都だった歴史ある街だが、この山火事で 焼け野原と化してしまった。
米紙「ワシントン・ポスト」によると、ラハイナ地区で損壊した建物は 2200軒以上にのぼり、
被害を受けた建物の86%が住宅だった。焼失面積は 約880万平方メートルで、再建には 55億ドル
(約8000億円)以上が必要だと推定されている。
ラハイナの住民のなかには、迫りくる炎と熱風から逃れるために 海に飛び込んだ人たちもいた。
現在、4500人が シェルターなどに避難している。
干ばつ、低湿度、強風の 3条件がそろっていた
山火事の直接の原因は まだ特定されていないが、ニューヨーク・タイムズは 強風で倒れた送電線
が火元になった可能性があるとする 専門家の見方を伝えている。 強風をもたらしたのは、
カテゴリー4のハリケーン「ドーラ」で、この風が さらに火をあおったとみられる。
また、ハワイ州兵を率いるケネス・ハラ陸軍少将が 9日の会見で語ったところによると、
山火事が発生する前に 米国立気象局から「レッド・フラッグ」と呼ばれる警報が出されていたという。何ヵ月も続く干ばつ、低い湿度、強い風という 3つの危険な条件がそろっていたためだ。
炎をあおった外来植物とは
結局、今回の山火事は さまざまな悪条件が重なって 急速に拡大したとみられ、その要因の一つに
ハワイの外来植物も挙げられると、ニューヨーク・タイムズは 別の記事で指摘している。
同紙によれば、ハワイには 家畜の飼料として持ち込まれたアフリカ原産の草がたくさんあり、
いまでは 州全体の4分の1近くの土地に こうした外来植物が生息しているという。
その特徴は、雨が降ると 急成長して、干ばつには強い。
ハワイの島々に降る大雨は、外来種の草を 一日に15センチも成長させることがある。
乾季になって 山火事が起きると、外来種の草は いったんは燃えてしまうが、その後 すぐに芽を
出して拡大。山火事に弱い在来の植物を駆逐して、さらに 破壊的なサイクルを作りだしている。