はけ口から梅。 | 境界線型録

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I Have A Pen. A Pen, A Pen Pen Pen.


 昨夜の事件もあまり大袈裟に受け取られるといけないので、簡単に補足しよう。私の文は少し大袈裟に見えるのかも知れないから。
 夜十時半過ぎ頃、娘がサークルを終え駅から歩いて帰る途中、見知らぬ男から道を訪ねられた。男は二十代後半と思しい小柄な奴。青系のジャンパーに黒っぽいニットのような帽子をかぶり、顔ははっきり見えなかった。
 ゴールドの携帯電話に地図を表示して、娘に「ここへ行きたいけど、どう行ったらいいの?」と訊ねた。娘が携帯をのぞき「それなら、あちらです」と応えると、携帯をもった手を胸に手を伸ばしてきたのでサッと飛び退いた。また手を伸ばしてきたので、走って逃げたら後を追ってきた。
 それだけのことだが、放っておいて他に被害が及ぶといけないので警察に通報した。次女がまだ帰宅してなかったとこともあったので。

 私は出来心的軽犯罪には甘い方だけれど、格差を前提にした瑣末な犯罪は不快極まりない。
 男VS女や、大人の男VS子供や老人、みたいな暴力はカスなので撲滅しないと。そのように、はけ口がどんどん下流へ向かうのが、あらゆる歪みのもとだから。これ、組織社会の定型だが。

 はけ口は、滔々と下流へ向かい、日々新聞の三面を騒がせている。
 世間から爪弾きされ腹癒せにナイフを手に、刃向かえなさそうな相手を見つくろって刺す。赤ん坊を可愛がるふりして骨折させる。乳児がうるさいからグラグラ体を揺さぶって脳を破壊する。深夜にコンビニのレジを狙う。
 今日の新聞は侍ジャパンの勝利で雀躍していたが、下流界の出来事も淀んでいた。
 ヘッドライン。「心の病」で労災請求最多1136人。「国は改めてほしい」老齢加算訴訟 原告ら、転換求める。長くなるから夕刊。蓮舫氏の元秘書、路上で痴漢容疑。ウソの就職面接、詐欺容疑4人逮捕。武蔵村山高教諭、児童買春の疑い。ネットに流れるニュースを検索すれば幾らでもあるだろう。

 昨夜の警察の対応も、その流れのひとつだろうか。駈けつけていただいた御礼に一曲贈呈しておこう。わが家では、あの対応は、W杯が観たかったんじゃないかという説が有力だった。



 いずれにせよ、今の社会、人間の中では、必ず覆水は高から低へ、恰も重力に従うかのように流れる。そして、流れの過程には無数の不可視の境界線があり、人々はそこである種の選択を強いられる。
 上か下か。いずれを選んでも碌なことはないだろうが、人間は選ぶ。そして、何かを為す。
 まったく、地獄の審判のようである。

 ま、はけ口観察は、この位にしとこう。やりだすと切りがないから。

 私的にはW杯よりビッグニュースがある。
 ついに、梅干し漬けに着手した。というように平穏そのものである。
 昨日中断した記録もこれに纏わるが、官能的になりすぎたので、その内にしよう。

$新・境界線型録-南高梅水漬け

 熟した南高梅を5kg入手し、水責めしてアクを吐きださせた。

$新・境界線型録-庭の梅水漬け

 庭の梅も収穫した。ベランダに干した布団が落下して三粒撃墜されてしまったが、なんと十二粒もの大収穫。やや未熟だが、水責め。

 浮き世のアクを吐きだした梅どもを笊に上げ乾かし。

$新・境界線型録-漬ける前

 庭梅十二粒の未熟さが目につくので、混沌とさせ目立たなくしてやった。なんの意味もないが。
 塩漬け道具も梅も焼酎で清め、ホーロー樽に納めては粗塩を振って積み重ね、4kgの重石をした。が、重さが足りなそうなので、2.5kgのダンベルの錘を追加した。

 あとは無事に梅酢が上がるのを確かめ、ぼんやりと酷暑の土用を待つばかり。
 七五調になったから、たまには一句ひねってしめるか。


   梅雨はれ間なす術もなくうめを漬け


$新・境界線型録-塩漬け梅