みなさんこんにちは。前回からの続きです。

3月中旬、頂いた連休で実に14年ぶりの韓国・ソウル周辺をひとり旅した際の道中記をお送りしています。
旅は第2日目(2025年3月18日)の様子です。
ソウル郊外の「義王(의왕 Uiwang ウィワン、京畿道義王市)」にある、韓国唯一の「鉄道博物館」にやって来ています。念願の訪問です。

さて、大柄な車体で迫力の大統領専用列車と、警護用列車を観てまいりました。
日本には、皇室の方々が乗用される御料車が保存されている例がありますが、それとはまたまったく違う印象。興味深いものです。

この大統領専用列車の後方に、緑と白地に黄帯が入った車両がぽつんと置かれていることに気づきます。ちょっと行ってみましょう。

「Train Lounge」…休憩室のようです。


車内の様子。テーブルや椅子はあたらしいのでもともとの座席類は撤去されているよう。
やはりここにも誰も居ませんでしたが、古い車両独特の匂いがぷ〜んとします。このあたりは日本の保存車両のそれと同じでしたから、なんだか安心した次第です。


この車両についての詳細な説明がなかったので
詳細はわからなかったのですが、木造の年代もの。おそらくは、急行以下の列車で使用されていたものではないかと思われます。


おっ、デッキを隔てる扉になにやら広告が。


しいんと静まり帰った客車を後にしますと、貨物列車と特急列車が同時に目の前を通り過ぎて行きました。義王は韓国でも大幹線が通る駅ですので、観ていて飽きやしません。

引き続いて、メインの車両展示を拝見して行くことにします。大きな屋根で大切に覆われているあたり、韓国鉄道史では重要な車両が展示されているのでしょう。楽しみです。



製造は1940(昭和15)年8月とありますので、日本が朝鮮半島全土を統治していた頃です。
朝鮮半島の鉄道は「朝鮮総督府鉄道」が運営。
その最重要幹線は内地(日本)に最も近い釜山(ふざん、プサン)を起点に、大邱(たいきゅう、テグ)や大田(たいでん、テジョン)を経由。京城(けいじょう、ソウル)から平壌(へいじょう、ピョンヤン)を経て、新義州(しんぎしゅう、シニジュ)までを結ぶもの。
新義州から先は、やはり日本の影響下で建国された満洲国へ列車は直通。管轄は南満州鉄道(満鉄)となり、新京(現在の中国・長春)や奉天(瀋陽)へと連絡していました。出典①。

つまりは、日本内地から大陸中央部に至る戦前日本の大動脈、朝鮮半島を縦貫していた「朝鮮総督府鉄道」の主力という、重要な任務に当たっていた機関車なのでした。すごいこと。


製造された1940年というと、40年にわたる日本の朝鮮半島統治がまもなく終わろうかというところ。翌年には、日本はアメリカ・イギリスに宣戦し、アジア太平洋戦争が勃発する頃です。


実に、車齢85年の蒸気機関車。激動の歴史の波を経て来たことを、その黒光りする立派な車体は静かに語りかけているかのようです。
次回に続きます。
今日はこんなところです。
(出典①「満洲朝鮮復刻時刻表 附台湾・樺太復刻時刻表」日本鉄道旅行地図帳編集部 2009年11月発行)