「近鉄全線2日間フリーきっぷ」で巡る近鉄沿線道中記2023〜その22 | 「EXPO2025 大阪・関西万博訪問記」ありのまま生きてこう 自分を磨きながら

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「EXPO2025 大阪・関西万博訪問記」公開中!趣味の鉄道の話題を中心に、旅行記や生まれ育った東大阪、敬愛するロックシンガーソングライター・松阪晶子さんについてなど綴りたいと思います。

みなさんこんにちは。前回からの続きです。

今年6月に限定で発売された「近鉄全線2日間フリーきっぷ」で巡った、近鉄沿線乗り鉄道中記をお送りしています。


「ナローゲージ」という、いまや国内に3社・4路線しか存在しない貴重な、軌道幅が762mmの車両も小規模な規格の鉄道。



そのうちの2路線「内部線(うつべせん)」「八王子線」を有する「四日市あすなろう鉄道」を朝から乗り鉄しているところ。

四日市→西日野→日永→内部…と乗って来まして、最後に途中下車したのは「日永駅」です。「あすなろう中央緑地駅」という、総合運動公園がある近隣の緑地公園が副駅名になっていることは、前回の記事でも触れました。



日永は、起点の「あすなろう四日市駅」から2つ目の駅。旧東海道に沿う、昔から栄えた市街地のただ中にあります。出典①。



本線筋に当たる「内部線」と、ひと駅だけの「八王子線」が分岐しているのが特徴です。


「八王子線」はホームからすでに結構な急カーブにかかっていることがわかります。趣味的には大変興味深いもの。グーグル地図より。



ところで、行きしなに四日市の駅で頂いた路線図入りの沿線案内を手元に参照しているのですが…「ナローゲージ(特殊狭軌)鉄道で唯一の分岐駅」というくだりに、はっと気づきます。


前口上からしつこく?述べておりますが、日本広しといえど、令和の現在、3社・4路線が奇跡的に残るだけという、ナローゲージ鉄道。

そのひとつは、四日市から10kmほど北の桑名を起点にする「三岐鉄道北勢線(さんぎてつどう ほくせいせん)」。滋賀県との県境も近い「阿下喜駅(あげきえき、三重県いなべ市)」に向かう路線。支線はありません。出典②。



そして、いまひとつは「黒部峡谷鉄道」
富山・長野県境の「立山黒部アルペンルート」の一部を為す、トロッコ列車が走る観光路線として有名なものです。

富山地方鉄道に接続している「宇奈月駅(富山県黒部市)」を起点に「欅平駅(同)」へ至る路線。やはり、支線の類はありません。


こちらは「あすなろう鉄道」や「三岐鉄道北勢線」とは異なり、他に交通機関を建設出来ないような、険しい山岳地帯に鉄道を通すために自ずから規格を小さくしていることから、その二つとは出自がまったく異なるもの。出典③。


そういったことで、この「日永駅」は日本の鉄道では唯一無二の貴重な存在だったというのです。これは、趣味的には大変興味深いもの。


ただ、普通に乗っていたらなんとも思わないのかも知れませんが。

こうした別の視点から俯瞰すると、ものすごく希少なものが身近にある地元の方々が、鉄道ファンのはしくれとしては、うらやましくも思えます。



それはさておき、この希少な駅構内をあれこれと観察して行くことにします。


まず「内部線」四日市ゆきから眺めたものから。駅舎を入ると、構内踏切をはさんで互い違いにホームは設けられています。


駅舎の右手は、1番線の「内部方面」。
古レールの支柱が、味わいのある佇まいです。


階段を降りて、構内踏切を渡ります。


踏切から1番線を望む。
間近で見ますと、軌道幅のなんと狭いことかとやはり感じます。安全に留意しながら撮影。


これを渡ったところが2番線「四日市方面」。内部からやって来る四日市ゆきが発着するもの。


奥に、3番線「西日野ゆき・四日市方面」。ひと駅だけの支線「八王子線」のホームです。双方向の列車が同じホームに発着するのも、特徴でしょうか。


ホームがありながらのこの急カーブは、実に半径100mというもの。一般的な鉄道ではそうそうない規格なのも、小回り効くナローゲージだから出来る芸当?なのでしょう。

さらに、この部分を通過できるように車体長の長いモ260・ク160形車両は車体端部隅部がカットされている。(フリー百科事典Wikipedia#西日野駅より)といいます。


これ、帰宅してから気づいたのですが。
確かに、先頭車両の運転室部分が少し切り欠かれ、内側に引っ込んでいるではないですか!


この駅、この3番線の急カーブの条件をクリアするためだけの装備だったとは。
いや、これは気づきませんでした。なるほど…





ところで、その3番線の反対側を眺めていますと、石積みの古い土台を見つけました。


長さは「あすなろう鉄道」の15m級車両がだいたい2〜3両分くらいでしょうか。これは、ひょっとしたら…

かつては3番のりば反対側にもホーム(4番のりば)があり3面4線であった。当時は八王子線列車同士の行き違い設備があり、3番のりばが四日市方面、4番のりばが西日野方面だった。


と、同じ「#西日野駅」には続きます。
かつては「八王子線」も、ここで行き違いが可能なこのような配線だったようです。


しかし日本の鉄道は明治初期の開業以来150年以上、あまねく左側通行というのが常識です。そうなると、ここでは珍しい「反対通行」をしていたのですね。



おそらくは、2番線が内部線からの四日市ゆきが発着するため、構内踏切を渡らず済むように四日市ゆきの乗り場を揃えていたから、ではないでしょうか。あくまで推測ですが。

この珍しい構造は、昭和50年代まで現存していたようです。「#西日野駅」より。


4番線が廃止されて以降、支線の「八王子線」は、この駅から入った列車がそのまま「西日野駅」で折り返すのみ(閉塞区間)になり、現在に至っています。



かつては「伊勢八王子駅」まで延びていたものが1976(昭和51)年4月に廃線となり、ひと駅だけの支線になったからでしょうか。

ちなみに、西日野から伊勢八王子まで路線が現存していた時代も、列車行き違いが出来るのはまさにこの日永にあった、くだんの4番線だけでした。出典④。


そういったことで、時間がうまく会えばこのような迫力のある場面が見られます。左は内部発四日市ゆき、右は四日市発西日野ゆき。


いやこれは、掘り下げれば掘り下げるほどおもしろいものです。また再訪したいもの!



ところで、その2・3番線の間、デルタ地帯のようになっている場所にはちょっとした公園が設けられているのですが、そこに置かれているのが、なんと台車と車輪。もちろん実物です。



本題に掲げている「ナローゲージ」の醍醐味と言いますか、その最大の特徴がひと目でわかるものでした。


次回に続きます。

今日はこんなところです。


(出典①「四日市あすなろう鉄道 乗って歩いて再発見マップ」特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会企画・編集 四日市市発行 2023年3月)

(出典②「三岐鉄道」ホームページ)

(出典③「黒部峡谷鉄道」ホームページ)

(出典④「むかしのくらし読本4 四日市の昭和の鉄道」四日市市立博物館編・発行 2018年1月)