みなさんこんにちは。前回からの続きです。


昨年10月から放送がはじまった、NHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
長崎・五島列島とともに、おらが街・東大阪がその舞台になっていた作品です。

3月31日に最終回を迎えたこのドラマ、気づいたこと、印象的だったことなどを毎週、取り上げて述べてみようという企みを、第1週からお送りしています。
いよいよ最終週、第26週「私たちの翼」編。前編はこちら↑

読売大阪朝刊特別版「よみほっと」2023(令和5)年3月26日付け 10面より。


主人公・梅津舞(福原遥さん)らが「空飛ぶクルマ」の開発に携わる中、夫で歌人の貴司(赤楚衛二さん)は、短歌が詠めなくなるという深刻なスランプに陥る、という場面も当週では描かれました。

貴司はすがるような思いで、自身を短歌の世界に導いてくれた恩人、八木(ピース又吉直樹さん)を、フランス・パリにまで訪れます。

部屋には、貴司が世に出した2冊目の歌集「連星」。きっと、幾度も読み直したのだろうと思われるもの。


貴司の胸の内にあったのは、自分が満足の行かない作品を、書評で褒められるのがつらいということ。八木に、語るのですが…

そもそもの短歌が詠めなくなった理由は、舞と結婚して、自分自身が幸せになってしまったからではないか、とさらに吐露します。
さすがに、これは舞には言えない心境です。

八木はかつて、詩を書くことはこれほどしんどいことはないと貴司に語る描写がありました。
先日にアップした、第25週まとめでも触れたことなのですが、まわりに合わせて生きるという苦しさの中から、さらに苦しみながらも花を見つけるようなことが、詩を書くことだと。

「自分が息をするため(自分らしく生きるために、でしょうか)」だけに詩を書いていた自分がその詩を、ある時から自分のためだけではなく、あげたいと思える人がふと出来たのだと。

そして八木は数日後、話したいことがあったら言葉にしてみ、と書き置きを残し、貴司の前から姿を消してしまいます。

さらに懊悩する貴司。さらに、パリではロックダウンがはじまってしまいます。


一方の東大阪。長崎でフライトナースになった舞の親友・久留美(乃木坂46・山下美月さん)は、遠距離交際していた舞の兄・悠人(関ジャニ∞・横山裕さん)と、久々に再会。




ついに、このふたりも結ばれました。
時代の寵児から一転、不遇をかこうことになった悠人の、一番の理解者は他ならぬ久留美なのでした。


その足で久留美の両親、佳晴(松尾諭さん)と
道子(たくませいこさん)が営む「ラグビーカフェ ノーサイド」に、報告に赴くふたり。


佳晴さんの、感極まった姿が印象的でした。
娘が幸せになれないのは、けがのため定職に就けない自分のせいだと責めていた佳晴の苦しさを、十二分に理解していた久留美。

道子は、佳晴が実業団のラグビー選手時代から久留美とも懇意にしていた関係。そして、この父娘の経緯を最も理解していた人物。
本当に良かったなと安堵しました。


続いて、母・めぐみ(永作博美さん)と舞に話しをするのですが…驚きのめぐみに対して、舞はふたりの関係を、わかっていたようです。
となると久留美はめぐみの義娘で舞の義姉に、貴司は義妹の夫になる…幼馴染3人は、家族になったのですね。不思議な感じもします。


ふたりの結婚の報告を、パリで知った貴司。

折しも、厳しいロックダウンが続くパリ。
ひとり、アパートに閉じこもる中で、貴司は八木の言葉を、毎日反芻するのですが…


貴司が気づいたのは誰のために、なんのために言葉を紡いでいるのか、ということ。
それは紛れもなく、大切な、愛する妻の舞のためなのだと気づいたようでした。


急ぎ、舞に連絡をする貴司。



ひらめいたのは、短歌ではなく、随筆を書くということでした。それも、舞へ手紙をしたためるつもりで、という貴司。

貴司が遭遇したのは、コロナ禍のために帰国することはおろか、外出でさえ支障を来たしていた毎日。期せずして、というのでしょうか。
八木が貴司に、このような言葉もかけていました。なにがいちばん大事なことだったのか。まさに、これが答えだったのでしょうか。

極限の状態にまで自分自身を追い込んだ貴司が
ついにまた、ひとつ殻を破った瞬間でした。
愛する妻と娘が待つ東大阪に、数ヶ月振りに帰宅を果たします。

この週は、さらに2026年まで時間は進みます。パリでの出来事を記したことを端緒に、貴司が世に送り出したのは「トビウオの記」という随筆でした。
自分を表現する方法は、ひとつではないということが、これまでの短歌という表現ではなく、随筆になったのだろうかと、わたしは捉えたのですが。




さらにこの随筆。舞らが手がける「空飛ぶクルマ」開発にまつわることに言及されています。



ついに完成した「空飛ぶクルマ」は「かささぎ」と命名されたようです。

ところで、このような記事を見つけました。
読売大阪夕刊 2023(令和5)年3月29日付け 10面より。

劇中に登場する、貴司が詠んだ短歌、先ほどの八木による詩などを収録した、詩歌集が実際に発行されることになったのだとのこと。

当作で主に脚本を担当した桑原亮子さんは、宮中歌会始での入選歴もあるという歌人。
貴司が詠んだ短歌は、桑原さんの手によるものだそうですが、ドラマから派生した歌集とは…これは異例の出来事ですね。気になります。

かささぎは七夕の日、天の川に橋をかけると言われる、吉兆の鳥。その名がついた「空飛ぶクルマ」。無事に、空を飛べるのでしょうか。
次回に続きます。
今日はこんなところです。