みなさんこんにちは。今日の話題です。
昨年10月から放送がはじまった、NHK朝の連続テレビ小説「舞いあがれ!」。
長崎・五島列島とともに、おらが街・東大阪がその舞台になっている作品です。
このドラマ、気づいたこと、印象的だったことなどを毎週、取り上げて述べてみようという企みを、第1週からお送りしています。
↑は先週、第16週「母と私の挑戦」前後編。

読売大阪朝刊特別版「よみほっと」2023(令和5)年1月22日付け 7面より。

それでは、第17週「大きな夢に向かって」編を今週も、前後半に分け振り返ってまいります。


この週から、舞台は一気に4年進んで2013(平成25)年に入りました。10年前のことです。
主人公・岩倉舞(福原遥さん)はパイロットになる夢を封じ、母・めぐみ(永作博美さん)が社長を継いだ「IWAKURA」に入社。27歳になっていました。


営業担当として、ばりばり活躍している姿からこの週ははじまりました。
先週も触れましたが、ここまでの劇中、これと決めたことには、ものすごい集中力と、行動力のある舞のこと。先週終わりからなんとなく、この姿には想像がつきました。

会社も、先代社長の父・浩太(高橋克典さん)の急逝と、経営危機をなんとか乗り越えて、人を増やさないといけないほどに成長して、まさに順調なようです。舞とめぐみも、すっかり社員と社長になっていました。
ただ、4年間飛び越えてはいますが、その間にはさまざまな苦労があってのことだと察します。

そんな中。出荷量が増加する商品の梱包のために、止むなく退職して貰ったパートさんにも、戻って来て貰うことは出来ないかと、舞。


父・浩太(高橋克典さん)が生前に、取り引き先の信用金庫から、経営再建のために要請された人員削減。最初に退職することになったのが
パートのおばちゃん3人組でした。

ここのねじは、職人さんらが一生懸命拵えた素晴らしい製品。それを最後に検品して、最高の状態で、顧客に提供する。
おばちゃんたちにも、立派な矜持があって働いて来た経緯がありました。第14週より。


当時は、ねじのことなどなにも知らなかったであろう舞。しかし4年の間に、専門知識のみならず、社会のさまざまな見識も身に付けた結果だったのでしょう。
無事に、おばちゃんたちの説得に成功します。
いつも工場の前を通る度に、従業員があいさつしてくれるから、ここは間違いないと働くことにしたんや、と言っていたおばちゃんたち。これは、個人的にはとてもうれしい一幕でした。

ある日。舞は「航空機産業参入支援セミナー」に参加したいと、めぐみに提案します。父・浩太も生前に幾度も参加していたという、中小企業を対象にしたものです。

IWAKURAで製造したねじを、航空機に搭載することが夢だったという、亡父・浩太の遺志を、ふたりとも十二分に理解してはいるものの、参入するのにはあまりにもハードルが高いもの。
社長のめぐみとしても、特殊なねじを拵えるための専門的技術がなく、なおかつ、それに特化した機械を導入しないとならない。

舞も、もちろんそのあたりは承知はしているのでしょうが、熱意に負けて、セミナーに参加することになりました。


後日。セミナーに参加した舞とめぐみ。IWAKURAと同じように、中小規模の企業がその中心だったことが、参加者からの発言からでもわかったのですが…




そんな中、議論が行き詰まったところで、舞が発言し出します。設備や技術力はバラバラでも、各々が持つ得意な分野を組み合わせることで、専門的で高度な製品を、安定して生産出来るのではないかと。
なるほど、一社だけですべてを賄おうというのではなく、各々が補完し合う、という考え。


そして、セミナーにオブザーバーとして参加していた荒金(鶴見辰吾さん)という人物と、舞は出会います。思惑も、やり方も違うそれぞれが、力を合わせるということが難しいことなのではないか、と問う荒金に対し…

舞は、荒金にこう返答をします。
まさに、街工場時代からIWAKURAの根底にあった考え方だというのは、ここまでの劇中でもよくわかります。冒頭のパートのおばちゃんのエピソードとも、通じ合う考え方です。


荒金が勤務しているのは「菱崎重工」という、国内重工業では、トップシェアを誇る大会社でした(「三菱+川崎」でしょうか)。
さらに父親(舞の祖父、劇中未登場)が急逝し「IWAKURA」前身の「岩倉螺子(らし)製作所」を継ぐまで、浩太が働いていた会社だと、めぐみ。

先ほどの、舞の発言の時、その荒金が反応していた描写がありました。ひょっとしたら、ですが、荒金は会社勤めだった頃の浩太を知っている…来週あたりには、わかるでしょうか。

その翌日。荒金が「IWAKURA」を訪問して、航空機の新型エンジン用ボルトを試作してみないかと、相談を持ちかけます。



IWAKURAのような高い技術を持つ中小企業が、これからますます高まるであろう航空機産業需要に果たして、本当に貢献が出来るのか。
その具現化のために、さまざまな模索を続けているのだ、ということを切々と語ります。

IWAKURAの技術力を認めてのことでしょうが、荒金のこの要請というものは、ここまでの劇中最大の転換点、のように感じられました。
さらに、試作だけではなく、採用がなされれば正式発注が期待出来るもの。
国内最大級の重工業企業との取り引きですから、成功すれはおそらくは、IWAKURAはさらに成長拡大するきっかけになるであろうこと。


悩むめぐみに、舞はこう続けます。


志半ば、この世を去ってしまった先代社長で、夫の浩太。ことあるごとに、この夢を語っていたことを思い出します。
そして、どんな逆風にあっても先頭に立ち、会社を前へ前へと進め、あたらしいことに挑戦し続けることを止めませんでした。

会社が一歩ずつ成長する過程には、すぐに解決出来ないような難題でも、従業員が力を合わせ技術を結集した結果、幅広い製品を取り扱えるようになったことは、劇中描かれている通り。
この荒金からの航空機部品製造の話しは、まさにそれに結実したものなのでは、だとここに来てひしひしと感じます。第5週より。

ただ、やみくもに父の夢を実現させたい、というだけなのではなく、それが実現出来るところまで、実際に手が届きそうなところまで、長い年月を要した結果、やって来ている。

繰り返しですが、先代社長の浩太が築いた最大の財産というのは、まさにこれだったのでしょう。娘の舞は、見事にそれを継承しています。

そして、従業員たちもその夢を尊重し、ここまでやって来た。もちろん、情に厚い浩太の人柄と行動が伴ってのことでしょうが、トップが率先してチャレンジする社風というものは、本当に大事なことなのだろう、と思えます。


そして、社長のめぐみもついに決断します。
「浩太の夢=IWAKURAの夢=舞の夢」がついに実現に向かって進みだした、という意味で、これは大きな転換点のように感じた次第です。

浩太が生きていれば、どれだけよろこんだことだろうか、それも、愛娘の舞が先頭に立ってのこと…ホロッとした瞬間でした。
次回に続きます。
今日はこんなところです。