みなさんこんにちは。前回からの続きです。
府南部、和泉市(いずみし)の「弥生文化博物館」で、今年3月まで開催されていた「泉州を貫く軌跡 阪和電鉄全通90周年」という特別展の訪問記をお送りしています。
昭和初期に、現在の「JR阪和線」を建設した「阪和電気鉄道」。
ここでは、昭和初期の開業以来、人口希薄地だった沿線の開発によって定住人口の拡大を狙うとともに、和泉山地に近い、沿線の豊かな自然を活かしたさまざまな開発も、阪和は積極的に行っていたというテーマで項を進めます。出典①。
移り変わる四季に合わせ、沿線で展開されていたレジャーについて、展示から見ているのですが、今日は「秋の阪和沿線」で味わえたおいしいものについて、取り上げたいと思います。
ご多分に漏れず、この楽しい「松茸狩り」には阪和も注力をしていたようです。
提携していた松茸山は、和歌山方面へ向かうほど数が増えて行きます。
過去記事になりますが、阪和が提携していた松茸山でのフルコースメニューが興味深いので、ここで取り上げておきたいと思います。
(2018年「泉南市埋蔵文化財センター」で開催の「阪和電気鉄道」に関する、別催事より)
ところで、先ほどのこの「松茸狩」の広告なのですが…現在の貨幣価値に直すと、いったいどれくらいの料金になるのか?気になります。
関係するホームページをあれこれ巡ってみたのですが、この広告が打たれた、昭和初期の物価と現在のそれを、かなり乱暴に比較してみると(基準:「喫茶店で提供されるコーヒー1杯」昭和10年頃…10~15銭 令和2年…400~500円 としました)、
「山の定食(85銭)」→4000~4500円
「松茸飯(食べ放題 20銭)」→1000~1500円
「すき焼(かしわ40匁=1匁は3.75g=・あしらひ=野菜類=付 65銭)」→3000~3500円
といったところでしょうか。高級食材となったいまから考えますと、割合に廉価なようにも感じます。
しかし「かしわ(関西でいう”鶏肉”)40匁」とは、換算すると130gくらいなのですが…
ちょっと少ないような(笑)
ちなみに、隣の「芋堀」の「入園料 5銭(芋2株付)」→200~300円くらいでしょうか。
これはお得ですね。
当時は少し贅沢をすれば、秋の味覚の王様を満喫出来たようです。
わたしにとって松茸とは、永谷園のお吸い物でくらいでしかお目にかかれません(笑)
他にも、和歌山県内に入った「和歌の浦」や「紀三井寺(きみいでら)」、「加太(かだ)」などでの、料理つき徳用きっぷなども。
いずれも阪和沿線外、殊に加太などは、ライバル南海の支線が通っている土地というのにも、興味深いものを感じるのですが、リーフレットには「和歌浦(わかのうら)」との文字も見られます。以上、出典①。
「和歌浦」には、阪和直営の「双子島遊覧地(ふたごしまゆうらんち)」がありました。
「阪和東和歌山駅」から、当時は和歌山にも進出していた京阪電車の「和歌山市内線(後年に南海電車へ譲渡された路面電車)」を経由することで、遊覧船の運航、魚釣りや水辺でのレジャーなどが楽しめる、風光明媚な当地へ到達することが出来るところでした(注釈:阪和は京阪電車関係者が出資し、さまざまな技術協力等で創設された会社だった)。ここまで出典②。
さて、展示にはちょっと興味深い「兎狩」もあるではないですか。
それも、冬の人気行事だという…
並べられていた、色鮮やかなリーフレットを探してみますと…左下に、確かにありました!
松茸同様やはり、阪和が提携している山々で、案内人の手引きによるもののようですが、罠や手持ちの網で捕獲するという、なかなか野趣あふれるレジャー、否、アクティビティです。
今日でいう「ジビエ料理」のカテゴリーになるのでしょうか。
今日の我が国では、味わう機会なぞそうそうありませんが、捕獲した後にも、ちゃんと?捌いて鍋にして味わえるシステムになっていたようです。一度は味わってみたいものばかりです。
(出典①「阪和電気鉄道 沿線御案内」阪和電気鉄道発行 昭和11年)
(出典②「新和歌浦の阪和新名所 双子山遊覧地」阪和電気鉄道発行 昭和10年)
次回に続きます。
今日はこんなところです。