みなさんこんにちは。前回からの続きです。
今年4月から、「OsakaMetro今里筋線」延伸計画区間の需要喚起や今後の工事の検討を目的に、「BRT(Bus Rapid Transit)」という、鉄道に匹敵する速達性、定時性を備えた方式により「社会実験」として運行が開始された、大阪市東部を南北に走る「大阪シティバス」の「いまざとライナー」について取り上げています。
「いまざとライナー」沿線をあちこち途中下車しながら巡って来ているのですが、その中間地点に入って来ました。
降り立ったのは「湯里六丁目(大阪市東住吉区)」停留所です。
「いまざとライナー・長居ルート」の便は、始発の「地下鉄今里(同東成区)」から走って来た「今里筋」からようやく離れ、右折して「長居公園通」に入り、終点の「地下鉄長居・長居西二丁目(同住吉区)」へと向かっています。次の「地下鉄長居」までは、ここからはノンストップです。
またこちらは、一般系統の「4号系統(出戸バスターミナル、同平野区⇔地下鉄住之江公園、同住之江区)」という、「大阪シティバス」でも主要な路線も経由しているところです。同じ停留所からの発着をしています。
ところで、この「湯里六丁目」という場所ですが…
前回の記事でも触れましたが、ここは現在は「今里駅」が終着となっている「OsakaMetro今里筋線」のそもそもの終着駅として計画されていたところです。路線延伸のための建設費用、あるいは旅客需要数などの課題があり、延伸は凍結されてしまっています。
ですが、仮にここまで「今里筋線」を延伸しても接続する他路線の駅もなく(バス停で東へ数個先には「谷町線」の「喜連瓜破駅、きれうりわりえき。同平野区」がありますが)、個人的にはどうしてここを終点に設定したのか?という疑問がありました。
それでは、そういった経緯を含めて、「湯里六丁目」停留所周辺を探索してみます。
バスを降車したのは、先ほども触れたように「長居公園通」、この目の前の道路です。
「湯里六丁目」の交差点、「今里筋」を北へ見たところ。
ここは「蒲生四丁目(がもうよんちょうめ、同城東区)」から「今里」や「杭全(くまた、同東住吉区)」を経て、市の東部を南北に結んでいる「今里筋」の終端部に当たります。ここで交差しているのが、その「長居公園通」です。
実はこの「長居公園通」沿いには、「仮称・敷津長吉線(しきつながよしせん)」という「大阪市営地下鉄9号線」を建設させるという構想がありました。
計画通りだと、地図では上下(南北)に延びて来る「今里筋線」と、左右(東西)の「地下鉄9号線」とが、ここ「湯里六丁目」で接続する…という目論見があったようです。
それでは、参考までにこちらをどうぞ。
いずれも、大阪市が作成した資料(「敷津長吉線[住之江公園~喜連瓜破]詳細版)からです↓
大阪市営地下鉄 9号線は、大阪市住之江区の住之江公園駅から同市平野区の喜連瓜破駅までを結ぶ、大阪市交通局(2018年4月にOsakaMetroとして民営化)が計画した大阪市営地下鉄の鉄道路線(未成線)である。仮称は敷津長吉線という。
大阪市の「交通事業の設置等に関する条例」に定めている9路線153kmのうち未着手となっている部分の一つで、もし建設され、完成すれば2006年12月24日に開業した今里筋線とともにJR大阪環状線の内側を通らない地下鉄となる。
9号線が計画されている地域は、大阪市の南部(具体的には住之江区・住吉区・東住吉区・平野区)にあって長く東西の交通が他の大阪市域と比べてやや不便であったため、この9号線建設は該当地域の住民が長く切望し続けていた事業案である。
長居公園通の地下を通る計画で、途中駅の数・設置位置・名称は他の地下鉄路線との接続駅が設けられるとされるのみで未定である。
また、規格については南港ポートタウン線(注釈・住之江公園駅から南港方面へ路線を延ばす、ゴムタイヤ方式の「ニュートラム」)を延伸する形で案内軌条式の新交通システムとする案もあったが、立地条件の関係で見送られており、長堀鶴見緑地線や今里筋線と同じ鉄輪式リニアモーターミニ地下鉄となると見られている。
1989年の運輸政策審議会答申第10号では「今後整備を検討すべき路線」として示されていたが、20004年10月に出された近畿地方交通審議会答申第8号の「中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」には含まれていない。
(出典・Wikipedia#大阪市営地下鉄9号線)
資料を拝見して行きますと、市の南部で東西の移動が不便なこの地域でのあらたな交通機関、という位置づけがなされていることがわかるのですが、ここ「湯里六丁目」で「今里筋線」、また、ここから少し西の「長居(同住吉区)」で「御堂筋線」や「JR阪和線」と接続が可能なものの、交差する他の既存の鉄道の多く(近鉄南大阪線、南海高野線、南海本線など)とは交差はしているものの、接続駅が設けられないという、見方によれば致命的な点があることも、同時にわかります。
さらに、西の終点「住之江公園」を経由し、臨海部・南港方面への連絡をも考慮した路線だということもわかるのですが、「事業採算性」という点で「今里筋線」よりもかなり旅客需要の数字が低く、路線単独での黒字転換はおろか、建設費の減価償却ですら相当な年月を要するようで、計画としては存在しているものの、実質的には「建設凍結」となってしまっています。
「長居公園通」には、先ほども触れたように、南北を走る「4号系統」のバスが運行されています。
全路線の中でも、利用客の多い主要な系統に当たるものですが、大阪市内中心部から数キロ離れていて、なおかつ都心へと向かわない路線…となると、これをわざわざ地下鉄に転換して、というのは、素人のわたしからしても、計画自体にはどうも無理があるように感じます。
「今里筋線」も実は、そういった要素に当てはまる部分もあったりするのですが、赤字のある路線をただ運営させるだけではなく、今後の方向性を見出すためにさまざまな工夫のされた「いまざとライナー」を走らせて将来の建設について判断するという試みは、結論はさておき地元民としては実に興味深いものがあります。
そのような、実は意味の込められた「湯里六丁目」について少し探ってみました。
ここからは「地下鉄長居」へと向かうのですが、停留所の発車案内を確認しますと、並行するその「4号系統」の方が早く来るようです。
「いまざとライナー」に乗れば、「地下鉄長居」まではノンストップなのですが、この区間では20分おきの運転なので少々待たなければなりません。せっかくやって来た同じ方向へのバスなので、これに乗ることにします。
次回に続きます。
今日はこんなところです。