みなさんこんにちは。前回からの続きです。
「JR東日本」全線完乗を目指す旅、長野県との県境近くを西へと延びる群馬県の「吾妻線(あがつません)」に乗車しています。

単線のその「吾妻線」、小さな駅に丹念に停車して行きます。「郷原駅(同吾妻郡東吾妻町)」にて。

車窓には、少し雲が出て来たでしょうか。寒々とした空が広がります。


しばらく走って「川原湯温泉駅(同吾妻郡長野原町)」に到着。
「吾妻線」の主要駅のひとつなのですが、駅名に「温泉」とつくあたり、こちらも名湯「川原湯温泉」が駅近くにあります。

では、そのあたりは先日も登場した「各駅停車全国歴史散歩11 群馬県」
(土井耕作著・河出書房新社刊 昭和58年7月初版 絶版)から拾ってみます。
歴史に輝く川原湯温泉
吾妻渓谷の川上、断崖の上にあるのが川原湯温泉である。ここは古い歴史と伝統が今に生き続けている”いで湯の里”で、『鎌倉日記』によると、建久四年(一一九三)に源頼朝が浅間高原で鷹狩りをした折、この温泉に入浴して、大いに満足し、源氏の紋所の笹りんどうを下賜したと伝えられている。以来この湯は「王湯」と命名され、川原湯温泉は入口にこの紋章をかかげている。
若山牧水(わかやま・ぼくすい、1885-1928。戦前の日本の歌人、書家。代表作「別離」が知られる)はこの温泉に旅装を解くこと一〇日ばかり、渓谷の新緑を堪能した。牧水ばかりでなく、江戸時代から明治・大正・昭和にかけて、この素朴な温泉地を訪れた文人墨客は数知れない。(後略、出典同 P106)


さて、その「川原湯温泉駅」を発車しますと、車窓には、それまでとは異なるあらたな造成地然とした風景が目に入って来ます。
そういえば、先ほどの駅もまだ新しいものだったので、調べてみますと「平成26(2014)年に移転・完成したもの」だとのこと。

車窓から見える、並行する川に架かる橋もまだ新しいように見えます。
先ほどの「川原湯温泉駅」の東方、約1km奥に計画されている「八ッ場(やんば)ダム」の工事の関係で、この吾妻線をはじめ、温泉街や市街地が山の上の方に移転しているためでした(ダムの完成は2020年予定)。
わたしは関西人ですが、この「八ッ場ダム」の工事についてのニュースは数年前にさまざま見聞した記憶があり、よく覚えています。

かつての「旧線路」や、この「川原湯地区」などは、ダムの完成で水没してしまうそうで、そのため「吾妻線」も、旧線から1~2kmほど西方向へ、さらに高台へと大きくルート変更されたそうです。

そんな中、5分ほどでこの「長野原草津口駅(同)」に到着。駅名にもありますが、あの有名な「草津温泉」への玄関口に当たり、東京方面からの特急列車の終・始発駅となっている、この線の基幹駅です。
一度は訪問してみたい「草津温泉」ですが、残念ながら?今回はパス…「吾妻線」はまだ先がありますので、まだまだ西へと進んで行きます。

「長野原草津口駅」を出てほどなく、車窓の右手に古びたこの鉄橋が見えて来ました。
いま乗車している「吾妻線」は「昭和46(1971)年」までは「長野原線」と呼称され、先ほどの「長野原草津駅」は「長野原駅」を名乗っていたのですが(駅名の改称は平成3年)「長野原線」はこの鉄橋を渡り、山を越えた一駅先の「太子駅(おおしえき、同吾妻郡六合村=現在は中之条町=)」まで路線を延ばしていました(かつて「太子駅」構内にはホッパー設備が設けられ、周辺から産出される鉱石の輸送で大いに賑わったそうです)。

「国鉄監修 交通公社の時刻表 昭和45年2月号 巻頭索引ページ」より。
この当時、路線名は「長野原線」で「長野原温泉駅」は「長野原駅」。
同駅から「太子支線」が分岐していた(「太子支線」の休止は昭和45年11月、正式廃止は翌昭和46年5月)。

「JTB時刻表 2018年3月号 巻頭索引ページ」より。
「太子支線」の休・廃止と前後して「長野原線」は「吾妻線」と改称され(昭和46年3月)、それと同時に「長野原~大前間」が新たに開業した。

「交通公社の時刻表 昭和45(1970)年2月号 長野原線」のページより。
「渋川~長野原間」はこの3年前に電化されており、東京方面からの急行列車などが多く運転されていて、対照的に「太子支線」は非電化で、一日4~5本の列車がディーゼルカーを用いて運行されていたそうです。

そして、「JTB時刻表 2018年3月号」の「吾妻線」のページより。
東京方面からの「急行」は「特急」に取って変わられ、路線は「長野原草津口~大前間」まで延伸されているのがわかります。
昭和40年代半と、現在の「八ッ場ダム」の工事という二つの時期に、大きな変貌を遂げる「長野原線改め吾妻線」です。


さて、列車は先へと進みます。と同時に、車窓には雪の姿がちらほらと見えて来ました。だいぶと、山間部に入って来たようです。
次回に続きます。
今日はこんなところです。