「JR東日本」全線完乗を目指す旅、「新前橋駅(群馬県前橋市)」から目指す「吾妻線(あがつません)」に直通する「大前ゆき」に乗車しています。

4両編成の車内はこのような感じ。帰宅どきにはまだ早い午後4時過ぎなので、どことなくのんびりとした車中です。

「新前橋駅」から15分ほどで「渋川駅(同渋川市)」に到着。
行楽シーズンには「SLみなかみ号」も発着する「上越線」の拠点駅です。

この駅で、ようやく?「高崎駅」から続いていた「上越線」と分岐します。


「上越線」が離れて行き、いよいよ、未乗線区の「吾妻線」に入りました。
ここだけのことではないですが「未乗線区」に入った瞬間というのは、そわそわというか、どきどきするものがあります。

「吾妻線」は単線なので、途中の駅々で対向の列車と行き違いをします。
そんな中、今春のダイヤ改正で姿を消す「115系」とすれ違いました!
ぜいたくを言うと、同じ乗るなら、あちらの方が旅情があると思えるのですが…そればかりは仕方ないですね。

列車は西の方向へと進んでいるのですが、徐々に山々が迫って来るのがよくわかります。

そんな中、この「中之条駅(同吾妻郡中之条町)」に到着しました。
もう、少しずつ陽が傾きはじめていた頃でした。

そのためここで「17分停車する」という旨のアナウンスが。

そういうことで、ちょっと「小休止」となった、その「中之条駅」のプラットホームに降り立ってみました。
反対側の新前橋方面へのホームは、下校途中の高校生でしょうか。

ところで、この駅の駅名標を観察してみますと…
「四万(しま)・沢渡(さわんど)温泉口」という副名称がつけられているあたり、このあたり、数々の名湯がたくさんあるようです。
では、駅に近いこれら「温泉郷」については…
「各駅停車全国歴史散歩11 群馬県」
(土井耕作著・河出書房新社刊 昭和58年7月初版 絶版)から拾ってみます。
沿線で最大の町 中之条
四万・沢渡温泉郷への表玄関
中之条駅がある中之条町は、吾妻線沿線で最も大きな町である。
駅舎も駅前広場もじつに整然としている。
ここは四万(しま)、沢渡(さわんど)、大塚温泉郷などへの玄関口であり、かつて町内の鍋屋旅館などには多くの文人が宿泊した。
中之条は、弘化元年(一八四四)の秋、蘭学者・高野長英(たかの・ちょうえい、1804-1850。江戸時代後期の蘭学者、医者。当時、頻繁に船舶が来航していた諸外国との開国を説き、弾圧、投獄されたことで知られる)が江戸から脱獄して逃れてきたところとして有名である。

四万温泉は中之条駅から北へ一〇㌔、稲荷山をはじめ一〇○○㍍級の山々に囲まれた四万川のほとりにある。開湯の歴史は古く、延暦年間(七八二ー八○五)と伝えられている。
四万温泉郷は、美しい四万川の渓流に沿った温泉口、山口、新湯温泉、それに日向見川に沿った日向見川に沿った日向見温泉などの総称である。歓楽地的な雰囲気はなく、古い歴史と豊かな自然環境の中で、ゆったりと温泉につかって保養を楽しむ―そんな温泉場である。旅館では半自炊をやっているところが多く、こうした宿泊客のために「朝市」が開かれている。朝市には近隣の農家から採りたての野菜や季節の山菜が持ち込まれ、そのまま朝の食膳に供され、四万ならではの味わいと湯治客に喜ばれている。

野反湖(のぞれこ、野反ダムとも。標高1,513mに位置し「天空の湖」とも称される、周囲10kmにも及ぶ、自然豊かな人気の観光名所)、白砂川から四万、さらに赤沢山の中腹をぬって法師温泉に至る上越自然遊歩道はスケールの大きいハイキングコースである。ダムが出来れば、ここから苗場(新潟県南魚沼郡湯沢町、先日の記事で訪問した「越後湯沢駅」がその中心地に当たる)まで直通となりスキー場も開発できるというわけなのだが、まだ時間はかかりそうだ。
(出典同 P100)
(出典同 P100)

書籍の記述からは、ひなびた温泉郷から、数年後に実現する「関越自動車道の全通」を目前にして、ますます活気づくであろうという期待を込めた内容が読み取れます。ただ、発車までのこの17分という「小休止」の間、夕暮れが近づく、実に静かなところなのだなという感を受けました。
これら名を連ねる温泉群、一度は行ってみたいところです。

小休止を終え、定刻の「16時19分」に列車は「大前駅」へ向かって「中之条駅」を発車しました。山の迫る、のんびりとした風景を進んで行きます。
次回に続きます。
今日はこんなところです。