みなさんこんにちは。前回からの続きです。
先日、家族で「湖北・長浜」を散策した際の様子を、シリーズでお送りしています。やって来たのは、JR駅に近い観光名所「旧長浜駅舎」です。

さて、明治・大正当時の雰囲気をふんだんに残しているこの「旧駅舎」。
レトロさがかえって新鮮な感じもします。
では、順番に展示を拝見して行くことにしたいと思います。

最初の部屋は、これは待合室です。当時としては、ええ”べべ”(関西でいうところの「よそ行きの服」の意)を、みなさん着てらっしゃいます。

待っている人々の服装から、やはり上級の「1・2等待合室」でした。
当時は、待合所も等級で区分されていて、いちばん安価な、庶民が利用する「3等」とは分けられていたようです。


真紅がまぶしいこの長い椅子は「ビロード張り」だとのこと。
いかにも、高級感があります。座ってみたのですが、やはりというかいい座り心地です。「3等」の場合は、おそらくは板張りだったのでしょうね。

待合室の先には「世話係室」なるものが。この高級待合所を利用する、上客に対応していた係員が詰めていたのでしょうか。


そう表現すると、現在では「航空機」のそれを連想するのですが、当時はこのようにして大きな手荷物を扱っていたのですね。


この、部屋の隅に合わせたかのような、三角コーナーの家具など、よく考えられたデザインだなと感じます。

では、いよいよ?右手の「駅長室」へと入ってみたいと思います。

立派な戸棚、テーブルや椅子など、想像通り、やはりここは「別空間」という感を受けます。片隅に見えている暖炉もいい感じを醸し出しています。

当時は、いろんな意味でなかなか大変なお仕事だったようです。
特に、運賃のくだりなどは、明治初期の様子が伺え興味深いものです。

のちに、東京駅長まで栄達されたとのことで、よほど仕事の出来る方だったのでしょうね。
この当時の「駅長さん」というのはまさに「地元の名士」だったという話しを耳にしたことがあるのですが、結婚式や、地元の式典などでは、必ず名を連ねるほどの大きな存在だったようです。

さて、この「駅長室」には、大正2(1913)年当時の「京都駅時刻表」が展示されていました。見てみますと「東海道本線」、「山陰本線」、そして「奈良線」と、いまの隆盛を鑑みるに「たったこれだけか!」とも思えるのですが…

では、また例によって(笑)こまかく観察してみたいと思います。
「上り東行」が「東海道本線 東京方面」に該当します。
始発は右端の「京仕立 五時」。ちょっと見えにくいのですが「静岡ゆき」と「伯ゆき」というのが併結されたもののようです。後者の駅は、見聞したことがないのでどこかはわからないのですが…
新幹線もない時代なので、左端の「下ノ関発 十二時三四分 新橋ゆき」のように、遠方の地名がずらりなのですが、気になるのが「十時十三分 京止」という列車。これ、大阪駅を「九時ちょうど」に出発する短距離の列車なのですが、大正のはじめでも、大阪・京都間は「1時間少し」という、当時としては速いスピードで結ばれていたということに驚きました。

こちらは「山陰線」。
「大社(島根県出雲市)」など遠方以外では、わりに近くの「サガ(嵯峨駅、京都市右京区。現在は嵯峨嵐山駅)」の他、亀岡や園部、福知山や舞鶴など、これは行き先としては、最近でもあまり変わらないように感じます。

そして「奈良線」。1日、11往復の設定だったようです。
こちらも「所要時間」に目が行ってしまうのですが、「七時四十五分発」の列車は、奈良駅には「九時二二分着」なので、所要時間「1時間40分ほど」でしょうか(現在、同様の区間を走る普通列車では「約1時間」です)。
しかしいずれにしても、100年以上前の時刻表、まさに「隔世の感」です。

そして、これも気になる「運賃表」もありました。大阪までは41銭、名古屋までは1円43銭、東京(新橋)までは3円52銭…などとなっています。
参考までに、時期は数年ずれるのですが、当時の物価を調べてみました。
大正4(1915)年
白米1升 13銭 砂糖1kg 34銭 たまご1個 2銭3厘
ビール大瓶1本 23銭 そば・うどん1杯 3~4銭 コーヒー1杯 5銭
たばこ(ゴールデンバット10本入り)5銭 朝日新聞月極め 37銭
はがき1枚 1銭5厘 公衆浴場 4銭 理髪 20銭 給与所得者平均年収 333円
(「明治~平成 値段史」から参照)
ということで、単純比較は難しいのですが、現在の貨幣基準に当てはめると、大阪までは約2,000円、名古屋までは6,000円、そして東京までは16,000~17,000円くらいでしょうか。大阪までの運賃はいまの3~4倍ですが、遠距離へ行くほど、現在の新幹線運賃とあまり変わらなかったのですね。
こういった側面から観察するのも、なかなか、興味深いものです。
次回に続きます。
今日はこんなところです。