先日、先行発売された鉄道模型「鉄道コレクション京阪電車2600系A・Bセット」について取り上げるという企画なのですが、本題の模型を拝見する前に、実際の「2600系」という形式について、実車にまつわる話をあれこれと進めています。

さて、今日の話題はここ「中書島駅(ちゅうしょじまえき、京都市伏見区)」からはじまります。時はいまから6年前、平成22(2010)年にさかのぼります。

駅のいちばん南側にある「4番線」にやって来ました。
ここは、この駅から分岐する「宇治線」の予備的な扱いのホームで、普段は1日数本の列車が発着するのみです。ですが、ひとたび跨線橋を降りますと、停車している列車の先頭へ向けてこのような行列が出来ていました。これはなにかといいますと…

「京阪ミュージアムトレイン 展示会場 4番線」の文字が見られます。
観覧の時間も記載されているなど、本当の「博物館」を思わせるものですが…

実はこの列車が見られた平成22(2010)年は、「京阪電車開業100周年」という記念すべき年でした。この年は京阪電鉄のみならず、グループ会社を挙げてさまざまな記念イベントが行われたのですが、これはその一環でした。


旧塗装の編成(奥)と並んだ「ミュージアムトレイン」。
この催し、「開業100周年記念」ということで、1つの列車を「移動式博物館」に仕立て、各車両ごとにテーマを設け、100年の歴史にまつわる展示を行うというものでした。
これまで京阪電車ではこのような試みが行われたことはなく、また、一般に公開されることのなかった貴重な資料が豊富に陳列されるなど、公開期間中には大変な人気を博したイベントで、それに使用されたのがくだんの「2600系」のうちの1編成でした。

「ミュージアムトレイン」京都方先頭車。
元車両は「2602号車」なのですが、正面下部には「1551」という車番表記がなされています。これは戦前に登場した「1550型」という、当時としては最新の車内設備をそなえた歴代の車両を模したものです。

この「1550型」は「ロマンスカー」という愛称で親しまれていたそうですが、現在では「小田急電鉄」の代名詞であるこの名称を、日本ではじめて使用したのは京阪のこの形式でした。また、深い緑色の塗装も当時を再現したのだそうですが、この当時から現在に至るまで京阪伝統の緑の塗装が使用されていたようです(後年に塗装は変更される)。

窓には「ロマンスカー」が走っていた昭和初期をイメージしたものでしょうか、レトロなファッションの乗客が乗り込んでいるさまが再現されていました。

特徴的な英字ロゴも、当時の表記を再現したものだそうです。細部までなかなか凝っていますね。

では、この「ミュージアムトレイン」のメインである「車内展示」について見て参りたいと思います。入り口は先ほどの京都方先頭車両、2602号車でした。





車内には、会社で保存されていたというヘッドマークや車両模型、また路線建設の特許状などの貴重な品が所狭しと展示されていたほか、パネル展示などもあり「京阪100周年の歴史をさまざまな視点から振り返ることが出来る」というものでした。
この「ミュージアムトレイン」の詳しい展示内容についてはこちらをどうぞ↓
当ブログ
京阪電車開業100周年記念「京阪ミュージアムトレイン」その1
(2010年10月25日アップ)
(この列車が実際に巡回展示していた時の見聞録。以降、6回のシリーズです)

さて、この「ミュージアムトレイン」の巡回展示は、沿線の各駅で行われていました。

この日は「中之島駅(なかのしまえき、大阪市北区)」3番線での展示でした。
先ほどの「中書島駅」と同様の事情でしょうか、場所はこちらもラッシュ時のみ使用されているホームです。

ここは地下駅なので、先ほどの「中書島駅」で見たのと比べて緑色がより深い印象を受けました。深みがあり、シックな感じです。

大阪方先頭車の「1552号車」(実際は「2812号車」)。
車番表記や、中央扉の行先表示器が塗りつぶされているさまがよくわかります。

ヘッドマークの裏面はこんな感じ。
「回」は「回送」を示しているのですが、先ほど触れたように正面の行先表示器が塗りつぶされているので、展示駅までのこの列車を送り込み、観覧終了後の車庫への回送の際には、この行先看板(京阪では「本標」と呼ぶ)を裏返して活用していたようです。
京阪電車、中でも本線系統で本標の使用が廃止となった(=全ての先頭車両に行先表示器が設置された)のは平成2(1990)年ということなので、機械の故障など一部の例外を除けばこれは「実に20年ぶりの本標復活」という事例になりました。
この「本標」と、沿線のイベントなどを告知するために掲出される「副標」についてはこちらもどうぞ↓
当ブログ
「SANZEN-HIROBAを訪ねて その62」(2016年5月7日アップ)

さて、この「ミュージアムトレイン」ですが、車内の展示のみならず人気を博していたのがこの場所でした。編成中間に組み込まれた先頭車両の運転台です。

少し覗き込んでみるとこんな感じ。すぐ右側が運転台です。

運転台のある車両の隣に連結されている中間車両から撮影したショット。
標識灯、副標差しやジャンパ栓(電気系統などをつなぐもの)が目の前で見られ、なかなか迫力があります。

嬉しいことに、その中間に組み込まれている車内の運転台も開放されていまして、このように実際に運転席に座り、ハンドルを操作することも出来ました。
車内の展示が空いているのに、ここだけ長蛇の列が出来るというほどでした。

そしてこの「ミュージアムトレイン」、最後の駅展示はここ「枚方市駅」でした。
こちらでも多数の人の列が出来ていたのですが、その後は寝屋川車両基地で同年に開催された「ファミリーレールフェア2010」で展示が行われたのち、この編成は廃車となりました。

個人的に楽しみにしていたのが、巡回展示ごとのスタンプラリーでした。
これを達成すると、このように記念のトレカが貰えたためですが、これもデザインは日替わりだったので、足しげく展示に通ったことを記憶しています。
さて、ここまで「模型を細見する」というタイトルを掲げておきながら、実車にまつわる内容が続いてしまいました。次回はいよいよ(?)本題の「鉄道コレクション 京阪電車2600系A・Bセット」について取り上げたいと思います。
次回に続きます。
今日はこんなところです。