その2:コンビニと賞味期限切れ商品
本日の例題は、『コンビニでのおにぎり弁当などの賞味期限切れ商品の値引き販売は是か非か?』という問題だ。この通り質問を設定して調査すると、90%前後が値引き販売に賛成となるだろう。何故かというと地球資源の無駄遣いで環境にやさしくない。飢えている人間が地球にたくさんいるのに、食べれるものを捨てるということ自体悪だ。アルバイト従業員のモラル低下につながる。値引き販売はありがたい。というような理由から値引き販売が圧倒的に支持されるだろう。立派な建前と値引きという実利があるのでこれは強い。ということでこの問題は、利用者から見ると簡単に解決してしまう。しかし現実は、値引き販売しているコンビニ店は少数だけであり、店の経営者は値引き販売に怯えている。この『怯え』という気持ちを分析しておく必要がある。値引き販売している少数の店の経営状況から見ていくと次のようになる。2009年3月から弁当・惣菜の賞味期限前に見切り販売を行ったあるコンビニ店の事例だが、1. 1ヶ月に出る賞味期限切れ商品の廃棄量(ゴミの量)が半分に減った。2. 値下げで売上が前年同月比で6%減となった。3. 廃棄した商品は全額店負担となるがこの負担コストが減ったので利益は前年同月比で3割増加した。4. 主婦アルバイトのモラルが上がった。という結構な結果となっているようだ。(朝日新聞5月6日の記事)コンビニエンスストアーは全国で約45,000店あるので、全店舗で見切り販売を実施したら大変な効果となる。しかしコンビニ店の経営者は、売上は下がるが利益は増加しゴミの量も結果として減るという、この程度の予測はついているはずで、『怯え』の原因は別のところにあるはずだ。いま言われていることは、コンビニの本部が優位な立場を利用して弱者である加盟店の経営を圧迫・拘束しているのではないかということだが、この件については公取(公正取引委員会)が調査していていずれ行政指導が出るはずだ。コンビニの本部が加盟店を縛っているポイントは、コンビニという業態の成長を作ってきたポリシーのようなところにあり、値引き販売をしない、24時間営業、一括のプロモーション、大胆な売れ筋の品揃え、他から仕入れない、小口多頻度の納品などとこれらの技術指導に関するロイヤリティの支払いなどにあり、違反者は取引中止となる。コンビニの経営者にとって、他のコンビに本部に乗り換える(資金があるか)か、出来なければ死を宣告されるようなものだ。だから、本部からの取引中止を恐れて見切り販売が出来ないと見られている。これが隠れている『怯え』だろうか?そうではないと思う。これまでの論拠は既にオープンになっているものであり自明のことである。最大の『怯え』は、コンビニエンスストアーの崩壊になるのではないだろうかという危機感ではないかと思う。普通の小売業となり、様々な小売業態と競争して勝ってきた最大のメリットを失ってしまい、値下げ競争の中に入ってしまうことを恐れているのだと思う。さて、利用者に説明がしにくくなっている廃棄物問題をどう解決するのだろうか?この問題は、見切り販売=値引きとは別の問題だから答えを出さなければならない必要に迫られる。値下げはこの問題の小手先の解決法であり本質に迫るものではない。ただし、値下げはコンビニエンスストアーの業態を崩壊させる本質であるかもわからない。高いけどそれ以上のベネフィット(公的便益)を提供してきたという自負を忘れずに初心(ゼロ)に戻る時期なのかもわからない。ちょうど、日本にコンビニエンスという業態が登場して40年という時期にさしかかる。小売業態でのNo1ともなったし、企業の寿命30年説をも超えた。これからの社会、我々の生活との接点での新しいコンビニエンスを開発・創造してもらいたいような気がする。街から逃げ出した大型ショッピングセンターやスーパーにはまた逃げ出すのではないかと期待できない。だから期待したい。「小さきことは美しいことかな」という業態になって欲しい。