見ないふりをする国民たち | 真実は人を幸福にするか?

真実は人を幸福にするか?

桑田義雄が、うかんだり、もぐったりするブログ

東にある大きな大陸の、そのまた東に、小さな島国がありました。
その国はとても豊かな国でした。
欲しいものは何でも手に入り、
食べたいものは何でも口に出来、
夜も昼のように明るく華やかで、
病気になっても、適切な医療を受ける事が出来ました。
自由に恋愛をし、結婚をし、子供を作り、
子供を大学にまで通わせる事が出来ました。
国民たちは皆、幸せでした。
王様はとても人気で、王様が歩けば、国民は白地に赤い丸の描いた旗を振り、
愛国、愛国、バンザーイと叫びました。
テレビはひたすら、王様がどれだけ偉大で、
世界的にも信頼されているかを報道していました。

ですが、その島国には、ある地域がありました。
電車も走らず、住人は、たまに走るバスで移動していました。
夜は真っ暗で、何の音もしません。
買い物をするところは、30分もかけて歩くスーパーマーケットしか
ありませんでした。
そこには工場があり、住民はその工場で、
朝から晩まで働いていました。
地域で定められた最低賃金で。
住民は、ただ働くためだけに生きていました。
毎日、毎日、労働の日々です。
老いて、身体が動かなくなるまで働かされ、
退職した後も、缶詰と米しか買えぬような年金しか貰えませんでした。
若くても結婚も出来ず、結婚できないから恋愛もあきらめていました。
自由の利く者は都会に出て行きますが、
親の介護をせねばならぬ者は、地域に残るしかありません。
また、その工場で働くために他所からやって来る者もいました。

その島国の国民たちは、全員、その地域の存在を知っていました。
どんな生活を強いられているかも、何となく知っていました。
でも、国民たちは、その地域の事を、見て見ぬふりをしました。
その地域の存在が無ければ、自分たちの豊かさが保てなくなるからです。
ですから、国民たちは、その地域の事を考えないようにしました。

3人いれば、一枚のピザを三等分して食べればいい。
でも、10人もいたら、十等分しなければならない。
そしたら、お腹を満たす事は出来ません。
ですから、王様は階級というものを作り、
上流階級の者はたくさん食べられるように、
中流階級の者は文句の出ない程度に食べられるように、
下流階級の者はほとんど食べられないようにしました。
そして、下流階級の者を、その地域の工場で働かせたのです。

その島国には選挙制度もありました。
「小選挙区」という制度だったので、
一つの選挙区からは、一人しか当選者が出ません。
選挙になれば、その王様の率いる与党と、その他の野党との戦いです。
上流階級の者と中流階級の者は、少なくとも貧しい暮らしはしていません。

現状に満足です。

ですから、与党に投票します。
もし、野党が政権を取ってしまうと、この国は平等になってしまう。
ピザを十等分しなければならなくなります。
それだけは避けたいのです。
上流階級の者と中流階級の者が与党に入れますから、
与党は必ず過半数になります。
これで、王様の地位も安泰です。
国民の三分の二も、豊かな暮らしを維持できます。
ですが、国民の三分の一は奴隷のような生活が続きます。

今日も、下流階級の者は奴隷のように、目に涙をためて働きます。
上流階級と中流階級の者は、昼のような明るさの、夜の都会を楽しみます。
下流階級の存在など、見ないふりをして。

 

真実は、正直な人を幸福にします。

真実は、ずるい人を不幸にします。

ですから、正直な人が多い社会では、真実を語る者は称賛され、

ずるい人が多い社会では、真実を語る者は無視されます。

ずるい人が多い社会では、真実を語る者は常に孤独なのです。

ずるい人が多い社会では、真実よりも、楽しい事を語る者がもてはやされるのです。

 

この物語の最後に言いたい。

殺されし者が、自らの血液でダイイング・メッセージを残すように、

しいたげられし土地に生きる者よ。

爪が剥がれ落ちた指先から、したたる自らの血で、壁に書いてやろう。

「大都会よ。おまえらは、ほんとうにそれで、しあわせだといえるのか」

 

 

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