浅田次郎「王妃の館」2555種類の献立は | kuwanakenのブログ

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プラス思考は、好きじゃない。
前を向いたり、しゃがんだり、
振り返ったり、無理をせず、
幸せレンガを、積んでいこう。

 浅田次郎さんの「王妃の館」を読み始めました。今ちょうど上巻を読み終えたところです。物語は現代のフランス旅行の話の中に、18世紀のフランス王朝物語を劇中劇として入れ込んであります。いわゆる額縁小説です。

 

 額縁側のフランス旅行は、のっけからドタバタ劇を呈しています。劇中劇の王朝物語はまじめかと思いきや、ルイ14世の挨拶が「コマンタレ」で一呼吸おいて、放屁のブーで締める。浅田次郎さん得意のおふざけが過ぎます。

 

 さて、ルイ14世の宮廷料理人ムノンは、2555種類の献立を作り上げました。一日一種類ずつ王様に献上しても、7年間に渡って日替わり料理が出てくる数です。その日の料理は、7年前に提供した料理になります。

 

 不肖私も我が家の料理人として、多くの献立を作り上げました。メインディッシュは、その数60を優に超えております。鍋物や冷麦などの季節料理もありますから、少なくとも一ヶ月は同じ料理を出さないように工夫しています。

 

 料理自体は好きですが、得手不得手はあります。煮物炒め物は得意、パエリアやカツは苦手。元蕎麦屋ということもあって、天ぷらはストレスなしでチョチョイのチョイです。おもしろいことに、同じ揚げ物でもフライは苦手です。

 

 天ぷらの揚がり具合は、箸で持ち上げただけで分かります。でも、トンカツは火が中まで通っているか心配です。トンカツを一つ揚げては、少し切り開いて中を確認します。その分は切れていない方を上にして、僕の皿に乗せれば気付かれません。

 

 宮廷料理人ムノンは、母親を亡くした愛娘に深い愛情を注いで料理を作りました。2555種類の献立は、愛娘が母親を亡くした日から結婚するまでの7年間の日数と重なります。その献立は愛娘のためだったのです。

 

 2555種類の献立は王様のためではなかったので、ムノンは不敬を詫びます。僕は蕎麦屋の忙しさにかまけて、30年も家のことを美しい妻に任せっきりでした。毎晩献立を工夫するのは、そのお詫びです。30年は続けなければ。