居間には二台のストーブが並んでいます。一つはファンヒーター、もう一つは反射式、一昔前のタイプです。反射式は災害用の予備として買いました。ところが、赤い火がどうにも気に入って、しょっちゅう使うようになります。
ファンヒーターの方が効率は良いようです。でも、赤い火が見えないのは、アイヌのお婆さんじゃありませんがやっぱり寂しいです。ファンヒーターは部屋を暖めるためのもの。その点赤い火は、心も温めるように思えます。
もうひとつ反射式の良い点は、上にやかんや鍋が置けることです。やかんの口からもくもくと出る湯気は、これもまた心を緩めてくれるような気分になります。鍋をおいて煮物ができることも、たいへん重宝です。つくしもここで煮ました。
美しい妻があんこの缶詰を買ってきます。ちょこっとしか入っていないので、遠慮しながら食べます。甘いものが大好きなので、思う存分あんこやぜんざいが食べたくなります。そこで、小豆を買ってきて煮ることにしました。
小豆をよく洗って大きな鍋にたくさんの水と一緒に入れ、ストーブの上に置きます。ぼこぼこと沸騰してきたらざるに開けて煮こぼしをします。再びたくさんの水で、今度は豆が柔らかくなるまでぐつぐつと茹でます。
ときどき豆をつまんでは茹で加減を見ます。柔らかくなったら、塩をぱらぱら、砂糖をどばっ、どばっ。まずは大ざっぱに入れて、味見をしながら少しずつ足していきます。何度も味見をしていると分からなくなるけど、まあいいか。
ぜんざいが食べたくなったら、ストーブの隅に網を置いて餅を焼きます。ぷくっと膨らんできたら、お椀にぜんざいと餅を入れます。妻が「甘さ控えめで健康的だね」とつぶやきます。「控えたつもりはないけど、まあいいか」
翌日は豆が水を吸って、あんこみたいになっています。トーストに乗せて小倉トースト。これがまたおいしい。小倉トーストは名古屋の喫茶店が発祥と言われています。あんぱんやたい焼きから、誰でも思いつきそうですけどね。