このブログでは羽生君のプログラムについて色々と書いてきたけど、このプログラムについては、どう書けばよいかわからなくて、書けずにきた。
「天と地のレクイエム」
羽生君のプログラムはいつも、初見でハッとさせられるのだけど、その中でもとりわけ、初見で衝撃を受けたプログラムが3つある。
1つは「SEIMEI」。
真っすぐに「日本」をテーマに据えたプログラムを、しかもフリープログラムに持ってきてくれたことが嬉しかった。
そして「春よ、来い」。
初演は2018年のファンタジーオンアイス神戸。
私は神戸出身なので、神戸で羽生君が「春よ、来い」を滑ったということに、びっくりした。
この曲は、阪神淡路大震災があった年の朝ドラの主題歌だった。
ガレキだらけの街に春が来て、そこから立ち上がっていくという時に流れていた曲というイメージがある。
そんなに何もかも震災につなげるのは羽生君に申し訳ないと思いながらも、神戸だからこの選曲なのかな、という思いがよぎった。
そして、選曲にもまして衝撃だったのは、このプログラムが持つ生命力や、包み込む優しさ。
初見のときから素晴らしかった「春よ、来い」は、それから何度も何度も披露されて、多くの人に愛されるプログラムになった。
そして、3つ目が「天と地のレクイエム」。
このタイトルを聞いて、その滑りを見たとき、本当にびっくりした。
こんなにストレートで、つらいテーマをプログラムにしたことに。
悲しみと慟哭を感じるプログラム。
こんなにつらいプログラムを滑って羽生君は大丈夫なのかなと、随分と心配したりもした。
簡単に「好き」とか「素晴らしい」と言っては申し訳ないようなプログラム。
だけど、非常に迫ってくるものがある。
ひとたび始まると、目が離せない。
悲しみを絞り出すかのような滑り。
個人的な思いだけど、この「天と地のレクイエム」と「春よ、来い」は、対になるようなプログラムだと思ってきた。
現れ方は違うけど、同じ根っこを持つ双子のようなプログラムだと。
羽生君の心の底からの思いや叫び、悲しみや慈愛が詰まったプログラムだと思ってきた。
「春よ、来い」はその後、繰り返し滑られてきた。
プロになってからも、多くの公演でトリを飾る、特別なプログラム。
一方で、「天と地のレクイエム」は2015-2016シーズンのエキシと2015年の24時間テレビで滑られて以来、ほとんど人前で披露されることはなかった。
そんな折、2023年3月11日に羽生君のユーチューブで「天と地のレクイエム」が公開された。
それを見て、このプログラムは今でも大切なプログラムなのだと思った。
そして、思わぬ再会を果たしたのが、「RE_PRAY」埼玉公演の初日。
現地で見ていたのだけど、「天と地のレクイエム」が始まったとき、びっくりした。
まさか、このプログラムを生で見られるとは思っていなかった。
そして、いざ生で見ると、悲しくも美しく、心にしみいるプログラムだった。
大切にしてきたプログラムを、この「RE_PRAY」で見せてくれたのだと思った。
心の底から絞り出すような滑り。
このプログラムにもまた、羽生君の真実が宿っている。