「Quadruple Axel 2024羽生結弦SPECIAL」を1回ざっと通しで読んだので、感想を書いておきたい。
羽生君のインタビューにあった「理想のスケート」について。
羽生君の中では、そういう感覚なのかと、とても興味深かった。
自分の感覚としては、羽生君のスケートは、初めて見たときから「理想のスケート」だった。
羽生君のスケートを初めてテレビで見たのは、2014グランプリファイナルの「バラード第1番」。
これがすでに「理想のスケート」で「理想のプログラム」だった。
私はフィギュアスケートのライトファンで、長野オリンピックあたりから断続的にテレビで見てきた。
特に誰のファンというのはなかったけれど、魅力的なスケーターだと思う方は、たくさんいた。
そんななかで見た羽生君の「バラード第1番」は衝撃的だった。
ジャンプ、スピン、ステップ、スケーティング、スタイル、表現。
そのどれもがかなりの高みにあるトータルパッケージ。
そして音楽と振付が羽生君の個性とマッチした、素晴らしいプログラム。
初見のときにすでに「理想のスケート」だったので、その後は、それを更新するのみ。
「理想の先」をずっと見せてもらっている感覚で、最近はそれがさらに加速している。
羽生君のスケートには、その存在を知ったときからずっと、驚きを与えてもらっている。
それでも、羽生君のなかでは「理想のスケート」というのは、まだ先にあるのだなと。
はたから見ていると、すでに(とっくに)到達しているように見えるけど、本人の中では、まだ。
近くにあるように感じるときもあるし、遠くに感じるときもあると。
到達したと思ったら、そこで止まってしまうのかもしれない。
これからも高みを目指す姿を見せてもらえるのは、本当に嬉しい。
「駅伝」について。
とても適格な例えなのだけど、まさかそう来たかと唸ってしまった。
私は中学生のとき、駅伝の選手に選ばれたことがある。
学年の代表として地区大会に出場した。
これが本当にキツくて。
駅伝なので、前の走者からタスキを受け継ぐ。
今の順位は、それまでのみんなが築き上げてきたものなので、落とすことは絶対にできないし、できるなら上げたい。
前半に飛ばしてしまうと後半でバテてしまう。
だけど、セーブしすぎてもだめなので、とにかく全部で全力を出す感じ。
走ったのは3キロほどだったけど、その距離を最大限のスピードで走って、全てを絞り出さなければいけない。
こんなにキツい競技があるのかと身にしみた。
それは、テレビで箱根駅伝を見ていても思う。
羽生君は「RE_PRAY」をその駅伝になぞらえた。
確かに、1つ1つのプログラムで全力を出し切っている。
何人かでタスキをつなぐ駅伝は、1つの区間で力を出し切ればいいけど、羽生君の「RE_PRAY」は、それを1人でやっている。
全区間を1人で絶え間なく走る。
そんなことが可能なのかと思うほどの過酷さ。
とんでもないものを見せてもらっているのだと、改めて思う。
そして、無良君のインタビューにも印象的な言葉があった。
プロになって練習量が落ち下降線に入ると一気に体にガタが来る場合があるけど、羽生君の場合はプロになってからも上げ続けていると。
なるほど。
確かに羽生君のスケートは、プロになって制約がなくなった分、上達のスピードが加速している部分もあると思う。
スケーティング、ステップ、世界観の表現、プログラムの完成度などは競技時代からさらに進化している(ひょっとしたらジャンプの完成度も)。
上げ続けることによって、下げさせない。
まるで「攻撃は最大の防御」のような。
こういうところに、攻めのアスリート魂を感じる。
そして、MIKIKO先生のインタビューも、内容が濃かった。
「RE_PRAY」制作の道筋が垣間見えて、興味深かった。
まず最初に「PRAY」があった。
先日の舞台裏スペシャルの羽生君インタビューとも呼応する。
ゲームと聞いたときには、最初に「PLAY」があるのかなと思っていたので、逆だったことが意外だった。
でもそれだけ、「PRAY」というのが一貫した、羽生君のスケートのテーマなのだということが、改めて分かった。
そして、個人的に今回、一番読めてよかったのが、清塚さんのインタビュー。
ファイナルファンタジー内のセリフを引用した、羽生君から清塚さんへの言葉が刺さった。
これは、根底に「祈り」があるということにつながると思う。
そして、この部分が、自分が羽生君のスケートに惹かれる一番の理由なのだと再認識した。
この他にもシェイ=リーン・ボーンさん、田中君、都築先生のインタビューもとてもよかった。
皆さんが語る羽生君。
改めて、「RE_PRAY 」と「notte stellata」の歩みを振り返ることができた。