とてつもなく寒い冬の朝です。
できることならお布団の中でぬくぬくしてたい。運命は薄情なものです。
本日は以前友達と小銭稼ぎに応募した映画のエキストラのバイトです。
映画の名は「Kick Ass」。
駐車場に着くと、あらまあどうでしょう!
よくハリウッド映画のメイキングで見るような大きなバンの控え室がびっちり。
たくさんの人がうろちょろしてます。
なんだかこんな本気の撮影現場を目の前にしてなんだか急にめんどくさくなってしまいました。
ああ、あたし。CMの仕事をしていた時も現場がなんしろ苦手でねえ。
たくさんの人がなんしろ苦手でねえ。へへっ。
まあ、お金のない私はつべこべ言えません。
ここで銭っこ稼いでかねいと、田舎のおっかあやおっとおにお土産が買えないわけです。
しかも私は今暖かい靴がほしいわけで。今は、薄っぺらいスニーカーしか持ってないわけで...

9時30分に朝食を食べ、いざ現場に出動するとなんとまあそこはすでにニューヨーク!
イエローキャブがセットのホテルの前に待機しております。
私たちエキストラ12名はセットの奥にある建物の隅に座らせられます。
そして、何も伝えられないまま待つ事1時間。
ライティングが終わったのでいざ、出番です。
セットの前をひたすら歩きます。しゃべらない。口パク。
私:(ねえ、お昼なに食べたい?)
相棒:(そうねえー、鶏肉?)
みたいな。
そして待つ事4時間、やっとお昼の時間です。
12人中4人が釈放されました。そんときの奴らのうれしそうな顔ったら忘れられません。
「おっ先ーっ。」つって皆帰って行きます。
あたしも帰りたかった。だってもらえるギャラは同じなんだもん。
残された8人はとにかくただならぬ雰囲気です。
そのうち、不平不満を言った勇気ある2人も釈放されました。
残り6名。
お昼の後も待たされました。
さらに3時間後、なぜか2名が釈放されました。
そこに私はまたしても選ばれません。どうやら、あたしエキストラの才能があるようです。
待ちました。さらに待ちました。
出番なんで今朝の一発しかありませんでした。
それにしたって、エキストラをやってる人たちってすこし変わってます。
昔からうすうす思っていましたが、彼らに私の話や冗談は通じません。
逆に、彼らの話も私はいまいちわかりません。
これは、いったいなんででしょう。そういうのってあるもんです。
お昼から待つ事6時間後、もうすでに10時30分を過ぎました。
お家に帰りたい。
「もうこんなこと二度とやるまい、もうあんなに日本で経験したじゃないか。」
と、私の心の記憶の扉が少しずつ鈍い音を軋ませながら開き始めました。
「ああ、そういえば。あんとき監督に怒鳴られたなあ。あれ、超怖かったなあ。ああ~ああ~ああ~、あんとき、ビジコンから煙出しちゃったなあ。へへ。あれ、やばかったなあ。そうだ...あの仕事、あれ本当につらかったなあ...。ありゃ、ひどかったなあ。」
するとお兄さんが私を呼びました。
夜の11時。
「これで最後の出番だよ。これが終わったら帰れるよ。」
ウッヒョー!帰れる!
さあ、最後の出番です。気合い入れて歩きますよっ。
違うカットなのに、夜のカットなのに、今朝と同じ洋服で同じ方向から同じ方向へ向かいます。
でも、もういい。あたしは知りません。
エキストラのプロとして、私は前進するのみです!!
そして、歩き終わったその瞬間。
どんなに辛い撮影でも、終わった瞬間はやっぱりうれしい気分になったよなあ。と思い出したのでした。
最後まで頑張った私たちにプロダクションは他の人よりも20ポンド多くギャラをくれました。
合計で75ポンド!
これであったかい白飯が食べれるだあー!