「先生ニお電話をいただきました」 二の特殊用法?〈1〉〈2〉〈3〉 | tobiの日本語ブログ それ以上は言葉の神様に訊いてください

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日本語アレコレの索引(日々増殖中) 

http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-306.html 

 

 

mixi日記2016年06月01日から 

 

 直接的には下記の続きかもしれない。 

【場所を表わすニの働き 二の特殊用法? 資料編】 

http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12162697906.html 

 

 テーマサイトは下記。 

【続 「先生にお電話をいただきました」と「先生にお電話を差し上げました」】 

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9291488.html 

 

 先日来、ニの用法について考えていて、気になっていた質問があった。例によって膠着状態のままなんの進展もなく終わるorz。考えをまとめる気にもならなかった。 

 解決のため、質問をする。 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 

 

 下記にどうコメントすればいいのか悩んでいるうちに締め切られてしまいました。 

【「先生にお電話をいただきました」と「先生にお電話を差し上げました」】 

https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9278130.html 

 

 基本的には、コメントNo.9のかたが書かれているとおりだと思います。 

 当方が気になっているのは「先生にお電話をいただきました」の「に」の働きです。 

 

『日本国語大辞典』にさえピッタリのものがないのですから、フツーの国語辞典に見当たらないのが当然です。 

https://kotobank.jp/word/%E3%81%AB-590835#E5.A4. … 

 

 ちょっと調べてみると、下記のサイトに関係しそうな記述がありました。 

〈⑤恩人〉です。〈「Nから」とも言える〉は、〈「Nから」のほうが一般的〉だと思います。 

 

http://www.geocities.jp/niwasaburoo/07kakujosi.h … 

==============引用開始 

7.3 に 

 

 用法の広い格助詞です。基本的な意味は何らかの意味での「点」を示すことでしょう。 

形容詞文にも多く使われます。「受身」や「使役」という「ボイス」にも使われます。 

①~④(略) 

  

⑤恩人  「Nから」とも言える  

     人にもらう/借りる/教わる 

 

⑥~⑪(略) 

==============引用終了 

 

「恩人」はちょっと違う気がしますが、「恩恵等を授けてくれる人」を「恩人」と短縮してもいいかもしれません。 

 たしかに「人ニもらう」は使われる気がします(自分では使いません)。「先生ニ電話をもらう」は「人ニもらう」と同じ用法でしょう。 

 

 疑問点が2つあります。 

1)個人的な語感では「先生に電話をもらう」に異和感があります。これが「先生にお電話をいただきました」だと異和感が強くなる気がします。気のせいでしょうか。 

2)仮に「見知らぬ人にいたずら電話をもらう」だと、「恩恵」ではありません。むしろ「迷惑」でしょう。これも「先生に電話をもらう」と同じように使えるのでしょうか。 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 

 

 いろいろな問題が絡んでくる気がする。「いただきました」だとちょっと別の要素が入るから「先生ニ電話をもらう」を原形と考える。 

■「恩恵」でいいのか 

 かなり微妙で、現段階では不明。 

  先生ニお目玉を{もらう/食らう} 

  先生ニお叱りの言葉をもらう 

 あたりも愛の鞭と考えれば「恩恵」なのかな。 

  常連客ニ クレームをもらう 

  挑戦者ニ パンチをもらう(「挑戦者の」ほうが自然だろうな) 

 

■カラかノか 

 ↑の段階で横道に入る。 

 このニの用法は、書きかえるならカラだと思っていた。 

 通常は「AカラBニ(贈る)」で、カラが起点でニは着点。ニが起点になるのはおかしいだろ。当方のがこのニを使わない理由も、この異和感。でも言うんだからしかたがない。 

 ふと考えると「先生ノ電話をもらう」もアリだろう(「先生カラノ電話をもらう」も自然だ、という話はとりあえず忘れる)。 

 

■やりもらい 授受 

「やりもらい」って表現は初めて見聞した。一般的には「授受表現」あたりで、「あげる」「くれる」「もらう」あたりのことだろう。 

 ただしここで考えているのは「もらう」「受」限定。「あげる」「授」もニを使うけど、それは対象を表わすごくフツーの表現。ここを混同するとグチャグチャになる。 

 

■ニは言葉足らず? 

 使われることがあるとは知りながら、自分では使わない。どうにも言葉足らずの気がする。 

 子供相手の会話のニュアンスがある気がする。 

 幼児が見慣れぬオモチャを手にしていることを不審に思い、母親が問い詰める。 

「それ、どうしたの」 

「もらった」 

「誰にもらったの?」 

「公園で知らないオジサンに(もらった)」 

 

 この場合はカラよりもニのほうが自然に感じる。 

 もしかすると元々は幼児語? 

 

■○○ニ~してもらう 

 もうひとつの可能性も感じている。 

「もらう」(「いただく」も同様)は本動詞だとカラもニも使えるが、補助動詞だと、ニしか使えないことがある。 

「先生ニ食べてもらう」 

 これが「先生ニ教えてもらう」だと「受動詞」(と意味不明の言葉を使ってみる)になる。 

 前者はカラにできないが、後者はカラにできる。 

 ここまではさほど混乱しない。 

 微妙なのは下記のような例。 

「先生ニ言ってもらう」 

「先生ニ読んでもらう」 

 

 このあたりのまぎらわしさのせいで、何がなんだかわからなくなっているような。 

「先生ニ教わったとおり」なら異和感はない。 

「先生ニ電話をもらう」だとちょっと異和感がある。 

 これが「先生ニお電話をいただきました」だと異和感がずっと強くなる。ニの言葉足らず感と関係があるのかないのか(泣)。


〈2〉

 下記への返信。 
続 「先生にお電話をいただきました」と「先生にお電話を差し上げました」】 
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9291488.html 


No.7への返信■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 

 ああ、そうか。うろ覚えでいい加減なことを書いてはいけませんね。「迷惑の受身」の話は(とりあえず)なかったことにしてください。話がややこしくなりそうです。(←オイ!) 

>≪使役や受身、やりもらいなど≫とまとめながら、実際には『「受身」及び「もらう」』と『「使役」』の二つに分けているのが気になる所です。 

 やはり続きがあったのですね。 
 それならばある程度は納得できます。 
 個人的には、もし2つに分けるならそうするべきだと思います。 

 改めて『大辞泉』を読んでみました。 
〈10 受け身・使役の相手・対象を表す。「犬にかまれた」「巣箱を子供たちに作らせる」〉 
 なんだかなぁ。 
「授受」(仮称。実際には「受」オンリー)がないのはチェック済みでしたが、これは……。 
 受身と使役は方向性が逆なんだから一緒にしてはダメでしょう。 
 でも『広辞苑』もそうなんですね。ウーン。ただでさえまぎらわしのが、こんなことをしたら混乱の元でしょう。 
『大辞林』の書き方はさらにナゾで、あの例文では「受身」としか読めません。いくつかの意味を含ませたいなら、それぞれの例文を出すものでしょう。「使役」はどこに行った? 

 手元の『広辞林』をひいてみました。 
 意外なことに(←オイ!)、辞書ではこれが一番マシかも。3つの用法をちゃんと区別して、それぞれの例文もあります。関連しそうな〈使役や受身、やりもらい〉の部分だけひきます。この書き方なら、なんとか理解できます(まだ疑問は残りますが)。 
『大辞林』の説明もこれと同じことが言いたかったんですかね。『大辞林』の例文を見る限り、受身の意味にしかとれません。 

==============引用開始 
六動作・作用の出所・原因を表わす。①受身の表現で、その動作のもとを表わす。「犬—かまれる」②影響・作用を受ける場合の、その出所を表わす。「きみ—教わったとおりにやった」 
(略) 
七動作・作用の向けられる目標を表わす。①使役の表現で、その動作の目標を表わす。「宿題を人—やらせる」 
==============引用終了 

 ここで考えるべきは、「受身」と「授受」は似ているからひとくくりにするべきなのか。 
 ただでさえまぎらわしいのだから、別物と強調するべきなのか。 
 考え方しだいでしょうね。 

 個人的には、「授受」のニの用法は特殊なもの、って気がしています。言葉足らずな気がしてやはり自分では使えません。 
「先生ニ電話をもらう」より 
「先生ニ教わったとおり」のほうが 
 はるかに自然に感じます。 
 この橋渡しになるのは、おそらく「先生ニ教えてもらう」です。これに干渉するのが「先生ニ読んでもらう」(これは「対象」でカラにはできません)でしょう。このあたりがうまくまとまりません(泣)。

 

 

〈3〉
mixi日記2016年08月01日から 

 直接的には下記の続きだろうな。 
【1】【「先生ニお電話をいただきました」 二の特殊用法?〈1〉】 
http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12166419612.html 
【2】【「先生ニお電話をいただきました」 二の特殊用法?〈2〉】 
http://ameblo.jp/kuroracco/entry-12166767374.html 

 下記のやり取りも関係する。 
【3】【どちらが正しいですか? に/からもいいですか?】 
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/9355836.html 

 なんとなく見えてきた気がする。 
 ボンヤリと考えて書いた【2】の最後の数行がヒントになる気がする。 
==============引用開始 
 個人的には、「授受」のニの用法は特殊なもの、って気がしています。言葉足らずな気がしてやはり自分では使えません。 
「先生ニ電話をもらう」より 
「先生ニ教わったとおり」のほうが 
 はるかに自然に感じます。 
 この橋渡しになるのは、おそらく「先生ニ教えてもらう」です。これに干渉するのが「先生ニ読んでもらう」(これは「対象」でカラにはできません)でしょう。このあたりがうまくまとまりません(泣)。 
==============引用終了 

 やはり〈「授受」のニ〉は特殊で、使い方が限られる気がする。 
 どういうときに使うのか。 
 庭サイトからひく。 
http://www.geocities.jp/niwasaburoo/07kakujosi.html#7.3 
==============引用開始 
7.3 に 

⑤恩人  「Nから」とも言える  
     人にもらう/借りる/教わる 
==============引用終了 

「借りる」も授受の一種と考えられそうだし、「教わる」も「教えてもらう」と同様なんで授受の一種と考える。 
「父ニ聞いた」も大丈夫そうだな。これも授受なのか? 
 そういう場合に限って「ニ」も使える。個人的には「ニ」は使わずに「カラ」を使う(と思う)。 
 もうひとつ考えるべきは、「もらう」を補助動詞と使った「~してもらう」。なぜかこの場合は「ニ」が自然になり、「カラ」が使えるケースがさらに限られる。 
「~カラ教えてもらう」がきわめて微妙。かろうじて△のような。 
 これが「先生カラ読んでもらう」あたりは明らかにX。この理由がうまく説明できない(泣)。↑で〈(これは「対象」でカラにはできません)〉と書いたのは違う気がする。
 もうひとつまぎらわしい例は「先生{ニ/カラ}電話してもらう」。 
 これだと、電話をしてもらう相手は自分ではなくなる気がする。「自分が電話するかわりに、先生{ニ/カラ}(第三者)に電話をしてもらう」ことだろう。 
「母カラ話してもらう」も同様かな。

 

 

【追記】

 ついでだからこれも入れておこう。

【場所を表わすニの働き 二の特殊用法? 資料編】

https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12162697906.html

 

【場所を表わすニの働き 二の特殊用法?】

https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12162885042.html

 

【2022-10-29追記】

 

 

 

 

   

 



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