それは、ある夜の出来事。
私は、ソファに座ってベルメゾンのカタログをめくっていた。
最近暑くて汗がすごいから、汗ジミ対応の下着が欲しいわー。
あら、大汗さん用ってのもあるのね。いいじゃない。
グレーとか淡い色のTシャツ着てると脇汗すごいから必須よね。
熱心にカタログを呼んでいると、ふと、視線を感じた。
顔を上げると、夫が無言で私の顔をじっと見つめていた。
やだ…なによ?
そんなに真剣な顔で見つめられて思わずDOKI☆DOKI☆
どうしちゃったの?マイハズバンド?
「あのさ」
笑いもせず、夫が言った。
「シワ、増えたね!」
はあぁあ!?
しわ?シワ?皺?
え、何?急になに?
つうか、わざわざ言うか?それ!
「前はさ、目の横にそんなにシワなかったよね?」
夫は心底不思議そうに言った。
悪気はない。が、デリカシーもない。
むしろ笑いながら言ってくれたら、失礼な冗談だと思えたのに。
無邪気な正直さほど、残酷なものはない。
『残酷な天使のテーゼ』が脳内で爆音再生される。
初号機だったらヴウォォォオー!!と叫んで暴走してるはずだが、私は耐えた。
「もう48なんだから、仕方ないじゃん」
そう言い捨てて、ソファから立ち上がった。
まったく、失敬な!!
ムカムカしながら「大汗さん用タンクトップ」のページの右上を折る。明日注文しよう。
その後、布団に入ってから気付いた。
48…4×8…シ・ワ…。
私、さっき、
ダジャレ言っちゃってたじゃん…。
その夜、私はショックで眠れなかった。