こんばんは。都議の栗下です。



昨日は、酒鬼薔薇事件と国における最悪の法規制(未遂)について書きました。
今日は、いよいよ青少年健全育成条例改正論争2010(前編)について書きます。

 

■きっかけは何だったのか

2008年2月、約半年前に3期目の当選を果たした石原知事は、青少年問題協議会に(以下青少協)「メディア社会における青少年健全育成」をテーマに、青少年条例改正の検討について諮問します
第10回でお伝えしてきた通り、石原知事はそれ以前も4度の条例改正をしており、その頃には青少協の中で強力な規制論者が下書きを進め、条例改正を進めるというパターンが確立されていました。ちなみにこの時の青少協は非公開。後に公開された議事録の中では規制反対派を露骨に敵視した発言などがあったことも指摘され、諮問機関としての中立性が疑われることとなりました。

これまで歴史を振り返ってきた中では、何かしら事件が起こった際、社会の機運が高まり、都民からの陳情や請願活動(その大元はどうあれ)が有り、条例改正に向かうというのが普通なのですが、この条例改正についてはそういった目に見える「きっかけ」が無く、行政側の強い意向によるものではないかと言う声も上がりました。


■焦点となった「非実在青少年」問題

2010年2月に提出されたこの改正案には幾つもの問題点が指摘されましたが、最も大きな焦点となったのは「非実在青少年」問題でしょう。
不健全図書指定の新たな対象として以下の条文が追加されました。

 


年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの(以 下「非実在青少年」という。)を相手方とする又は非実在青少年による性交類似行為に係る非実在青少年の姿態を視覚により認識することができる方法でみだり に性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」

 

 

第11回でお伝えした通り、99年、国での児童ポルノ規制をした際、創作物等のキャラクターに規制を適用しようとしたところ、多くの批判が集まり事実上頓挫しました。しかし、条例改正案の中ではこうしたキャラクターを「非実在青少年」という名称で規制の対象としていました。江戸の仇を長崎で討つ、規制派の戦略であったと指摘されています。

■都議会史上に残る反対運動

2010年2月に提出された後、改正案の問題点が次々と明らかになり、改正反対の声は日に日に大きくなっていきました。

当時、私も都議一期目で当事者として関わっていましたが、私の過去10年余りの経験の中で、この時ほど多くの人々が都議会に集まり政治活動に加わったことはありません。
当時はツイッターが出始めたばかりで今のような情報のやり取りはありませんでしたが、数百件にのぼるメールやFAXをもらったことも忘れられません。

 

 

 

 

 

それほど多くの人達がこの問題に注目し始めたのは、審議半ばの2010年3月15日、コンテンツ文化研究会(現在も活躍中)が、反対集会を開催、漫画家のちばてつやさん、永井豪さん、里中真智子さん、ヤマベンこと弁護士の山口貴士さん、漫画研究家の藤本由香里さんをはじめとした錚々たるメンバーが揃って、意見表明をした時からでした。
この問題に関わる多くの方々の熱が伝播して、その後の審議経過も都議会史上に残る異例の展開を迎えることとなります。

それについてはまた明日お伝えしたいと思います。

続く。