こんばんは。都議の栗下です。



昨日は石原都政下での2回目の都条例改正(成年雑誌小口止め)の経緯をお伝えしました。
今日はその頃国で起こっていた法規制の動きについて書きます


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■ 酒鬼薔薇事件と青少年年保護法

1997年、神戸市で当時14歳だった少年が、小学生2人を殺害し、3人に重軽傷を負わせる事件が起こりました。
犯行声明文で自ら「酒鬼薔薇聖斗」を名乗り、殺害した遺体の頭部を学校の門に置くなど猟期的なこの事件は社会を震撼させました。
また、犯行声明文がマンガからの影響を受けているとの指摘もあり、宮崎勤事件の時と同様、表現物に対して厳しい目が向けられることに。

 

 

自民党は年が明けた98年の国会で、アニメやテレビゲームが少年を事件に駆り立てた原因の一つであるとして、「青少年保護法」の制定を求めました。



1998年3月24日 第142回国会参議院予算委員会第9号 中曽根弘文参議院議員の質問 

ブログ第2回第6回でもお伝えしたように、これまでの歴史の中で法規制が検討されたことは何度もありましたが、酒鬼薔薇事件が再び国会と社会を規制に向けて動かしていくことになります。 



■野党の動き

これに加えて、野党の民主党も独自の法案提出を目指し動き始めます。

最終的にまとめた法律案骨子について振り返ってみると、自民党が進めようとしているものよりもマイルドにはなっていますが、それでもなお表現の自由に与える影響は甚大。法律案骨子については発表されましたが、党内でも反対する議員がいたことからその後、民主党の動きは止まります。

 




■法案の行方

当時、政府が進めていた個人情報保護法と人権擁護法と合わせて「メディア規制3法」と呼ばれ、世論の反発が大きかったことから、最終的に04年、「自主規制」に関する部分を分離して、青少年健全育成基本法案が自民党・公明党によって提出されます。


しかし、この基本法についても日本弁護士会をはじめとして多くの批判が集まったことから、店ざらしとなり審議未了で廃案となりました。

これで、危機回避かと思いきやその後も青少年健全育成基本法の制定については、自民党のマニフェストに掲げられ、2014年に再び、子ども若者育成支援推進法を改正して、「青少年健全育成法」にする改正案が参議院で提出されています。

こちらも審議未了で廃案の結果となりましたが、この法制定問題についても現在進行形の問題であることがわかるかと思います。


戦後、幾度にもわたって進められようとした表現物を直接規制する法制定。全体を俯瞰すると実は酒鬼薔薇事件など関係なく、社会を揺るがす問題が起こった時に宿願を叶えようと機会を伺っているようにも見えます。

これらの問題に、絶えず多くの人々が注視していくことのみが、表現の自由を守ることに繋がっていくと思います。


明日はいよいよ、近来の表現の自由史に残る2010年の東京都青少年健全育成条例改正について踏み込みます。