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「「「うちのバカ息子(甥)が、とんでもない事をしでかしてしまって申し訳ない。」」」」
松太郎の両親と松太郎の母親の兄の一人である片桐が警察署の床と同化してしまいそうな勢いでキョーコに対して土下座した。
そんな三人を前にキョーコは戸惑いを隠せなかった。
「あの、顔を上げてください。」
キョーコがそう懇願するも三人揃って首を横に振って一向に頭を上げようとはしない。
ちなみに、松太郎の監視役を買って出ていた伯父は、交通の便の関係で今ここにはいない。
その代わり、キョーコは電話で謝り倒されている。
松太郎がキョーコにコンタクトを取ってきたのは、三年前に破断して以降初めての事である。
つまりは、きっちりしっかり松太郎の伯父が松太郎を監視していた事に他ならない。
が、先日、その伯父が出張で家を空けた隙に、何者かの手引によって松太郎は伯父の家を飛び出したらしい。
それを松太郎を監視していた伯父が知ったのは出張から戻って来た昨日の事だ。
かなり責任を感じてるらしく、その足でこちらに来ようとしていたのだが、タイミングが悪く島を出る最終の船が出てしまった後なので、今日の朝一の船に乗ってこちらに向かうとの事だが着くのは今日の夕方になる。
その時に再度話し合いの場を持つ事にしたのだ。議題は、松太郎の今後の身の振り方である。
ちなみにその松太郎であるが、警官たちに取り押さえられる時にジタバタと腕を振り回していたのが、一人の警官にクリティカルヒットし、公務執行妨害のため留置場へ数日間お泊りする事が決定している。
「アホやアホや思うとったけど、こんなに底知れんアホやとは思わんかったわ。キョーコちゃん、遠慮はいらん。被害届出しぃ。」
「え?でも・・・・」
いくらロクデナシ相手でも、兄弟同然に育った松太郎を突き出す事に躊躇した。
「かめへん。キョーコちゃん、優しいから迷うとるんやろうけど、あの底知れん阿呆にはとことんキツイ目に遭わせんと何も分らんし、反省の一つもせえへん。」
蓮は松太郎の母親に同意見だった。世の中には、松太郎のようにとことんキツイ目に遭わさないと反省の色さえ伺えない人間が少なからずいる事を職業柄知っている。
「最上さん、ここは不破さんのお言葉に甘えた方がいいでしょう。もし被害届を出さずにいると、図に乗った彼が今後、最上さんに接触を図る可能性が高いですし。」
蓮の言葉にキョーコ以外の三人は頷いている。それを見て、キョーコは被害届を出す事に決めた。
そして、翌夕方。
松太郎を監視していた伯父が松太郎の実家に入って来るなり、昨日の松太郎の両親たちと同じようにキョーコに向かって土下座をした。
「すまん!!キョーコちゃん。あのバカを野放しにしてしまって。」
「あの、顔を上げてください。彼が脱出した時、おじ様は出張で留守だったんでしょう?だったら、おじ様には何も責任はありません。それよりも・・・」
「ああ。あのバカの手引きをした人間は分かってる。儂の妻の兄の一人息子が、あのバカに丸め込まれたらしい。携帯も取り上げてたんだが、あのバカの口車に乗せられて甥が自分の名前で契約した携帯をあのバカに私た挙句、島から出る段取りまで手伝ったそうだ。義兄が甥を連れて謝りに来た時はビックリしたよ。」
ただ一人、松太郎を除けば破断の話し合いの時と全く同じ面子が今日も揃っていて、皆一様に厳しい顔をしている。
特にキョーコの母親の冴菜は、ようやく前に向かって歩き始めていた自分の娘がトラブルに巻き込まれた事を知って、眉間に皺を寄せている。
「まさか、娘に今さら復縁を求めるなんて・・・・・」
苦々しい口調でそう言う冴菜の顔には、なんて恥知らずな!!と言う言葉がありありと浮かんでいる。
「私は何をどれだけ言われようとも、松太郎さんとはよりを戻すつもりは全くありません。」
「それは当然の事や。アレとよりを戻して欲しいなんて、口が裂けても言われへん。
警官を殴ったのも大きいしな。ここは一つしっかり臭い飯を食って来てもらおうじゃねぇか。アイツが出所した後の身の振り方を考えないとな。あれだけ悪知恵が働くやつだ。どんな僻地に飛ばしても、またキョーコちゃんに接触を図るに違いない。どうしたものか。」
怒り心頭の片桐がそう言うと、松太郎の父親がおもむろに口を開いた。
「俺にそのスジに伝手があるから、マグロ漁船にでも乗せるか?」
その言葉に場が一瞬静まり返ったが、たちまち賛同の声が上がった。
「アンタ、それ、ええ案やわぁ。骨の髄まで真の苦労ちゅうもんを、あのバカ息子に叩き込む絶好の機会やわぁ。訳ありの人間たちにせいぜいしごかれて来たらええわ。」
何故か松太郎の母親も乗り気である。
キョーコと冴菜が呆気にとられていると、松太郎のもう一人の伯父が二人に訊いた。
「最上さん、キョーコちゃん。こんな制裁案が出てるけど、お二人の考えはどうやろか。」
キョーコと冴菜が顔を見合わせて頷いた。
「それは、皆さんにお任せします。もう二度と私に接触をしないと言う確約が取れればそれで。」
キョーコがそう言うと、松太郎の父親は机に置いていたスマホに手を伸ばしどこかに電話をかけ始めた。
「あいつが出所する時は、俺らがあいつを迎えに行ってそのままマグロ漁船に乗せて来るからな。」
ガハハハと片桐が豪快に笑いながら言った。
その後、松太郎の姿を見た者は誰もいないらしい。
《おわり》
夜眠っているうちに、タイトルと前編の《おわり》の文字が魔人様によって修正されてて、ドびっくり*゚Д゚)*゚д゚)*゚Д゚)エエェェ
と言うことで、潔くあきらめて後編を書くことに決定いたしました。
今回の話で何が一番辛かったかと言うと、松太郎の誤字だらけのメールでした(笑)
どんだけ酷いんだ、誤字!!と突っ込みながら書いてました。