前回に引き続き、2019年度の2号目のネイチャーのハイライトより。
代謝:熱産生に糖代謝を利用するベージュ脂肪
Nature 565, 7738
2019年1月10日
使っていない脂質を蓄積する白色脂肪組織とは異なり、褐色脂肪やベージュ脂肪は、低温曝露に応答して脂質を代謝し、熱を産生する。この熱産生の大部分は、β3-アドレナリン受容体シグナル伝達を介して行われる。梶村真吾(米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校)たちは今回、新たなタイプのベージュ脂肪の発見について報告している。このベージュ脂肪は筋原性の前駆細胞集団に由来し、通常、脂肪の熱産生に重要な経路であるβ-アドレナリン受容体シグナル伝達がなくても低温順化の間に形成され、脂肪酸酸化よりもグルコースの使用を優先して熱産生を行う。転写因子のGA結合タンパク質αが、筋原細胞からこの糖代謝性ベージュ脂肪を分化させる重要なドライバーの1つであることが分かった。糖代謝性ベージュ脂肪を喪失させたマウスは低体温症になったため、糖代謝性ベージュ脂肪の機能は低温ストレス下での生存に必要であることが実証された。抗肥満や抗糖尿病の治療手法の標的として、熱産生脂肪に関心が集まっており、今回見つかった熱産生脂肪の新たなサブタイプは、新たな治療標的として有望である。
News & Views p.167
Article p.180
■ベージュ脂肪細胞は、マウスとヒトにおける独自の熱産生脂肪細胞である | 一人抄読会
(上記の原文:Beige adipocytes are a distinct type of thermogenic fat cell in mouse and human.)
おまけ:ベージュ脂肪細胞・褐色脂肪細胞・白色脂肪細胞の違いと太りにくい体質になる方法
おまけ:褐色・白色・ベージュ脂肪細胞の違いと働きって何デス?
この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。
日本語版本誌では、「代謝:甘党の脂肪細胞」と題されています。見出しにおいては、「一部の脂肪細胞はエネルギーを熱に変換するので、それを体重減少の標的にするのは魅力的である。今回、脂肪細胞の一部が、グルコースと脂質の両方ではなく、グルコースのみを消費することが見いだされ、体重減少だけを行う能力を向上できる可能性が出てきた。」と取り上げられています。
フルテキストを直訳しますと・・・
甘い歯を持つ脂肪細胞
となり、見出しを直訳しますと・・・
一部の脂肪細胞はエネルギーを熱に変換するため、減量を誘導するためにそれらを標的にすることは魅力的です。細胞のサブセットがグルコースと脂質の両方ではなくグルコースを燃やすという発見は、まさにそれを行う能力を向上させる可能性があります。
となります。
フルテキストは下記です。
Full Text:News & Views p.167
本論文においては、日本語版本誌では、「代謝:低温ストレスは筋原性の前駆細胞を経由して糖代謝性ベージュ脂肪の分化を誘導する」と題されています。
フルテキストを直訳しますと・・・
熱ストレスは筋原性状態を介して解糖系ベージュ脂肪形成を誘発する
となり、Abstractを直訳しますと・・・
環境の手がかりは、多細胞生物の細胞可塑性に深く影響します。たとえば、運動は骨格筋の解糖から酸化への繊維タイプの切り替えを促進し、低温順化は脂肪組織におけるベージュの脂肪細胞生合成を誘導します。ただし、生理学的または病理学的な手がかりが発達の可塑性を引き起こす分子メカニズムは完全に理解されていないままです。ここでは、β-アドレナリン受容体シグナル伝達の非存在下での慢性寒冷適応において重要な役割を果たしているベージュ脂肪細胞のタイプを報告します。このベージュの脂肪は、発生の起源と調節に関して従来のベージュの脂肪とは異なり、グルコースの酸化が促進されています。したがって、解糖系ベージュ脂肪と呼びます。機械的には、筋原性中間体を介した解糖系ベージュ脂肪細胞分化の調節因子としてGA結合タンパク質αを同定します。私たちの研究は、熱ストレスが前駆細胞の可塑性を誘導し、エネルギー恒常性と生存に必要な異なる形態のサーモジェニック細胞を補充する非標準的な適応メカニズムを明らかにしています。
となります。
フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。
Full Text:Article p.180
Thermal stress induces glycolytic beige fat formation via a myogenic state
Data availabilityによりますと・・・
この研究で生成されたRNA-seqデータセットは、ArrayExpressで次のアクセッションコードで入手できます:E-MTAB-4526(β-lessマウスの脂肪組織)、E-MTAB-4528(β-lessマウスの骨格筋)、E- MTAB-6392(Myod1 +由来のベージュ脂肪)、E-MTAB-7175(BAT、WAT、および骨格筋)、E-MTAB-6441(Myod1 +由来の前駆細胞)、およびE-MTAB-7164(筋芽細胞)。本研究のデータセットは、リクエストに応じて対応する著者から入手できます。
究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「計算生化学:治療用タンパク質をde novoに設計する方法の改良」を取り上げます。がんの治療に関連する論文です。