前回に引き続き、2018年度の44号目のネイチャーのハイライトより。
生化学:p300アセチルトランスフェラーゼの活性化
Nature 562, 7728
2018年10月25日
ヒストンアセチルトランスフェラーゼのp300は転写コアクチベーターで、遺伝子調節エレメントへ誘導され、そこでクロマチンのアセチル化を起こすことで転写を促進する。今回D Panneたちは、IRF3やSTAT1のような転写因子がDNA上で活性化されて二量体化すると、p300の持続的な活性化が起こることを明らかにしている。この活性化機構には、p300の自己阻害性ループが関わっている。リシンを多く含み、本来的に無秩序な構造をとっているこのループがHATドメイン中でトランス自己アセチル化されると、p300が活性化される。この知見は、クロマチン修飾酵素の活性化が転写因子二量体のDNAへの結合に密接に連携している仕組みを説明する例証となる。
■DNAメチル化とクロマチン構造 - 東京大学医学部附属(クロマチンのアセチル化)
■ヒストンアセチル化による転写制御機構(PDF)
本論文においては、日本語版の本誌では「生化学:p300アセチルトランスフェラーゼは転写因子の二量体化によって活性化される」と題されています。
フルテキストを直訳しますと・・・
転写因子二量体化はp300アセチルトランスフェラーゼを活性化する
となり、Abstractを直訳しますと・・・
転写活性化補助因子p300は、典型的には転写エンハンサーに動員され、クロマチンをアセチル化することによって遺伝子発現を調節するヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)である。ここで我々はp300の活性化が転写因子リガンドの活性化とオリゴマー化状態に直接依存することを示す。 2つのモデル転写因子、IRF3とSTAT1を使用して、転写因子の二量体化は高度に保存された本質的に無秩序な自己抑制性のリジンに富むループにおいてp300のトランス自己アセチル化を可能にする。自己抑制ループが隣接するHATドメインの活性部位に侵入するp300の結晶構造を説明し、トランス - 自動アセチル化反応中間体のスナップショットを明らかにする。活性部位への基質アクセスは自己阻害性のRINGドメインの再配列を含む。我々のデータは、細胞内シグナル伝達ならびに転写因子の活性化および二量体化がどのようにp300の活性化を制御するのかを説明し、したがって遺伝子転写がなぜクロマチンアセチル化と関連するのかを説明する。
となります。
フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。
Full Text:Article p.538
Transcription factor dimerization activates the p300 acetyltransferase
尚、Data availabilityによりますと、ジアセチル化ヒストンH4ペプチドに結合したp300コア構造およびBΔRPの座標は、それぞれProtein Data Bank(PDB)からアクセッション番号6GYRおよび6GYTで入手可能である。ソースデータは、図1b、fおよび図1dの拡張データに使用できます。図1dは、図1dの拡張データに示される反応からの初速度を示す。
とのことです。
究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「天文学:ハッブル定数は5年間以内に精度よく決まる」を取り上げます。