がん: マウス基底細胞がんの抵抗性機構 | Just One of Those Things

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前回に引き続き、2018年度の43号目のネイチャーのハイライトより。
 

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がん: マウス基底細胞がんの抵抗性機構
Nature 562, 7727
2018年10月18日   

基底細胞がんの治療には、腫瘍の増殖の駆動因子となるヘッジホッグシグナル伝達系を標的とするSmoothened阻害剤が使われることが多い。今回、著者たちはマウスモデルを用いて、Smoothened阻害剤であるビスモデギブを投与した基底細胞がん細胞の運命を追跡し、治療に抵抗性を示す静止状態の細胞群があって、これが腫瘍を再増殖させることを明らかにしている。これらの抵抗性細胞では、Wntシグナル伝達の活性化によって細胞アイデンティティーの転換が引き起こされるため、ビスモデギブ投与とWntの不活性化とを組み合わせることによって、基底細胞がん細胞の分化を促進できる。

Letter p.429
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ヘッジホッグシグナル伝達経路 - Wikipedia

Smoothened - Wikipedia

おまけ:ファイザー社のglasdegib、未治療の急性骨髄性白血病の治療薬として(経口Smoothened(SMO)阻害剤)

ビスモデギブ - Wikipedia

Wntシグナル経路 - Wikipedia

Wnt シグナル伝達経路の活性制御と発がんとの関連(PDF)

Wntシグナル伝達について知りたいすべてのこと | Science Signaling

 

本論文においては、日本語版の本誌では「がん:細胞のアイデンティティーの転換により残存BCCはヘッジホッグ経路の阻害を生き延びられる」と取り上げられています。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

細胞識別スイッチにより、残存BCCはヘッジホッグ経路阻害を乗り切る
 

となり、Abstractを直訳しますと・・・

 

基底細胞癌(BCC)[1]の治療におけるヘッジホッグ経路阻害剤の有効性にもかかわらず、残存疾患は一部の患者で持続し、治療を中止した場合に再発の一因となる可能性があります[2]。ここで、Smoothened抑制剤vismodegibの腫瘍クリアランスに対する効果を研究するために、我々はBCC[3]のPtch1-Trp53マウスモデルを使用し、そしてvismodegibで処理されたマウスが治療の終了時に再生する静止残存腫瘍を抱えることを見出した。プロファイリング実験により、残存BCCは、濾胞間表皮および峡部の幹細胞のそれに非常に似ている転写プログラムを開始することが明らかにされたが、未処理BCCは、毛包バルジにより類似している。この細胞識別スイッチは、細胞識別に関与する重要な転写因子の活性化を推進するための急速なWnt経路活性化およびスーパーエンハンサーの再プログラミングを伴う、ほとんど許容されるクロマチン状態によって可能にされた。従って、ビスモジブとWnt経路阻害剤の両方を用いたBCCの治療は、残存腫瘍量を減少させそして分化を増強させた。我々の研究は、生存のための最初の発がん性ドライバーに依存しない代替のアイデンティティを採用することによって腫瘍細胞が治療を回避する耐性メカニズムを特定します。
 

となります。

 

フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。

 

Full Text:Letter p.429

A cell identity switch allows residual BCC to survive Hedgehog pathway inhibition

 

尚、Data availabilityによると・・・

 

本研究の知見を裏付けるRNA-seqおよびATAC-seqデータはGene Expression Omnibus(GSE116966)に寄託されています。その他のすべてのデータは、合理的な要求に応じて対応する作者から入手できます。
 

だそうです。

 

 

究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「がん: 基底細胞がんの再発機構を解明」を取り上げます。

 

 

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