がん: BRCA1バリアントを分類する | Just One of Those Things

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2018年度の42号目のネイチャーのハイライトより。

 

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がん: BRCA1バリアントを分類する
Nature 562, 7726
2018年10月11日   

生殖細胞系列のBRCA1機能喪失型バリアントは、早発性の乳がんや卵巣がんになりやすい傾向(素因)と関連付けられている。J ShendureとL Staritaたちは今回、遺伝子バリアントの働きの解明を助けるために、BRCA1バリアントの機能的評価を行った。彼らはまず、BRCA1の機能に重要なRINGドメインとBRCTドメインをコードする13種のエキソンで、一塩基バリアント群の飽和ゲノム編集実験を行った。そして、塩基配列解読と細胞適応度アッセイを組み合わせて、機能を持つバリアントを判別し、BRCA1中の標的となったエキソン内のおよそ4000の一塩基バリアントに対する機能スコアを算定した。その結果、計算予想との相関が明らかになり、また専門家によってまとめられた病因性バリアントか良性のバリアントかという判別結果(ClinVarデータベースの情報)とも高レベルで一致することが分かった。また、臨床的塩基配列研究ではまだ公式に報告されていない3140のバリアントも見つかり、これらについても機能的分類が行われている。

Article p.217
News & Views p.201
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(データが消えることを考えて、最後に転載します)

 

「バリアント」とは変異体のことです。

 

エクソン - Wikipedia(エキソン)

RINGフィンガードメイン:バイオキーワード集|実験医学online

CSTジャパン - リン酸化セリン/トレオニン結合: BRCTドメイン(領域)

非相同末端結合 - Wikipedia

 

この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

日本語版の本誌では「がん:遺伝子検査への数千の近道」と題され、見出しにおいては「今回、遺伝子編集を用いて、生じ得る全ての一塩基変異が、がんの素因である遺伝子BRCA1の重要なタンパク質コード領域に導入され、がんのリスクに関連するバリアントが特定された。」と取り上げられています。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

遺伝子編集は重要な癌遺伝子における何千もの変異体の影響を明らかにする
 

となり、見出しを直訳しますと・・・

 

癌リスクに関連する変異体を同定するために、遺伝子編集を使用して、癌素因遺伝子BRCA1の重要なタンパク質コード領域にすべての可能性のある一塩基変異を導入しました。
 

となります。

 

フルテキストは下記です。

 

Full Text:News & Views p.201

Gene editing reveals the effect of thousands of variants in a key cancer gene

 

本論文においては、日本語版の本誌では「がん:飽和ゲノム編集によるBRCA1バリアントの正確な分類」と取り上げられています。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

飽和ゲノム編集によるBRCA1変異体の正確な分類
 

となり、Abstractを直訳しますと・・・

 

重要性が不明確な変異体は、基本的に遺伝情報の臨床的有用性を制限します。彼らが提起する課題は、生殖細胞系の機能喪失変異型が女性に乳がんおよび卵巣がんの素因となる腫瘍抑制遺伝子であるBRCA1によって要約されています。 BRCA1は何百万人もの女性で配列決定されていますが、最も新しく観察された変異型に関連するリスクを明確に割り当てることはできません。ここでは、飽和ゲノム編集を使用して、BRCA1の機能的に重要なドメインをコードする13個のエクソン中のすべての可能な一塩基変異体(SNV)の96.5%を分析しています。ほぼ4,000のSNVに対する機能的効果は二峰性に分布しており、病原性の確立された評価とほぼ完全に一致している。 400を超える非機能的ミスセンスSNV、ならびに発現を破壊する約300のSNVが同定されている。我々は、これらの結果がBRCA1変異体の臨床的解釈に直ちに有用であり、そしてこのアプローチがさらなる臨床的に実用的な遺伝子における意義不明の変異体の課題を克服するために拡張できると予測する。
 

となります。

 

フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。

 

Full Text:Article p.217

Accurate classification of BRCA1 variants with saturation genome editing

 

 

では、上記に参考文献として取り上げているネイチャーの論文を取り上げます。元となっているのは、上記の本論文です。

 

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【腫瘍学】BRCA1遺伝子のそれぞれのバリアントとがん発症リスクの関係
Nature
2018年9月13日

Oncology: Cancer risks for BRCA1 genetic variants analysed
 
BRCA1遺伝子については数千種類のバリアントが見つかっているが、それらについて、これまでより正確な機能別分類が行われた。この機能評価結果は、臨床現場で乳がんと卵巣がんのリスクを調べるための遺伝子検査の結果を解釈する際に重要な意味を持つ可能性がある。
 
BRCA1遺伝子は、ヒトの腫瘍抑制遺伝子で、その機能喪失は、早発性乳がん/卵巣がんにかかりやすい体質と関連付けられている。
 
BRCA1遺伝子の多様体は、すでに数千種類も見つかっているが、その多くが「意義不明のバリアント」に分類されているため、がんを発症するリスクの評価が難題となっている。
 
この「意義不明」への対処方法の1つは、個々のバリアントについて、その発現時にDNA修復機能が果たされるかどうか(これが(腫瘍抑制に不可欠である)を検証することだ。今回、Jay Shendureたちの研究グループは、ゲノム編集を用いて、BRCA1遺伝子の機能にとって非常に重要な13のエキソン内の約4000個の一塩基バリアント(SNV)の機能を評価した。この評価では、2000万個のヒト半数体細胞(HAP1細胞)について、その後の細胞の生存の測定が行われ、その結果、発現を妨げるように働くSNVが約300個突き止められた上、400個以上のミスセンス変異SNV(タンパク質のアミノ酸配列を変える)が実際には非機能性であることが明らかになった。以上の機能評価結果は、多様体が病原性か良性かを判定するための確立された臨床評価の結果と密接に相関している。
 
Shendureたちは、HAP1細胞株を使用するモデルが他の細胞株の場合と比べて最も生理的に適切なモデルと言えない可能性があるものの、臨床評価結果との高い相関関係が示されたことでデータの妥当性が確認されたと指摘している。また、Shendureたちは、この機能評価結果が多様体の分類にとって価値あるものであることを強調し、臨床現場でBRCA1遺伝子の遺伝的スクリーニング結果を解釈する際に直ちに使用できるという考えを示している。
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以上。

 

 

究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「発生生物学: 内皮細胞の補完的な供給源」を取り上げます。

 

 

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