古生物学: 初期の哺乳類が小さかった理由は顎の力学的構造で説明できる可能性がある | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

前回に引き続き、2018年度の40号目のネイチャーのハイライトより。

 

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古生物学: 初期の哺乳類が小さかった理由は顎の力学的構造で説明できる可能性がある
Nature 561, 7724
2018年9月27日   

初期の哺乳類は、なぜあれほど小さかったのか。爬虫類から哺乳類への移行には、顎と頭蓋とをつなぐ関節における根本的な変化が関与していた。複数の骨で構成されていた下顎が単一の歯骨からなるものへと変化した一方、下顎の2つの骨が小型化して中耳の構成要素として組み込まれ、3つの耳小骨からなる哺乳類中耳を生じたのである。そこで、ある疑問が生じる。移行期の哺乳類はどのようにして、同じ組み合わせの骨を、獲物を捕らえてかみつくためのツールとしての機能(かなりの損耗や応力、負荷を伴う)と、聴覚という繊細で精密な機能の両方に使うことができたのか。そのカギは最小化にあったと考えられる。今回S Lautenschlagerたちは、哺乳類の小型化が、その独特な顎関節の進化と関係していた可能性について明らかにしている。解剖学的構造の復元とモデル設計により、体サイズの小型化が、関与するさまざまな骨にかかる応力の最小化につながったことが分かった。これによって咬合力も減少したが、その速度ははるかに遅く、指数的ではなく線形的であった。顎の小型化は、哺乳類進化のこの極めて重要な段階において、咬合力の減少を最小にしつつ顎関節にかかる応力を減少させるという最適な妥協点をもたらしたのである。

Letter p.533
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ジュラ紀の哺乳型類モルガヌコドンの想像図。体のサイズはわずか4〜6 cmと原始的な哺乳類の中でも特に小さかったと考えられています。

 

本論文においては、日本語版の本誌では「古生物学:哺乳類の顎と中耳の進化において小型化が果たした役割」と題されました。

 

見出しを直訳しますと・・・
 

哺乳動物の形態およびカニクイザルの化石の生体力学的分析は、小型化が哺乳動物の顎の進化的転換を促進したことを実証し、それは下顎骨における咬合力 - 関節負荷の最適化に先行した。
 

となります。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

哺乳類の顎と中耳の進化における小型化の役割

 

となり、Abstractを直訳しますと・・・

 

哺乳類のあごの進化は、脊椎動物の歴史の中で最も重要な革新の1つであり、過去2億2,000万年にわたる優れた放射線と哺乳類の多様化を支えています[1,2]。特に、いくつかの祖先の顎骨を哺乳類の中耳に組み込んでいる間の、下顎骨の単一の歯を有する骨への変換および新規な顎関節の出現は、形態学的目的の典型的な再利用の例としてしばしば引用される。構造[3,4]。それは化石記録で非常によく文書化されていますが、哺乳類の顎の進化は、祖先の顎関節の骨が強力な耐荷重咀嚼のための関節ヒンジとして、そして下顎の中耳としてどのように機能できるかというパラドックスをなおも示しますそれは聴覚には十分繊細でした。ここで我々は初期の哺乳類の顎の小型化が顎関節の変形の主な要因であることを実証するためにデジタル再構成、計算モデリングおよび生体力学的分析を使用する。我々は、以前に考えられていたように、カニクイザル - 哺乳類型移行における重要な非哺乳類型分類群における顎関節ストレスの減少と咬合力の増加の同時の証拠がないことを示す[5、6、7、8]。現代の哺乳動物の進化の間に顎筋肉系の動員のシフトが起こったが、関節負荷を減らしながら咬合力を増すための下顎機能の最適化は、新型哺乳動物の顎関節の出現後までは起こらなかった。これは、小型化が哺乳類の顎関節の進化のための選択的な体制を提供し、続いて後置骨の哺乳類の中耳への統合をもたらしたことを示唆している。
 

となります。

 

フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。

 

Full Text:Letter p.533

The role of miniaturization in the evolution of the mammalian jaw and middle ear

 

 

究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「神経回路: 対象物の能動的感知に体性感覚皮質は不要かもしれない」を取り上げます。

 

 

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