前回に引き続き、2018年度の40号目のネイチャーのハイライトより。
構造生物学: 片頭痛に関係するCGRP受容体の構造がついに明らかになった
Nature 561, 7724
2018年9月27日
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体は、CLR(calcitonin receptor-like receptor)とRAMP1(receptor activity-modifying protein 1)からなる二量体である。CGRPは強力な血管拡張性神経ペプチドであって、片頭痛に関係している。CGRP受容体複合体を標的として片頭痛を防止する最初の抗体薬が最近承認された。今回の研究でP Sextonたちは、クラスBに属するこのGPCRと、RAMP1との複合体について、Gsタンパク質ヘテロ三量体と複合体を形成した状態のボルタ位相板クライオ(極低温)電子顕微鏡構造を報告している。この構造は、分子動力学シミュレーションの結果と共に、RAMPがCLRを安定化させてペプチド結合とシグナル伝達を行う仕組みについての知見と、GPCR機能の制御におけるRAMPのアロステリックな役割の詳細を明らかにしている。RAMP類は、CLRだけでなく、他の複数種のGPCRも修飾して一連の受容体表現系を生じさせる。従ってこの研究は、このような受容体複合体を治療のために標的とすることについて、解明をさらに進めるものだ。
Article p.492
おまけ:痛みと鎮痛の基礎知識 - Pain Relief ーペプチド関連薬
本論文においては、日本語版の本誌では「構造生物学:Gsタンパク質と複合体を形成した活性型ヒトCGRP受容体のクライオ電子顕微鏡構造」と題されています。
見出しを直訳しますと・・・
Volta位相板低温電子顕微鏡を用いて決定したカルシトニン遺伝子関連ペプチド、ヒトカルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体およびGsヘテロトリマーを含む複合体の構造は、Gタンパク質共役受容体の調節に対する構造的洞察を提供する。受容体活性修飾タンパク質1。
となります。
フルテキストを直訳しますと・・・
活性なGs蛋白質複合体を形成したヒトCGRP受容体の低温EM構造
となり、Abstractを直訳しますと・・・
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、感覚神経伝達において主要な役割を果たす、広く発現されている神経ペプチドである。 CGRP受容体は、カルシトニン受容体様受容体(CLR)クラスB Gタンパク質共役受容体および1型膜貫通ドメインタンパク質、受容体活性修飾タンパク質1(RAMP1)のヘテロ二量体である。ここでは、ボルタ位相板低温電子顕微鏡によって決定された、3.3Åのグローバル分解能でのCGRPおよびGs-タンパク質ヘテロトリマーとの複合体におけるヒトCGRP受容体の構造を報告する。受容体活性修飾タンパク質膜貫通ドメインは、CLRの膜貫通ドメイン3、4および5の間の界面に位置し、CLR細胞外ループ2を安定化する。RAMP1は、CLRのアロステリック調節におけるその機能と一致して、CGRPとの限られた直接接触のみをする。分子動力学シミュレーションは、RAMP1が受容体複合体に、特にCLRの細胞外ドメインの位置決めにおいて安定性を提供することを示している。この研究は、Gタンパク質共役型受容体機能の制御への洞察を提供します。
となります。
フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。
Full Text:Article p.492
Cryo-EM structure of the active, Gs-protein complexed, human CGRP receptor
新たな標的薬ができるかもしれませんね。
※現在は直訳を主にしています。わからないことなどがありましたら、お気軽にコメントなどにてご質問くださいませ。
究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「材料科学: 自律的に再構成されるメタマテリアル」を取り上げます。