環境科学: 海水準上昇が沿岸湿地に及ぼす影響 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

前回に引き続き、38号目のネイチャーのハイライトより。

 

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環境科学: 海水準上昇が沿岸湿地に及ぼす影響
Nature 561, 7722
2018年9月13日    

沿岸湿地は、天然の海岸保護や炭素隔離などの多くの重要な生態系サービスを提供する。将来の海水準上昇に対する沿岸湿地の応答はまだよく分かっておらず、多くの研究では、湿地が広範囲に失われると示唆されている。今回、全球のモデル化手法によって、21世紀における海水準上昇と人為的な沿岸域の占有への応答で生じる沿岸湿地の面積の変化が評価され、湿地は減少するのではなく、現在より最大60%増大する可能性があることが見いだされた。シミュレーション結果は、そのためには、沿岸湿地の37%以上に十分な堆積空間、つまり細粒堆積物が堆積し湿地の植生が定着できる鉛直方向と水平方向の空間があり、堆積物の供給が現在の水準で維持される必要があることを示唆している。著者たちは、適切な沿岸域管理は、十分な堆積空間の利用可能性を高めることによって、湿地の回復力を支持できる可能性があると提案している。

Letter p.231
News & Views p.183
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上の写真は、英国の東岸に細長く延びる沿岸塩性湿地。ここでは堤防によって陸側への湿地の移動が妨げられており、堆積空間を増大させてこれを可能にしなければ、全球的な海水準上昇によって湿地の幅はさらに狭められ、最終的には海に沈んでしまうだろう、と考えられています。

 

この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

日本語版の本誌には「環境科学:干潟の将来は私たちの手の中に」と題され、「今回コンピューターシミュレーションによって、海水準上昇に起因する干潟の喪失は、新たに海に沈んだ地域における干潟生態系の陸側への拡大によって、大きく相殺される可能性が示唆された。」と、取り上げられました。

 

直訳しますと・・・。

 

干潟の将来は沿岸管理に依存する、と題し、

 

計算機シミュレーションは、海面上昇に起因する将来の潮汐湿地の損失は、これらの生態系が新たに海に浸水した地域に陸上に進むことによって大いに相殺される可能性があることを示唆している。
 

となります。

 

フルテキストは下記になります。

 

Full Text:News & Views p.183

Future of tidal wetlands depends on coastal management

 

本論文においては、日本語版の本誌では、「環境科学:海水準上昇に対する全球の沿岸湿地の将来の応答」と題されており・・・
 

直訳しますと・・・

 

見出しは、

 

地球規模のモデリングアプローチは、適切な沿岸管理ソリューションが湿地の回復力を支援するために開発されれば、世界的な海面の上昇に対応して、沿岸湿地地域で最大60%の増加が可能であることを示します。
 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

世界的な沿岸湿地の海面上昇に対する将来の対応

 

となり・・・。Abstractは・・・

 

21世紀の間の海面上昇に対する沿岸湿地の反応は不確実なままです。世界規模の予測では、現在の沿岸湿地帯の20〜90パーセント(それぞれ低および高海面上昇シナリオ)が失われ、その結果、生物多様性が失われ、高い評価が得られることを示唆しています。エコシステムサービス[1,2,3]。これらの予測は必ずしもすべての本質的な地形学的[4、5、6、7]と社会経済システムのフィードバック[8]を考慮に入れていない。ここでは、堆積物の堆積によって沿岸湿地が垂直に形成される能力と、湿地植生によって蓄積され植民地化される微細な堆積物に利用可能な適応空間、すなわち垂直および側方空間の両方を考慮する統合グローバルモデリングアプローチを提示する。我々は、21世紀の間の世界的な海面上昇と人為的な沿岸の占領に対応して、沿岸湿地地域における地球規模の変化を評価するためにこのアプローチを使います。我々のシミュレーションに基づいて、我々は、世界的に、損失よりもむしろ、沿岸湿地の37%(現在の収容スペースのための我々の上限推定値)を超えるならば、現在の地域の最大60%の湿地増加が可能であることを見いだす。十分な収容スペースがあり、土砂供給は現在の水準にとどまっている。これまでの研究とは対照的に、[1、2、3]では、2100年までに、現在のレベルに加えてそれ以上の収容スペースがないと仮定すると、世界の沿岸湿地面積の減少は0〜30%の範囲になると予測している。我々のシミュレーションは、世界の湿地帯の回復力は主として沿岸地帯における人為的インフラの構築によって強く影響される居住スペースの利用可能性によって推進され、そのようなインフラは21世紀にわたって変化すると予想されることを示唆する。地球規模の海面上昇の必然的な結果ではなく、沿岸管理に対する慎重な自然に基づく適応解決策によって十分な追加の収容スペースを創出することができれば、沿岸湿地の大規模な喪失を回避できる可能性がある。

 

本論文のフルテキストは、下記になります。Mainの詳細が必要な方は、ご購入下さいませ。

Future response of global coastal wetlands to sea-level rise

 

 

究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「幹細胞: 皮膚再生のための再プログラム化」を取り上げます。

 

※2,3日バタバタしますので、ブログ活動が遅れることかと思われます。申し訳ございません。

 

 

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