前回に引き続き、37号目のネイチャーのハイライトより。
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構造生物学: マラリアのタンパク質を積み荷として宿主細胞内に運び込むトランスロコン
Nature 561, 7721
2018年9月6日
構造生物学: マラリアのタンパク質を積み荷として宿主細胞内に運び込むトランスロコン
Nature 561, 7721
2018年9月6日
マラリア発症の主要な特徴の1つは、プラスモジウム属(Plasmodium)のマラリア原虫による宿主の赤血球(RBC)のリモデリングである。マラリア原虫はRBC中の寄生体胞内部に住み着き、専用の分子装置を使って大量のエフェクタータンパク質をRBCの細胞質へと運び込む。この役割を果たすのが、1.2 MDaを超える膜タンパク質複合体であるPTEX(Plasmodium translocon of exported proteins)である。このトランスロコンはマラリア原虫の毒性に必須で、そのため抗マラリア薬の重要な標的候補と見なされているが、複合体が集合し機能する際の分子機構はほとんど分かっておらず、複合体に関する構造情報もなかった。今回H Zhouたちは、CRISPR–Cas9によって改変されたエピトープ標識を使って、EXP2とPTEX150、HSP101からなる内在性PTEXコア複合体を熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)から単離し、内在する積み荷の移動を行っている状態の複合体と、次の輸送用にリセットされた状態にある複合体の構造をクライオ(極低温)電子顕微鏡法により決定した。この研究は、熱帯熱マラリア原虫エフェクタータンパク質の搬出機構についての重要な知見を明らかにしており、この独特なトランスロコンを標的とする抗マラリア薬を構造に基づいて設計するための情報が得られそうだ。
Article p.70
News & Views p.41
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おまけ:マラリアワクチンは なぜできないのか(PDF)
PTEXは、Wikipediaの英版でもまとめられておらず、このように英文による論文しかありません。関する論文はたくさん出てきます。
■特集:CRISPR-Cas9 とは DNA二本鎖を切断してゲノム配列の任意の場所を削除、置換、挿入することができる新しい遺伝子改変技術
■CRISPR-Cas9 基本の「き」 | ゲノム編集技術の基礎知識を余すところなく解説します!
■guide RNAによるゲノム編集ツール CRISPR-Cas9 システム <特集>
ふむぅ・・・。
この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。
多タンパク質複合体PTEXは、赤血球内で生き残るためにはマラリアの原因となる寄生虫を可能にします。研究はPTEXの組み立て方法を明らかにし、複雑なのタンパク質の一つ、EXP2のための機能を識別します。
Full Text:News & Views
Spotlight on proteins that aid malaria
で、本論文は下記のフルテキストにて・・・。
Full Text
Malaria parasite translocon structure and mechanism of effector export
創薬には使えるようになるまで10年ほどかかり、しかも成功する確率が低いと言われています。それであるが故に、一日も早く特効薬が実現してほしいですね。
究極に溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、惑星科学より、木星の意外なダイナモ、を取り上げます。