免疫学: エキソソームが腫瘍の免疫回避を助ける | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

前回に引き続き、34号目のネイチャーのハイライトより。
 

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免疫学: エキソソームが腫瘍の免疫回避を助ける
Nature 560, 7718
2018年8月16日    

腫瘍細胞の表面上のPD-L1(programmed death-ligand 1)が、T細胞上のPD-1(programmed death-1)受容体と相互作用すると、免疫チェックポイント応答が引き起こされる。W Guoたちは今回、転移性黒色腫が、PD-L1を表面に持つエキソソームを放出し、それらがCD8 T細胞の機能を抑制する働きをすることを報告している。インターフェロンγによって黒色腫細胞を刺激すると、放出されたエキソソーム上のPD-L1量が増加した。この研究は、腫瘍細胞が免疫系を回避する機構を明らかにしており、抗PD-1抗体療法への腫瘍の応答が一定ではない理由の1つを示唆している。
 

Letter p.382
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このような論文が出ているようですが、論文のふたを開けてみないとわからないですねぇ・・・。
 
ネイチャーの姉妹誌です。最後に転載します。
掲載されている内容のものはネイチャーの姉妹誌によるものです。

PD-L1 - がん情報サイト「オンコロ」

PD-1 - Wikipedia

免疫のブレーキPD-1が、自然免疫反応の調節によって免疫難病の発症を抑制することを解明

CD8 - Wikipedia

インターフェロン - Wikipedia(インターフェロンγ)

「インターフェロン-γ」とは何? Weblio辞書

オプジーボ・ニボルマブ(抗PD-1抗体)|がん免疫療法と併用し免疫機能を高めるニボルマブ(抗PD-1抗体)の点滴治療

抗PD-1抗体薬オプジーボの有効性を高める可能性は単剤投与よりも併用投与にあり

 

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免疫学:エキソソームのPD-L1は免疫抑制に関与し、抗PD-1応答と関連する
Nature 560, 7718 |  Published: 2018年8月16日 |

腫瘍細胞は、細胞表面でのPD-L1(programmed death-ligand 1)の発現を上昇させることで免疫監視を逃れている。PD-L1はT細胞上のPD-1(programmed death-1)受容体と相互作用して、免疫チェックポイント応答を引き起こすリガンドである。抗PD-1抗体は、転移性黒色腫などの腫瘍の治療において、非常に有望なことが明らかになっている。しかし、患者奏功率は低い。PD-L1を介した免疫回避をより深く理解することは、患者の応答を予測し、治療効果を改善するために必要である。今回我々は、転移性黒色腫が、その表面にPD-L1を持った細胞外小胞を、多くの場合エキソソームの形で放出していることを報告する。インターフェロンγ(IFN-γ)による刺激は、これらの小胞上のPD-L1の量を増加させ、その結果、CD8 T細胞の機能が抑制され、腫瘍の増殖が促進される。転移性黒色腫の患者では、血中のエキソソームPD-L1レベルは血中IFN-γのレベルと正の相関を示し、抗PD-1治療の経過中に変動した。治療初期段階での血中エキソソームPD-L1の増加の程度は、T細胞再活性化に対する腫瘍細胞の適応応答の指標となり、治療に応答する患者と応答しない患者を分類する。我々の研究は、腫瘍細胞が全身的に免疫系を抑制する1つの機構を明らかにし、抗PD-1治療の予測因子としてエキソソームPD-L1を利用できる論拠を示している。
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リガンド - Wikipedia

 

抗PD-1治療の予測因子としてエキソソームPD-L1を利用できる・・・ですか・・・。ここまでわかってくると、強みになってきますね。

 

以下に、ネイチャーの姉妹誌の論文を転載します。

 

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エキソソームは細胞から有害なDNAを排出することによって細胞の恒常性を維持する
Exosomes maintain cellular homeostasis by excreting harmful DNA from cells
2017年5月16日 Nature Communications 8 :

近年、エキソソームは、細胞間コミュニケーションを介して様々な生理的現象や疾患発症に関与していることが明らかになりつつある。しかし、エキソソームを分泌する細胞でのエキソソーム分泌の生物学的役割はほとんど明らかにされていない。本論文では、エキソソームの分泌が、エキソソームを分泌する細胞において細胞の恒常性維持に重要な役割を担っていることを見出した。エキソソームの分泌を阻害すると細胞質に核に由来するDNAが蓄積し、その結果、細胞質のDNAセンサーの活性化が引き起こされた。この事象は、自然免疫応答を引き起こし、それが活性酸素種(ROS)依存的なDNA損傷応答を誘発することで、正常ヒト細胞において細胞老化様の細胞周期停止あるいはアポトーシスを誘導した。これらの結果とエキソソームにはさまざまな長さの染色体DNA断片が含まれていることを示す実験結果とを合わせると、エキソソームの分泌には細胞に有害な細胞質DNAが蓄積しないようにすることによって細胞の恒常性を維持する役割があると考えられる。これらの発見は、エキソソームの生物学的役割の理解を深めると同時に細胞の恒常性制御につながる有益な新しい手掛かりになる。
 
Akiko Takahashi, Ryo Okada, Koji Nagao, Yuka Kawamata, Aki Hanyu, Shin Yoshimoto, Masaki Takasugi, Sugiko Watanabe, Masato T Kanemaki, Chikashi Obuse and Eiji Hara
 
Corresponding Authors
高橋 暁子
公益財団法人 がん研究会
原 英二
公益財団法人 がん研究会(大阪大学 微生物病研究所)
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特に参考資料をつける必要はなさそうです。

 

溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、がんより、多タンパク質超複合体はリンパ腫で生存促進性シグナル伝達を誘導する、を取り上げます。次回も、がん関係の論文となります。
 

 

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