二酸化炭素貯留は地震を引き起こす? | Just One of Those Things

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科学オタクの主婦が危機感から一人でこねまくっております、危機管理シリーズ。二酸化炭素貯留のリサーチをしていたら、二酸化炭素貯留に地震を引き起こすリスクについての米研究の記事を見たので、科学的根拠を探しました。

 

≪二酸化炭素貯留とは≫

二酸化炭素貯留 - Wikipedia

上記でもわかるように様々な方法があります。

CO2回収・貯留(CCS) - 環境技術解説|環境展望台

上記でも、CCSだけでも様々な方法があり、日々開発されています。

二酸化炭素地中貯留技術研究組合研究テーマ

大まかにはこんな感じですが・・・

研究内容 | RITE CO2貯留研究グループ

上記のようなところなど様々です。

 

≪本題となる見つけた論文≫

 

下記の論文で、大きな地震があるとCCSのせいだとネット上では、恐怖におののいている人々が多かったので、整理するとします。

 

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二酸化炭素貯留に地震を引き起こすリスク、米研究
2012年6月22日 19:09 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 北米 米国 ]

【6月22日 AFP】二酸化炭素(CO2)排出削減のひとつの方法として挙げられている、大気中のCO2を回収して地中に隔離する「二酸化炭素回収・貯留(CCS)」には地震を引き起こす危険性があると、米国の研究者らが警告している。
 
 18日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表された米スタンフォード大学(Stanford University)のチームの報告によると、国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)は、火力発電やその他の工業排出源による汚染管理法としてCCSは「実現性が高い」としている。
 
 いまだ大規模なCCSが試みられていない中、スタンフォード大のチームは、膨大な量の液体を長期間地中に貯留する必要のあるCCSは非現実的であるとし、「大陸内部によくみられる脆性(ぜいせい)岩石に大量のCO2を注入することにより、地震が引き起こされる可能性が高い」と主張した。
 
 論文では、すでに米国において排水の地下貯留と小中規模の地震発生が関連づけられていると指摘。古くは1960年のコロラド(Colorado)州の例、さらにはアーカンソー(Arkansas)州やオハイオ(Ohio)州で昨年発生した地震を例に挙げつつ、「100年から1000年の単位でCO2を隔離することが考えられている地層で同規模の地震が起これば、問題は極めて深刻である」と警鐘を鳴らす。
 
 この報告に先立ち前週15日、米国学術研究会議(US National Research Council)は、水圧破砕法(ハイドロ・フラッキング)によって地震が発生する可能性は低いが、CCSには「比較的大きな地震事象を誘発する可能性がある」と発表している。(c)AFP/Kerry Sheridan
http://www.afpbb.com/articles/-/2885691
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上記より、
【膨大な量の液体を長期間地中に貯留する必要のあるCCSは非現実的】
と限定し、
【「大陸内部によくみられる脆性(ぜいせい)岩石に大量のCO2を注入することにより、地震が引き起こされる可能性が高い」】
と更に限定していること。
【すでに米国において排水の地下貯留と小中規模の地震発生が関連づけられていると指摘】
これについての関連する論文がネイチャーや姉妹誌などの科学誌に論文が全くないこと。
【水圧破砕法(ハイドロ・フラッキング)によって地震が発生する可能性は低いが、CCSには「比較的大きな地震事象を誘発する可能性がある」】
これについて根拠を示す論文が見つからなかったこと。「なぜ、比較的大きな地震事象を誘発する可能性があるのか?」
 
さらに、根拠で固めていれば、風力発電の人体被害を取り上げるぐらいだから、ネイチャーが喜んで取り上げるだろうに、ネイチャーに投稿されなかったこと。

 
≪論文を調べたところ≫
 
より、
【(1) 相対的安定的な地域でも,地下流体注入による誘発地震を引き起こすことがある.(2)同じガス田 でも,断層近くでの注入が地震を誘発するが,数キロでも断層から離れれば地震を誘発しないこと が観測された.(3)地震活動変化や応力状態の臨界性を把握するため複数の統計パラメータの統合 利用が有効である.(4)ETASモデル手法を使って注水により誘発(外部トリーガ)された地震 と地震自身によりセルフトリガーされた地震(大森則に従う“余震”活動)のそれぞれの割合を統 計的に割り出すことが可能である.(5)地下流体圧入はあらゆる産状の断層に正のΔCFS(クーロ ン破壊応力変化)を付加するが,地震を誘発するためのΔCFSの閾値は地震の発生による応力解 放のため次第に大きくなることが示唆されている. 】
とあるけど、データが少ないのですよ・・・。現地の中国では、少なくとも、同じガス田でも、断層近くでの注入が自信を誘発しても、数キロでも断層から離れれば地震を誘発しなかったんですね。
【最近の研究から,内陸地震で流体が関与すること普遍的に見ることができる.例えば,高角な逆 断層で地震が発生する場合には,地殻深部から流体の供給があることが示唆される.今後,CO2 の 地下貯留やEGS(Enhanced Geothermal System)の開発などにおける地下流体注入実験が開始さ れつつあるので注水による誘発地震データが増えることが考えられ,地震予知に資する知見を蓄積 することに期待したい.】
とありますが、ネイチャーや姉妹誌に参考文献が山ほどあるのに、この論文はたった3本で、信憑性に欠けるのですが・・・。
 
より、
 
【・ アルジェリアの In Salah の CO2地中貯留プロジェ クトを対象に,Onuma ら 1)が干渉 SAR で観測した 地表面隆起挙動データをもとに,逆解析による貯 留層圧力の推定をおこなった.その結果,Vasco ら 方法は地表面変位量から貯留層圧力を迅速に推定 する上で有用であることが分かった. ・ 二相流体-応力・変形連成シミュレーションを実 施し,干渉 SAR による地表面隆起挙動の再現を試 みた.その結果,比較的単純なモデルにも関わらず,地表面変位の経時変化を定量的レベルで表現 できた.  ・ 干渉 SAR で観測される地表面変位の分布パターン は,今回の数値解析結果から確認されたように, 貯留層内(あるいはその近傍)の圧力上昇量の分 布を反映している. ・ したがって,(1) 貯留層内の圧力上昇量分布,(2) 貯留層内の浸透率分布や (3)水理コンパートメント, (4) 潜在的な漏洩経路など,有用な情報が得られる 可能性があり,他の坑井試験や探査データや数値 解析と組み合わせることにより,CO2地中挙動の 把握に大きく役立つ可能性がある. 】
一般的には、コンピューターでシミュレーションするところを、全部手書きで数式を書き込みしているのは凄いです。この論文でも参考文献が8本・・・。根拠の肉付けをして参考文献を増やせば、もっと良い論文になるかと思います。
 
実質、二酸化炭素貯留と地震についての論文はこれしかないのです・・・。
 
≪著名な科学誌によるものでは≫
 
より、
【現在、CO2の隔離技術はノルウェーやアルジェリアなど世界65カ所で試験的に導入されており、イリノイ州ディケーター近郊の試験場では、3年間で計100万トンが地下の塩水層に注入されている。
 ミシガン工科大学で、地球工学や鉱山工学、科学の教鞭を執るウェイン・ペニントン(Wayne Pennington)氏は、「フローリック氏の論文は、CO2注入と地震の相関性を初めて示したという点で非常に重要だ」と評価する。
 しかし同氏は、GCS政策が危険と判断するにはまだ材料が不足しているとも指摘。実際、各地の試験導入で問題が発生したケースはない。
「特に、コッジェルよりも注入量が多い油田はあまた存在するが、地震との関連性は指摘されていない。全容を解明するには、この点を乗り越える必要があるだろう」。】
と、いうことで、材料が不足しており、各地の試験導入で同じような問題が発生したケースはないようです。地震との関連性が指摘されていないところがあります。
 
さて、この論文、同じ、
【今回の研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に11月4日付けで発表された】
とあります。
 
情報がこれ以上ないところによると、指摘されているところは回避されず、全容を明らかにしないまま今回の報道となったようです。
 
≪ちなみに≫
 
上記では、
【本実証試験では、CO2を安全かつ安定的に貯留するため、圧入開始前(ベースライン観測)、圧入中、圧入後にモニタリングを実施します。そのために圧入CO2量、地層圧力、地層温度を2坑の圧入井に設置した流量計、温度計、圧力計を使ってモニタリングするほか、CO2の圧入と自然地震の発生には関連性がないこと、自然地震が貯留には影響を及ばさないことを確認するために、自然地震および地下での微小地震のモニタリングを、3坑の観測井、常設型OBC、OBSを使って実施します。これらの観測データは管理棟内のシステムに集約されます。】
と旗を掲げておられていましたが、地震当時の状態はと言えば・・・。
 
 
・・・ということで、ネットで訴えられていた皆様、見当違いでしたね。
 
≪排水の地下貯留と地震の関連で調べたところ≫
 
1つだけありました。ネイチャーの姉妹誌に取り上げられていたようです。
以下大学のプレスリリースより、
「スロースリップ」による水の移動を解明 
〜関東地方の地下深くで天然の注水実験か?〜
東北大学ホームページ
ということです・・・。凄い量の参考文献でしょ。
 
今のところ、あるのはこれだけです・・・。
 
※多忙につき、相変わらずブログでの対応が遅れていますことを、心からお詫び申し上げます。

 

 

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