気候科学: 海洋による熱吸収の低下によって生じる全球表面の急速な温暖化 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、30号目のネイチャーのハイライトより。
 

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気候科学: 海洋による熱吸収の低下によって生じる全球表面の急速な温暖化
Nature 559, 7714
2018年7月19日  

古気候学の知見は、大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)が弱い時に、北半球が寒冷化すると示唆している。今回X ChenとK Tungは、過去数十年間に得られた複数の証拠を評価し、温室効果ガスが急速に排出されている現代においては、AMOCは、極向きの熱輸送ではなく海洋の蓄熱を主に調節していることを示している。従って、AMOCが弱化した現在の状態は、海洋による熱吸収の低下と表面の温暖化の加速に関連付けられる。

Letter p.387
News & Views p.340
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気候科学より、大西洋の循環の減速が表面の温暖化を加速することがわかりました。
 
北大西洋の循環系は弱まっており、今後数十年間でさらに弱まると予測されています。今回、こうした海洋循環の減速が全球表面の温暖化を加速することが解析によって示されました。
 
この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。
 
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気候科学:弱い大西洋鉛直循環によって増強される全球表面の温暖化
Nature 559, 7714 |  Published: 2018年7月19日 | 

古気候学から得られた証拠は、北半球の急激な寒冷事象は大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)の弱化とつながりがあり、こうしたAMOCの弱化は淡水の過剰な流入に起因する可能性があることを示唆している。しかし、こうした知見の多くは、産業革命以前の条件下でのモデル計算から得られており、温室効果ガスの急速な排出を伴う現代には当てはまらない可能性がある。もし当てはまるとすれば、1975~1998年に見られたようなAMOCの弱化によって、北半球は寒冷化したはずである。本論文では、AMOCが最も弱かった期間に、表面が寒冷化したのではなく急速に温暖化したことを示す。より一般的には、AMOCの主要な役割は、温室効果ガスによる加熱の存在下において、表面の熱を北向きに輸送してヨーロッパと北米を温暖化させることから、熱を大西洋深部に蓄えて地球全体の表面の温暖化を緩和することへと変化した。1990年代半ばから2000年代初めのAMOCの加速期においては、AMOCは全球的に過剰な熱の約半分を蓄え、地球温暖化の減速に寄与した。対照的に、2004年に係留観測が始まって以来、AMOCと海洋による熱の吸収は弱まっている。いくつかの独立した指標に基づく今回の結果は、1940年代以降のAMOCの変化が、人為的に強制された傾向ではなく数十年変動によって最もよく説明されることを示している。亜寒帯北大西洋の現在の先行指標は、進行中のAMOCの弱化が終りつつあることを示唆している。我々は、AMOCが最も弱い期間は長引き、おそらく約20年続くと予想する。これまでのパターンが続くとすれば、結果として海洋による熱の吸収が低レベルになって、全球表面が急速に温暖化する期間が現れるであろう。
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海洋の熱の吸収が弱まってますか・・・。およそ20年間続くと予想されるのですね・・・。全球表面が急速に温暖化する期間が現れると怖いですね。本当に起これば・・・。
 
んー。まずいですね・・・。『日本沈没』を見て育った私はつい、昨日取り上げたような「気候科学: 始新世において同時に寒冷化した熱帯と極域の海洋」で、取り上げられていた急激な温暖化のようなことが起こったら!?(あくまで妄想です)・・・と妄想してしまいます(苦笑)。しかし、妄想している場合じゃなく、今回の論文、もしこれまでのパターンが続くのなら、非常にまずいです。
 
まぁ、今は予測できるようになっている分だけ、危機管理ができるので、悲観している場合じゃなく、そんな暇があれば対策に動きましょ、となるわけですが・・・。温暖効果ガスを地中に埋めましょ。
 
問題は、IPCCが現実的で妥当なデータを割り出せるか否やなのですが・・・。2004年度はネイチャーは紙面で「妥当だ」とほめていたのですがねぇ・・・。もう一度褒められましょう。
 
さて・・・。頭痛で寝ていたところ復帰できたので書き上げることができました。が、そろそろ、通院時間となりました。台風対策の用意もあるので、時間が取れ次第まわりますね。
 
たまりに溜まった恒例のネイチャー、次回は、がん遺伝学より、 急性骨髄性白血病のリスクを予測 、を取り上げます。

 

 

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