気候科学: 始新世において同時に寒冷化した熱帯と極域の海洋 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、30号目のネイチャーのハイライトより。
 

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気候科学: 始新世において同時に寒冷化した熱帯と極域の海洋
Nature 559, 7714
2018年7月19日  

前期始新世の気候は現在とは大きく異なっていて、より暑く、大気中の二酸化炭素濃度が高く、極域に氷床が存在しなかった。その後、二酸化炭素濃度が低下し、始新世から漸新世への遷移期に向かって気候が寒冷化し、南極に氷床が出現した。しかし、全般的な気候状態と同様に、気候システム内部の相互関係が異なっていたかどうかはまだ解明されていない。今回M Cramwinckelたちは、赤道域の海面水温の2600万年間にわたる記録を提示し、前期始新世から後期始新世にかけて全球的に約10°C寒冷化したことを明らかにしている。著者たちは、既存の記録と組み合わせて、熱帯と深海は「氷室」状態に向かってほぼ同時に寒冷化しており、熱帯と深海の温度の比がおおむね安定していたことを示している。つまり、大きな氷床がなくても、極域増幅の程度は平均気候の定数関数に留まっていて、現在の気候に見られるように、寒冷期に増幅が大きくなり、より温暖な時期には緯度勾配が小さくなった。

Letter p.382
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海水準変動とは(Sea-Level Changes)(熱帯と深海は「氷室」状態)

このままではわかりにくいので、抜粋します。

【 地球は過去20億年以上にわたり、温室期(Greenhouse)と氷室期(Icehouse)を繰り返しながら現在に至っている。
 現在は比較的寒冷な氷室期に相当するが、近年、人類による産業活動によって地球温暖化が進行しつつあることから、 地球の平均気温の上昇に伴って、将来どのように環境が変化するかを知ることは重要である。】

詳細は上記にて。ここでは、熱帯と深海は「氷室」状態の参考文献として取り上げています。

 

まぁ、今回の研究によって、これはこれまでの見積もりの上限と一致していることが分かったという話ですね。

 

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気候科学:始新世において同時に生じた熱帯と極域の温度変化
Nature 559, 7714 |  Published: 2018年7月19日 | 

気候が温暖で大気中の二酸化炭素濃度が高かった期間の古気候の再構築は、将来の気候変動をよりよく予測するのに重要である。深海と高緯度域の古温度の代理指標からは、始新世(5600万~3400万年前)には、過去6600万年間で最も温暖だった期間があり、その後寒冷化して南極に氷冠が形成されたことが示されている。始新世に極域が温暖だったことは十分に立証されているので、全球平均気温の変化やその極域増幅などの重要な気候パラメーターの推移の定量化を主に妨げているのは、熱帯の温度について質の高い連続的な再構築が行われていないことである。本論文では、大西洋の堆積物に適用したバイオマーカーによる古水温測定に基づいて、始新世の赤道域の海面温度の連続的な記録を提示する。我々は、この記録と既存のまばらなデータを組み合わせて、複数地点の複数の代理指標を積み重ねた始新世の熱帯の2600万年間にわたる気候変化を構築した。その結果、長期的な気候傾向と短期間の事象の両方の影響下において、熱帯と深海の温度の変化が同様であったことが見いだされた。これは、海洋循環の変化ではなく温室効果ガスによる強制が始新世の気候の主な駆動要因だったという仮説と一致する。また、熱帯と深海の温度の間には強い線形関係が観察され、これはほぼ氷結が見られなかった始新世を通して極域増幅係数が一定だったことを示唆している。完全な結合気候モデルによるシミュレーションとの定量的な比較からは、産業革命前の14.4°Cに対して、前期始新世、中期始新世前期、中期始新世後期、後期始新世の全球平均気温が、それぞれ約29、26、23、19°Cであったことが示された。さらに、代理指標とモデルに基づく気温の見積もりと利用できる二酸化炭素の再構築結果を組み合わせたところ、始新世の地球システムの気候感度は68%の確率で、0.9~2.3 K W^−1 m^−2であったという見積もりが得られ、これはこれまでの見積もりの上限と一致する。
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このような至って地味な研究は一般的には惹かないものと思われますが、長いスケールで見ると、地球環境で生息しているヒトだけではなく他の生物においても死活問題にもなりえるので、この手のものも必要な研究の1つです。地味ではありますがネイチャーのハイライトに上がっています。粛々とパズルを埋めていくのみですね・・・。

 

んー。「海洋循環の変化ではなく温室効果ガスによる強制が始新世の気候の主な駆動要因だったという仮説と一致する。」ですねぇ・・・。突発的温暖化とありますが、北大西洋での海底火山活動やそれに伴う1500Gtのメタンハイドレートの融解などの温暖化ガスの大量放出があったとされています。地表5-7℃の気温上昇の温暖化が起こり、元の二酸化炭素濃度に戻るのに3万年を要したともとされています。現在の生物のほとんど(古細菌以外)には致死じゃないですか。
 

更に、温暖化ガス説が強くなりましたね・・・。荷が重い…(汗;)

 

たまりに溜まった恒例のネイチャー。次回も、気候科学より、海洋による熱吸収の低下によって生じる全球表面の急速な温暖化、を取り上げます。んー。見知らぬふりしてほぼ全部致死に至るのはもっと嫌だから、直視して取り上げます。ストレスについては、ネグレクトや虐待を取り扱うのにくらべれば全然ないに等しいですので、ご安心くださいませ。

 

 

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