発生生物学: 皮下脂肪で脂肪生成を制御する細胞 | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、27号目のネイチャーのハイライトより。
 

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発生生物学: 皮下脂肪で脂肪生成を制御する細胞
Nature 559, 7712
2018年7月5日

今回B Deplanckeたちは、マウスの組織に存在する脂肪生成細胞集団を、単一細胞RNA塩基配列解読法を用いて調べることで、組織での脂肪生成を抑制する細胞の亜集団を見いだしている。脂肪生成を制御するこのストローマ細胞集団は、in vitroおよびin vivoの両方で傍分泌様式で作用することが示された。著者たちは、ヒトにも同じ特性を有する細胞集団が存在することも明らかにしている。

Letter p.103
News & Views p.41
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脂肪細胞の分化メカニズム|遺伝子制御学研究室|筑波大学

脂肪細胞への分化過程における細胞および脂肪滴の挙動(PDF)

エネルギー消費代謝を制御する褐色脂肪細胞の発生機構と 生理的役割の解明(PDF)

脂肪組織と脂質異常症における 遺伝子転写因子の発現制御

 

この論文は朝日新聞デジタルでも報道されているんですが、要約したものを示します。スイス連邦工科大学ローザンヌ校などの研究チームが行ったんですが、研究チームはこの細胞が過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞(Treg)」を連想させるとして、「脂肪生成制御細胞(Areg)」と名付けました。

 

ネイチャーでは発生生物学より、脂肪の蓄積を食い止める、として取り上げられています。

 

脂肪組織の幹細胞や前駆細胞の単一細胞転写プロファイリングによって、異なる細胞亜集団が識別され、その1つが隣接細胞へのシグナル伝達によって脂肪組織の増大を抑制することが分かりました。

 

この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

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発生生物学:哺乳類の脂肪組織において脂肪生成を阻害するストローマ細胞集団
Nature 559, 7712 |  Published: 2018年7月5日 | 

脂肪細胞の発生および分化は、肥満症とその併存疾患の病因において重要な役割を果たしている。成熟脂肪細胞を生じる脂肪生成幹細胞および脂肪生成前駆細胞についての研究は多数行われてきたが、これらの細胞のin vivo起源および特性に関する我々の理解はまだ不十分である。その理由の一部は、脂肪組織の高度に不均質で構造化されていないという性質にあり、蛍光標示式細胞分取(FACS)法やCre–lox系など、候補マーカー遺伝子に基づく標準的な手法では分子的な解析が難しいことが分かっている。今回我々は、マウスモデルで単一細胞トランスクリプトミクスの高い分解能を用いることにより、皮下脂肪組織の間質血管細胞群に存在する脂肪幹細胞および脂肪前駆細胞の特異な亜集団を見いだした。これらの亜集団のうち1つは、脂肪細胞の形成をin vivoおよびin vitroで傍分泌様式で抑制できるCD142+脂肪生成制御性細胞であることが明らかになった。また、脂肪生成抑制細胞は脂肪生成には不応答で、これらがヒトで機能的に保存されていることが分かった。我々の知見は、脂肪生成制御性細胞が、代謝制御、異なるインスリン感受性および2型糖尿病と関連する脂肪組織の可塑性の調節において、非常に重要な役割を担っている可能性を示している。
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間質細胞 - Wikipedia(ストローマ細胞集団)

肥満(肥満症) - 基礎知識(症状・原因・治療など) |

脂肪組織 - Wikipedia

フローサイトメトリー - Wikipedia(蛍光標示式細胞分取器 )

Cre/loxPシステム - 脳科学辞典

Cre-loxP部位特異的組換え - Wikipedia

2型糖尿病 - Wikipedia

 

「単一細胞トランスクリプトミクス」についてですが、過去のネイチャーの論文をご参考に取り上げます。

 

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幹細胞:単一細胞のトランスクリプトミクスが再現する繊維芽細胞から心筋細胞への運命転換
Nature 551, 7678 |  Published: 2017年11月2日 |

細胞系譜の直接転換は、組織再生や疾患モデル作製の新しい方法につながる。最近、繊維芽細胞をさまざまなタイプの細胞に直接再プログラム化することに成功しているが、繊維芽細胞が次第に標的細胞の運命へと転換する過程で起こる変化は、まだ正確には解明されていない。再プログラム化過程は本来不均一で、非同期的な性質を持つため、大量の細胞を扱うバルクなゲノム技術を使ってこの過程を研究するのは難しい。今回我々は、単一細胞のRNA塩基配列解読法を用いてこの限界を克服し、マウスの繊維芽細胞から誘導心筋細胞(iCM)への再プログラム化の初期段階で起こるトランスクリプトーム全体の変化を解析した。教師なし次元削減とクラスタリングのアルゴリズムを使うことにより、再プログラム化の際に分子的に明確に異なる細胞亜集団が明らかになった。また我々は、iCM形成経路を構築し、細胞増殖とiCM誘導の関係を描き出した。再プログラム化の際の全体的な遺伝子発現変化をさらに解析したところ、意外にもmRNAのプロセシングとスプライシングに関係する因子の発現が低下していることが判明した。中でも第一候補であるスプライシング因子Ptbp1の詳細な機能解析から、繊維芽細胞が心筋細胞特異的なスプライシングパターンを獲得するには、この因子が決定的な障壁となっていることが明らかになった。また、Ptbp1を欠乏させると心臓型トランスクリプトームの獲得が促進し、iCMの再プログラム化効率が上昇した。さらに、これらのデータセットの定量的解析を行ったところ、各再プログラム化因子の発現と個々の細胞の再プログラム化過程の進展との間に強い相関関係があることが判明し、iCMを濃縮するための新しい表面マーカーの発見につながった。まとめると、我々の単一細胞トランスクリプトミクスの手法は、再プログラム化の道筋の再現を可能にし、iCMの誘導について、中間段階の細胞集団、関わる遺伝子経路や調節因子を明らかにできた。
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参考文献はつけませんが、上記のようなことができます。今日は細かに参考資料を挙げていませんが、それは適切で妥当なものがないからです。チャンピオンデータとかありましたし・・・。

 

今後は、今回の論文を元に医療分野へ研究が発展していくかと思われます。

 

さて、次回です。

 

溜まりに溜まった恒例のネイチャー、次回は、寄生虫感染症より、腸の損傷後に起こる胎仔の発生プログラムの再活性化、を取り上げます。

 

 

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