北極も深海も 海洋生物を死に追いやるプラスチック | Just One of Those Things

Just One of Those Things

Let's call the whole thing off

日本経済新聞のメールに取り上げられていた日経ナショジオより。

 

---------------------------------------------------------
北極も深海も 海洋生物を死に追いやるプラスチック 
日経ナショナル ジオグラフィック社

 19世紀後半に発明されたプラスチック。私たちの生活をより便利なものにした素材だ。プラスチックの生産が本格化したのは1950年頃で、これまでの累計生産量は83億トン。そのうちリサイクルも含めて廃棄されたプラスチックは63億トンで、リサイクルされなかったプラスチックは実に57億トンもあるという。廃棄されたプラスチックの影響で深刻なのが、海洋への流出だ。海洋生物ばかりか、人間への影響も懸念されている。ナショナル ジオグラフィックでは、使用後のプラスチックの現実を2018年6月号で取り上げている。

◇  ◇  ◇
 
 回収されなかった廃プラスチックがどれだけ海に流入しているのか、誰にもわからない。こうしたプラスチックは絶滅危惧種も含めた700種近い海洋生物に影響を与え、毎年多くを死に追いやっていると推定される。投棄された漁網にからまるなど、目に見える形での被害もあるが、目に見えない形でダメージを受けている生物はもっと多いだろう。
 
 直径5ミリ以下の微小なプラスチック粒子は「マイクロプラスチック」と呼ばれ、今では動物プランクトンからクジラまで、あらゆる大きさの海洋生物が体内に取り込んでいる。
 
 マイクロプラスチックは、深海の堆積物から北極の海氷まで、調査されたあらゆる海域で見つかっている。ハワイ島の浜辺の砂は、多い地点でこの粒子が15%を占めている。カミロ・ポイント・ビーチには、北太平洋をぐるりと回る、北太平洋旋回と呼ばれる海流に乗ってプラスチックが漂着する。世界には大量のごみを一定の海域に集める循環流が五つあるが、なかでも北太平洋旋回は最もごみが多い。
 
 第2次世界大戦中に連合軍が活用したのを皮切りに、広く利用されるようになったプラスチック。これほど人々の暮らしを変えた発明品も珍しい。宇宙開発に貢献し、医療に革命をもたらし、自動車や大型ジェット機を軽量化して、燃料消費と大気汚染を減らす役目も果たしている。生鮮食品を包んで保存期間を延ばし、エアバッグや保育器、ヘルメット、清浄な水を届けるボトルとして、人命を救うために日々役立ってもいる。
 
 プラスチック革命に拍車がかかったのは20世紀初め、豊富で安価なエネルギー物質、石油を原料とするようになってからだ。それまでは天然の高分子化合物を使っていたが、原油の精製過程で生じるエチレンなどのガスの分子を結合させれば、さまざまな新しい高分子化合物を生み出せることがわかったのだ。ペットボトルの原料として知られるポリエチレンテレフタレート(PET)もその一つだ。これにより、プラスチックの用途は一気に広がった。あらゆる物をプラスチックで作れるようになり、私たちの周りには安価なプラスチック製品があふれた。
 
 今、世界で生産される年間約4億トンのプラスチックのうち、約4割は使い捨てで、多くは購入後すぐに用済みになる包装材だ。プラスチックの生産量は猛烈な勢いで増えている。過去15年間の生産量がこれまでの累積生産量のおよそ半分を占める。プラスチック製のボトルを最も多く製造している企業はおそらくコカ・コーラだろう。同社は2017年、初めて製造量を公表した。その数は年間1280億本にのぼるという。
 
 生産の急速な伸びに、ごみ処理システムの整備はとても追いつかない。その結果、海にプラスチックがあふれている。こうした状況の背景の一つとして、急成長するアジア諸国で使い捨てプラスチック包装材の利用が増えたことが挙げられる。これらの国々では、ごみの収集システムが十分整備されていない。
 
■海に流れ出るプラスチックは止まらない
 
 「北米とヨーロッパで100%リサイクルしたとしても、海洋に流出するプラスチックの全体量はほとんど変わりません」と言うのは、米国と祖国インドでこの問題に取り組んできた米ミシガン州立大学の化学工学者ラマニ・ナラヤン氏。
 
 2014年3月、クアラルンプールから北京に向かう途中、マレーシア航空370便が消息を絶った。その後インドネシアからインド洋の南まで広範囲で捜索活動が行われたが、残骸らしきものは一向に見つからなかった。海を漂う物体の固まりが衛星画像に映るたびに、航空機ではないかとの期待が高まったが、それらはすべてごみで、壊れた貨物コンテナの破片、捨てられた漁具、レジ袋もあった。
 
 米国シアトルに本部があるNPOの調査機関「アース・アンド・スペース・リサーチ」の代表で科学者のキャスリーン・ドーハン氏は、この事故は悲劇とはいえ、啓発の機会にもなると考えた。長年見過ごされてきた問題について、全世界が初めて実態を目の当たりにしたと、彼女は当時話している。「世界の海がごみ捨て場になっていることを、今こそ知ってもらいたい」
 
 「私たちはプラスチックで便利な製品を作ることには一生懸命でしたが、製品の寿命が尽きたときのことには無頓着でした」と海洋生態学者は語る。
 
 産業界が貢献するには二つの方法がある。一つは科学者の協力を得て、生分解性が高い新素材や、リサイクルしやすい製品を開発することだ。この問題の長期的な解決策としては新素材の開発とリサイクル率の向上が不可欠だ。そして必要以上にプラスチックを使わないことも重要だ。専門家は、手っ取り早く大きな効果を上げるには、高度な技術など必要ない、と言う。「単にごみを収集すればいいだけの話です」
 
(文 ローラ・パーカー、日経ナショナル ジオグラフィック社)
 
[ナショナル ジオグラフィック 2018年6月号の記事を再構成]
 
[参考]ナショナル ジオグラフィック6月号では、ここに抜粋した特集「プラスチック」で、人間への影響も取り上げています。この特集のほか、サッカーボールを追いかけて/北米の消えた入植者たち、などを掲載しています。
---------------------------------------------------------

 

マイクロプラスチックについては、TVでの報道番組で報道されていたので、よくご存じの方が多いと思います。

 

よく、「浄水す機械があれば」という声がありますが、例えばNASAで使われている””逆浸透膜浄水器”(福岡市でも使用)を使用すればきれいに除去できますが、一千万分の1のフィルターでろ過し、真水にする装置なので、ミネラルやプランクトンなどもろ過されてしまうので、生態系を壊すことにもなりますし、フィルター代の維持費は膨大なものとなります。

 

マイクロプラスチックについては、プラスチックを海に捨てないことだけでは、実際には対応できません。マイクロプラスチックが生じる製品は他の商品にもあり、下水を流れて・・・というこっともあります。生物への影響について興味がある方は、本号を取り寄せてみられるとよいと思います。その他の製品については、後日、日記にて取り上げます。

 

次は、恒例のネイチャーを定時に取り上げます。

 

 

ペタしてね