素粒子物理学: 厳しい制約を与える弱荷 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、19号目のネイチャーのハイライトより。

 

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素粒子物理学: 厳しい制約を与える弱荷
Nature 557, 7704
2018年5月10日  

素粒子の弱荷は、電荷ほど知られていないかもしれないが、標準模型を検証し、標準模型の理論的枠組みを超えるあらゆる物理を探索するのに電荷と同じくらい重要である。陽子の場合、弱荷は、中性の電弱力を介して陽子が他の素粒子と相互作用する強さを決める。陽子の弱荷は実験で直接測定されてはいないが、原子核からのパリティを破る偏極電子–陽子散乱(PVES)の観測から決定することができる。今回、トーマスジェファーソン国立加速器施設のQweakコラボレーションが、前例のない精度(不確かさの合計が9.3 ppb)で、PVESの非対称性を新たに測定した結果を報告している。PVESの非対称性を知ることで、陽子の弱荷の値を推定でき、その値が標準模型と非常によく一致していることが分かった。さらに著者たちは、この弱荷の値に基づいて、標準模型では予測されない仮想的な粒子の質量に対して数テラ電子ボルトスケールの制約を課している。

Letter p.207
News & Views p.171
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素粒子物理学より、今回は、陽子の弱荷が測定されました。
 
陽子の弱荷は、陽子と他の素粒子の間のある種の相互作用の強さを定めます。今回、この量が精密に測定され、素粒子物理学の標準模型が厳密に検証されました。
 
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素粒子物理学:陽子の弱荷の精密測定
Nature 557, 7704 |  Published: 2018年5月10日 |

原子核物理学と素粒子物理学の分野における大規模な実験プログラムでは、現在の理論で説明される物理を超える物理学の証拠が探索されている。ヒッグスボソンの観測によって、現在のところ基本的な素粒子と力を最も正しく記述するものである標準模型によって予測されていた素粒子の組が出そろった。しかし、ヒッグスボソンの質量などの基本的なパラメーターを予測できないこと、暗黒物質や暗黒エネルギー、重力、宇宙における物質–反物質の非対称性や、その他の現象を説明できないことなど、この理論には限界がある。こうした限界に触発されて、高エネルギー加速器でのさらなる素粒子の直接生成を通して、ヒッグス以降の時代における標準理論を超える物理が探求されているが、これまでのところ成功していない。ボソン(整数スピン粒子)とフェルミオン(半整数スピン粒子)を結び付ける超対称性粒子や、基本クォークとレプトンが混合したレプトクォークの探索などが、その例である。一方、十分に予測された標準模型のオブザーバブルの精密測定を用いた間接的探索は、現在の高エネルギー加速器で直接には到達できない質量スケールやエネルギースケールに達し得るために、標準模型を超える物理の高度に的を絞った代替検証を可能にする。こうした間接的探索の目標の1つは、陽子と他の素粒子との、よく知られた中性の電弱力を介した相互作用の強さを決める力である陽子の弱荷を決定することである。パリティ対称性(空間反転(x,y,z) → (−x, −y, −z)の下での不変性)は弱い相互作用においてのみ破られるので、弱い相互作用を分離し、陽子の弱荷を測定する手段が得られる。本論文では、陽子による偏極電子の散乱において測定されたパリティを破る非対称性−226.5 ± 9.3 ppb(不確かさは1標準偏差)から、0.0719 ± 0.0045(不確かさは1標準偏差)という陽子の弱荷の値を得たことを報告する。今回得られた陽子の弱荷の値は、標準模型とよく一致しており、標準模型の範囲では記述されないパリティを破るあらゆるセミレプトン物理に対して数テラ電子ボルトスケールの制約を課す。今回の結果は、パリティを破る精密測定によって、高エネルギー加速器での直接的探索と競合し得る、標準模型を超える物理の探索が可能になり、天文観測と併せて、さらに高い質量スケールを探索する実り多い方法が得られることを示している。
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今回は、論文事態に詳細がつけられていたため、付け加えるところがありませんねぇ・・・。

 

物理学におけるパリティについては、参考にできるものがないですねぇ・・・。わからないところがありましたら、コメントかメッセージで、お気軽にお問い合わせください。

 

明日は、材料科学より、セラミック燃料電池についてのものを取り上げます。

 

 

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