感染症対策に積極関与を ピーター・サンズ氏 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

日経新聞の朝刊を読んでいる方には見覚えがあるかと思います。

 

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感染症対策に積極関与を ピーター・サンズ氏 
世界エイズ・結核・マラリア対策基金事務局長 
グローバルオピニオン 2018/6/8付日本経済新聞 朝刊

 3月、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の事務局長に就任した。基金は日本政府のリーダーシップで発足し、エイズ患者の低減などで成果をあげてきた。日本はこうした実績に誇りを持ってほしい。
 
 いま、最大の課題と考えているのは結核対策だ。世界で毎年約1千万人がかかり、エイズやマラリアに比べてうまく減らせていない。政治的なリーダーシップが発揮されず、社会の動きが鈍い。加えて科学研究が不足し、診断・治療手段が限られているのが原因だ。先進国で、結核は過去の病気だという誤った認識が広がっていることも背景にある。結核は依然として最も多くの人の命を奪う感染症だ。
 
 こうした中、世界の患者の約25%が集中するインドのモディ首相が2025年までに結核をなくすと宣言し、人的・経済的資源を思い切って振り向けると表明したのは注目される。インドの状況が本当に劇的に改善すれば他国の参考にもなり、世界の感染症対策に及ぼす影響は大きいだろう。
 
 結核対策で大切なのは、感染者をしっかりと診断し明らかにすることだ。実は1千万人の罹患(りかん)者のうち、400万人は結核と診断されず何の治療も受けていないと推定される。対策には患者の苦しみを取り除き命を救う意味合いのほか、経済的な側面もある。家族に患者がいれば子供は学校に行けず、親も仕事がなくなる。誰かが面倒を見なければならず社会保障費用が膨らむ。
 
 日本でも1950年ごろまで結核は死因のトップだった。しかし51年の結核予防法改正をはじめとする対策の強化が功を奏し、結核撲滅だけでなく(誰もが質の高い医療を支払い可能な金額で受けられるようにする)「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」の先鞭(せんべん)をつけた。経済発展も遂げた。こうした経験は生かされるべきだ。9月にニューヨークで開催予定の「結核に関する国連ハイレベル会合」で共同議長を務める日本の役割に期待している。
 
 先進国でも結核への関心が再び高まりつつあるのは多くの抗生物質が効かない「多剤耐性結核」や、最新の薬でも効果がなく打つ手がないといわれる「超多剤耐性結核」が現れているためだ。東欧やロシアでは、結核感染者の30%前後がこうしたタイプだという。
 
 結核の新薬開発はエイズやがんなどに比べて極めて手薄だ。製薬企業は利益が出る分野を重視するので、富裕国でニーズの高い病気に偏るのはやむを得ないが、結核治療薬への投資を促す必要がある。市場規模としては小さいものの、超多剤耐性結核の登場は投資増に追い風かもしれない。結核に限らず、耐性菌に有効な薬の開発インセンティブを製薬企業にどのように与えるかは難しい問題だ。
 
 感染症対策は政府や企業、非政府組織(NGO)が連携して取り組まなくてはならないが、気候変動問題などに比べて企業のかかわりが薄い。感染症を減らすことは、企業にとって従業員の健康維持にもつながり利点がある。資金提供や人材確保、インフラ構築などでできることがあるはずだ。私は民間出身で企業に知り合いも多いので、既に英蘭ユニリーバや米コカ・コーラなど多くの企業の経営者と話をしている。日本企業にももっと協力してほしい。
 
 消費者との関係も深めたい。エイズに関しては協力ブランドの商品購入額の一部がグローバルファンドに回る「レッド」という米国のプロジェクトがある。米アップルやスターバックスなどが参加している。同じようなことを他の感染症や地域にも広げていく。
 
 元銀行家が、なぜこの仕事をしているのかとよく聞かれる。英スタンダードチャータード銀行で新興国の事業を強化した時、様々な感染症の影響を目の当たりにしたのが一つのきっかけだ。銀行の最高経営責任者(CEO)だった約10年の間にリーマン・ショックをはじめ多くを経験したが、それらと比べてもエイズと結核、マラリアの撲滅ほど世界にインパクトを与えうる仕事はない。
 
(談)
 
■生産性低下を防ぐ
 
 日本では年間約1万8千人が結核を発症、2千人近くが死亡する。人口あたりの患者数を示す罹患率は米欧に比べ高い。周辺アジア諸国の罹患率は日本をさらに上回る。多剤耐性結核も現れ、人の往来とともに日本にいつ入ってもおかしくない。日本から米欧に広がる可能性もある。感染症対策の支援は先進国自身の利益につながる。
 
 グローバルファンドは02年に設立され、毎年40億ドル(約4400億円)近くを途上国の感染症対策などのために供与してきた。一定の効果をあげているが、いかに持続させるかが課題だ。
 
 サンズ氏は地球規模で事業展開する企業に、積極的な役割を求める。単なる社会貢献でなく、感染症から労働者を守り生産性の低下を防ぐうえでも重要との指摘は理にかなう。
 
(編集委員 安藤淳)
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結核は確かに研究された論文が上がってくることは少ないです。ここは、ぜひ、感染症の研究をし続けている長崎大学に頑張って欲しいところです。

 

今回をきっかけに、研究が進み、感染対策が万全にとれるようになるよう祈ります。

 

実のところ、現在直面している問題は、上記に挙げられているものだけではありません。そう、はしかです。

 

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はしか拡大、対策遅れ尾引く 1回の30代に感染多く
日本経済新聞
 
 全国ではしかの感染が広がっている。国内土着のウイルスによる感染がない「排除状態」だった日本で、患者数は今年は既に160人を超えた。旅行者が海外から持ち込んだ「輸入感染」を防げず、ワクチンの定期接種が1回だった30代を中心に感染が拡大。欧米では1980年代から2回接種を導入したが、日本の実現は2006年までずれ込み、ワクチン行政の停滞が今も尾を引く。
 
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有料会員ではないため、有料会員用の記事が限られているため、今回は序章のみ上げています。

 

はしかのワクチンを2度、接種されていない方は、今のも遅くないので、接種されることをおすすめします。

 

さて、次に恒例のネイチャーを定時に取り上げます。

 

 

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