昨日に引き続き、17号目のネイチャーのハイライトより。
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免疫学: 炎症経路における求電子性のイタコン酸
Nature 556, 7702
2018年4月26日
イタコン酸は内因性の代謝産物で、マクロファージの活性化に続いて、炎症性サイトカインのサブセットを抑制することが示されている。今回の研究でM Artyomovたちは、イタコン酸とその誘導体であるジメチルイタコン酸がグルタチオンと反応し、Nrf2依存性および非依存性の両方の機構を誘導することを示している。どちらの機構もATF3を活性化し、ATF3がIκBζの合成を阻害することで、リポ多糖(LPS)に対する二次応答を抑制する。ジメチルイタコン酸は、乾癬のマウスモデルにおいてIκBζの阻害因子としても働くことが示された。
Letter p.501
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イタコン酸はこれまでもネイチャーで出てきましたが、イタコン酸とは次のようなものです。
これまで、ネイチャーで挙がってきたものは、次のようなものです。
では、論文を見てみましょう。
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免疫学:イタコン酸とその誘導体の求電子的な性質はIκBζ–ATF3炎症軸を調節する
Nature 556, 7702 | Published: 2018年4月26日 |
代謝の調節は、免疫応答を誘導する強力な仕組みだと考えられている。炎症性マクロファージは、イタコン酸の大量産生を特徴とする大規模な代謝再配線を行い、イタコン酸は最近、免疫調節性代謝産物であることが報告されている。イタコン酸とその膜透過性誘導体であるジメチルイタコン酸(DI)は、IL-6やIL-12を含むサイトカインのサブセットを選択的に阻害するが、TNFは阻害しない。マクロファージの活性化時に、イタコン酸が細胞代謝に及ぼす主な影響は、コハク酸デヒドロゲナーゼの阻害によるものだと考えられてきたが、この阻害のみでは、DIの場合に観察される顕著な免疫調節性の影響は十分に説明できない。さらに、イタコン酸やDIが炎症性プログラムに対して、そのような選択的な影響を引き起こす調節経路は明らかにされていない。本論文では、イタコン酸やDIが求電子的なストレスを誘導し、グルタチオンと反応して、その後、Nrf2(別名NFE2L2)依存性および非依存性の両方の応答を誘導することを示す。求電子的なストレスが、IκBζタンパク質の誘導の抑制を介して、toll様受容体の刺激に対する、一次ではなく、二次的な転写応答を選択的に調節できることを見いだした。IκBζの調節はNrf2に依存せず、ATF3がその主要なメディエーターであることが明らかになった。この抑制作用は、種や細胞の種類を超えて保存されており、またDIをin vivo投与すると、乾癬のマウスモデルでIL-17–IκBζにより起こる皮膚病変を改善できたことから、この調節経路が治療に利用できる可能性が浮き彫りになった。我々の結果は、DI–IκBζ調節軸を標的とすることは、IL-17–IκBζを介した自己免疫疾患の新たな治療戦略となり得ることを示している。
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つまり、イタコン酸だけでは自己免疫機能が作動しないというわけで、DI–IκBζ調節軸を標的とすることで、IL-17–IκBζを介した自己免疫疾患の新たな治療戦略となり得えるかもしれない、という話です。
自己免疫疾患の新たな治療戦略となるよう、祈りますが、まだまだ出てきたりして・・・(苦笑)
次回は、神経科学より、脳回路についてのものを取り上げます。