構造生物学: インスリンが結合したインスリン受容体の構造 | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、14号目のネイチャーのハイライトより。

 

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構造生物学: インスリンが結合したインスリン受容体の構造
Nature 556, 7699
2018年4月5日


インスリンは、代謝で重要な役割を担っているペプチドホルモンである。短縮型のインスリン受容体に結合したインスリンの結晶構造が最近明らかにされ、この複合体の結合様式に関する知見が得られた。G Scapinたちは今回、インスリン二量体と複合体を形成したインスリン受容体細胞外ドメインの三次元構造を、単粒子クライオ(極低温)電子顕微鏡法を使って4.6 Åの分解能で解き、報告している。この知見によって、インスリンと受容体の複合体形成と受容体活性化の際の構造や機構に関する解明が進んだ。


Letter p.122
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昔を考えれば、よい時代になってきたものです。

 

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構造生物学:インスリン受容体–インスリン複合体の単粒子クライオ電子顕微鏡解析による構造

Nature 556, 7699 |  Published:  2018年4月5日  | 


インスリン受容体は二量体タンパク質で、グルコース恒常性の制御、脂質やタンパク質、糖質の代謝の調節、また脳での神経伝達物質レベルの調整に重要な役割をしている。インスリン受容体の機能不全は、糖尿病やがん、アルツハイマー病などの多くの疾病と関連付けられてきた。受容体の一次配列は1980年代から知られており、細胞外部分(細胞外ドメイン;ECD)、1本の膜貫通へリックスと1つの細胞内チロシンキナーゼドメインから構成されている。二量体のECDにインスリンが結合すると、チロシンキナーゼドメインの自己リン酸化が引き起こされ、それに続いて下流のシグナル伝達分子が活性化される。生化学データと変異誘発実験データから、インスリン結合部位と想定される2つの部位、S1とS2が明らかにされている。S1を含むECD断片のインスリンが結合した構造とアポ細胞外ドメインの構造が以前に報告されているが、完全な受容体へのインスリンの結合とシグナル伝達機構の詳細はまだ明らかになっていない。今回我々は、インスリンが結合しているインスリン受容体ECD二量体の1:2(分解能4.3 Å)および1:1(分解能7.4 Å)複合体の単粒子クライオ(極低温)電子顕微鏡再構成について報告する。対称的な4.3 Å構造から、二量体当たり2個のインスリン分子が存在し、各分子は片方の単量体のロイシンリッチサブドメインL1ともう1つの単量体の1番目のフィブロネクチン様ドメイン(FnIII-1)の間に結合していて、αサブユニットC末端へリックス(α-CTヘリックス)と広範囲にわたって相互作用していることが明らかになった。7.4 Å構造では、同じように結合したインスリン分子が受容体の二量体当たり1個だけ存在する。これらの構造から、S1での結合に関わる相互作用が確認され、S2結合部位全体の輪郭が明らかになった。インスリン受容体のこれらの状態から、1番目のインスリンの結合によって起こるα-CTヘリックスの移動によりサブドメインの相対的な向きが変化し、それによって下流でのシグナル伝達伝搬が引き起こされると考えられる。

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データが見たいところですが、こればかりは本誌を買わねば、載っていません。

 

インスリン受容体の機能不全は、糖尿病やがん、アルツハイマー病などの多くの疾病と関連付けられてきましたが、この機能不全のメカニズムまで解明されることを祈ります。

 

明日は、ページが前に戻りますが、免疫学より、イタコン酸の抗炎症効果を取り上げます。

 

 

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